2




学秀は、1つの傘に入っている紗良とカルマを見て眉間にシワを寄せると、つかつかと歩み寄ってきた。

「やっほー、浅野クン」

「学秀君も、今帰り?」

「……そうだが。紗良、どうして赤羽なんかと仲良く相合傘なんてしてるんだ」

「えっと、カルマ君傘忘れたらしくて」

学秀はカルマの方をキッと睨み付ける。

「今日は降水確率90%だっただろう」

「えー天気予報なんて見てないし」

そういってへらっと笑うカルマに、学秀の眉間のシワが一層深くなる。

「だいたい、距離が近すぎるっ。もうちょっと離れろ!」

「はぁ? 近づかないと濡れちゃうじゃーん」

そう言ってカルマは紗良の肩をぐいっと引き寄せた。

「わわっ!」

「赤羽、紗良に気安く触るなっ!」

「触るなって、紗良を自分のものみたいに言わないでくれる?」

「貴様のものでもないだろう」

「んーまだね」

「まだ、とはどういうことだ」

「俺、紗良に告白済みだから」

「…………は?」

それまで勢い良く言い合っていた二人だったが、カルマの一言で学秀は目を見開いたまま固まった。

「じゃ、そういう訳で。行こ、紗良」

「ちょ、ちょっとカルマ君……!」

学秀を置いて、カルマはすたすたと歩いて行く。
紗良の傘はカルマが持っているので、紗良も慌ててカルマの後に続いた。
紗良が学秀の方をちらりと振り返ると、依然としてその場に固まったままだった。

「紗良。俺と付き合う気になったら、いつでも言ってね?」

カルマは紗良の顔を覗き込むようにしてそう告げた。
紗良は、少し恥ずかしそうに頷く。
そんな紗良の様子を見て、カルマは満足気に笑った。



その晩、紗良に学秀から「赤羽だけはやめておけ!!」と電話がかかってきたことをカルマは知る由もない。



湿気の時間 end
prev next
back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -