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それから数日後の事。
E組の皆が裏山のプールにやってくると、何者かによってプールがぐちゃぐちゃに荒らされていた。
「ひどい……」
紗良は目の前の光景に唖然とする。
プールにはゴミが大量に捨てられていて、とても泳げる状態ではなかった。
「あーあ、派手にやられてんね。こんな広いプール、ここまで荒らすのも大変だろうにさ〜。ご苦労様って感じ」
カルマは荒れたプールを見て半ば感心するように言う。
「これじゃ泳げないね……。今日はカルマ君に平泳ぎを教えてもらう予定だったのにな……」
紗良がふと周りを見回すと、近くにいた渚がプールとは反対側を見ているのに気付いた。
渚の視線の先には、寺坂、村松、吉田の3人が居て、壊されたプールを見てニヤニヤと笑みを浮かべている。
やがて視線に気づいた寺坂がこちら歩いてきて、紗良はびくりと肩を揺らしたが、寺坂は渚の方へ向かって行った。
「ンだよ渚、何見てんだよ。まさか……俺らが犯人とか疑ってんのか? くだらねーぞその考え」
そう言って寺坂は渚の胸ぐらを掴む。すると殺せんせーが現れた。
「まったくです。犯人探しなど、くだらないからやらなくていい」
殺せんせーはそう言うと、あっという間にプールを綺麗に修理してしまった。
「はい! これでもとどおり!!いつも通り遊んでください」
プールが元に戻って皆が喜ぶ中で、寺坂は不愉快そうな様子を浮かべていた。
そしてその日の休み時間。
殺せんせーがプールの廃材で作ったバイクを囲んで皆がわいわいと話していると、寺坂がやってきて思い切りバイクを蹴り倒した。
「にゅやーーーッ!?」
床に倒れた衝撃で破損したバイクを見て殺せんせーはしくしくと泣き始める。
「なんてことすんだよ寺坂!!」
「謝ってやんなよ!! 大人なうえに漢の中の漢の殺せんせーが泣いてるよ!?」
皆がそう言うと、寺坂は不快そうに表情を歪める。
「……てめーらブンブンうるせーな虫みたいに。駆除してやるよ!」
寺坂は机の中からスプレー缶を取り出すと、それを床に投げて撒き散らした。
「うわっ!!」
「何だこれ」
「殺虫剤!?」
シューと勢いよくスプレーが噴射され、辺り一面が白い煙で真っ白になった。
紗良はカルマに腕を引かれて煙の中からすぐに脱出したが、少し吸い込んでしまい軽く咳き込む。
「紗良、大丈夫?」
「うん、大丈夫……」
寺坂の行動にさすがの殺せんせーも怒って注意をする。
「寺坂君! やんちゃするにも限度ってっものが……」
「さわんじゃねーよモンスター。気持ちわりーんだよ。テメーもモンスターに操られて仲良しこよしのE組も」
「……」
教室がしんと静まり返る中、カルマが口を開いた。
「何がそんなに嫌なのかねぇ。気に入らないなら殺せばいいじゃん。せっかくそれが許可されてる教室なのに」
「何だカルマ。テメー俺に喧嘩売ってんのか。だいたいテメーは最初から、」
寺坂が言い終わる前に、カルマは手で顔を掴むようにして寺坂の口を塞ぐ。
「だめだってば寺坂。ケンカするなら口より先に手ェ出さなきゃ」
一触即発の雰囲気に紗良はひやりとしたが、寺坂は「くだらねー」と吐き捨てると教室から出ていってしまった。
(よかった、喧嘩にならなくて……)
紗良はホッとため息を漏らす。
「なんなんだアイツ……」
「一緒に平和にやれないもんかな……」
磯貝の言葉に、紗良は心の底から同意した。
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