5
楽しい時間が過ぎるのはあっという間で、気がつけば外は暗くなり始めていた。
「今日は楽しかったね」
「うん、またみんなでクレープ食べに行こうよ」
「そうだね、また行こう。じゃあ僕はこっちだから」
そう言って渚はバイバイと手を振り、去って行った。
残された紗良とカルマも歩き出す。
「赤羽君も、家こっちなの?」
並んで歩きながら、紗良はカルマにそう質問した。
「いや、違うけど?」
「えっ!?」
予想外の答えにびっくりする紗良。
「家まで送るよ」
「……良いの?」
「また変なのに絡まれたりしたら大変だし。っていうか今日は断らないんだね」
そう言ってカルマは少し意地悪そうに笑った。
「あ、あの時はその……!ちょっと怖かったから……ごめんね?」
カルマと初めてあった日、怖くて逃げ帰ってしまった事を思い出し慌てて謝る紗良。
「別に気にしてないよ」
「よかった……」
ホッと胸を撫で下ろす紗良。そして少しの沈黙の後、
「……じゃあ、今は?」
とカルマに問いかけられた。
「え?」
「今はもう、怖くない?」
少しだけ真剣な様子でそう聞かれて、紗良もきちんと答えを返す。
「うん、怖くないよ。今日だって助けてくれたし……。赤羽君が本当は良い人だってもう知ってるから。だから、大丈夫」
そう言って紗良は優しく微笑んだ。
「ふーん、そっか」
紗良の答えを聞いてカルマも満足そうな様子だった。
「…でも、いつからかわれるかと思うと、ちょっと怖いかな」
と少し不満を漏らしてみた。
「だからそれは、紗良ちゃんが良いリアクションするのが悪いんだよ」
「そ、そんなぁ……」
そうこう話しているうちに、2人は紗良のアパートの前についた。
「ここ?」
「うん、送ってくれてありがとうね」
「いいよ。どうせ家帰っても誰も居なくて暇だし」
「……そうなの?」
カルマの両親はインド旅行に出かけており、今日は家に居ないらしい。
「コンビニでも寄って晩飯買って帰るかな」
そう言ってカルマは踵を返した。
「じゃあね〜紗良ちゃん」
「……っ!ま、待ってっ!」
紗良は去っていこうとするカルマの服の裾をとっさに掴んだ。
カルマは少し驚いたように振り返る。
「……なに?」
「あ、あの……」
「ん?」
「良かったら、うちで晩ごはん食べていかない……?」
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