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その翌日、学校へ来ると固定砲台の姿がすっかり以前とは違うものになっていた。
「庭の草木も緑が深くなってきましたね。春も終わり、近づく初夏の香りが心地よいです!」
全身液晶になり、豊かな表情で明るく会話をする姿に、クラスの皆が驚いた。
殺せんせーの改良により、協調することの大切さを学習した固定砲台は、今後単独での暗殺は控えることにしたようだ。
休み時間、固定砲台の周りには生徒達が集まっていた。
「すごいね、こんなものまで体の中で作れるんだ」
「設計図があれば、銃以外も何にでも!」
「じゃあさ、花とかも作れる?」
「はい、花のデータを学習しておきますね」
自由自在に物を作ったり、1人でなんでもこなせる彼女は思いのほか大人気になっていた。
その後、『自律思考固定砲台』という名前から1文字とって『律』という呼び方をすることに決まった。
紗良は、自分の席に座ったままで様子を眺めているカルマの方へ戻る。
「カルマくん、律すごいよ。何でも作れちゃうの。私の好きな花も作ってくれるって」
「へぇ、良かったじゃん」
「うん! 昨日はどうなることかと思ったけど、うまくやっていけそうだね」
「どーだろ。殺せんせーのプログラム通り動いてるだけでしょ。機械自体に意志があるわけじゃない」
「それはそうかもしれないけど……」
「あいつがこの先どうするかは、あいつを作った持ち主が決めることだよ」
「持ち主、かぁ」
律の開発者は、今の姿の律を見てどう思うのだろうか。
少しだけ、嫌な予感がした。
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