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五条先生を締め上げながらされた、【チキチキ呪霊討伐猛レース】の説明を聞いた後、私たち生徒は開始時刻まで解散となった。
ミーティングをするために、東京校の控えの建物に向かうことになり、一番早く歩き出した野薔薇ちゃんと真希先輩の後をゆっくりとついて行っていると、いつの間にか最後尾になっていた。
「なまえ!」
『…あ、虎杖くん…』
後ろから駆け足で向かってくる虎杖くんに足を止める。私の隣に並んでから、少し気まずそうな顔をして口を開く。
「あの…えっと……」
『どうしたの?』
「いや、その……なまえ、怒ってるから…」
『え?』
怒っている?私が?
虎杖くんが生きていると知って、唖然とはしているけど心の底から安心しているはずなのに?
『…どうしてそう思ったの?別に怒ったりしてないのに…むしろ無事でいてくれて嬉しいんだよ?』
「…なまえがその顔する時、ちょっと怒ってる時だから。釘崎ほどじゃないけど、怒ってるのかな〜っと…」
弱々しく出された声に、改めて今の心情を考える。
野薔薇ちゃんが怒っているみたいに、というのは心配したのに〜という怒り、ということであっているのだろうか?
…もし、もしその感情が怒りにカテゴライズされるのなら…
『…うん、私怒ってるのかも。』
「やっぱり?!!」
『…私、すごく悲しかったし、寂しかったし、たくさん後悔してた。…ううん、今も後悔してる。ずっと、ずっと苦しかった。』
「…うん。」
『でも…生きててくれたなら、それだけでいいっていうのも本当。だから…もう怒ってない。今は嬉しさの方が勝ってる!』
「…そっか!よかった!」
2人で笑いあってから、ゆっくりとミーティングに向かう。
歩いている間の会話はすごく久しぶりで、新鮮味さえ感じてしまった。そんなに長くない道のりだからすぐに終わってしまったけど、また虎杖くんと一緒にいれるのだから、寂しくはない。
「…なぁ、なまえ。」
『どうしたの?』
建物の扉の前、足を止めた虎杖くんに首を傾げる。
振り向いた虎杖くんは少し目を潤ませながら口角を上げた。
「心配してくれて、待っててくれて…本当にありがとな。」
『…当たり前だよ。私、虎杖くんの想像以上に虎杖くんのこと大切に思ってるんだから!』
私もつられて涙ぐむと、虎杖くんは少し目を擦ってから扉を開けて中に入った。私も涙を拭うと、足を踏み入れた。
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「あの〜…これは見方によってはとてもハードないじめなのでは?」
「うるせぇ。しばらくそうしてろ。」
野薔薇ちゃんが拗ねた表情をしながら虎杖くんに遺影の額縁を持たせている様子を苦笑いで見つめていると、その様子を見かねたパンダ先輩が宥めに入る。
「まぁまぁ、事情は説明されたろ。許してやれって。」
優しく野薔薇ちゃんを宥めた先輩の方を振り向いた虎杖くんが真剣な顔をして言葉を放つ。
「パンダが喋った?!!」
「しゃけしゃけ」
「…なんて?」
狗巻先輩の言葉に首を傾げた虎杖くんにすかさず伏黒くんが説明を入れる。
「狗巻先輩は呪言師だ。言霊の増幅、矯正の術式だからな。安全を考慮して語彙しぼってんだよ。」
「…死ねって言ったら相手死ぬってこと?最強じゃん!」
「そんな便利なもんじゃないさ。」
虎杖くんの言葉にすかさず返答したのはパンダ先輩だった。首を傾げる彼にそのまま言葉を続ける。
「実力差でケースバイケースだけどな。強い言葉を使えばでかい反動がくるし、最悪自分に返ってくる。語彙をしぼるのは、棘自信を守る為でもあるのさ。」
「ほーん…で?先輩はなんで喋れんの?新種のパンダとか?」
『いや、そういうわけじゃなくてね…』
疑問が止まらない虎杖くんに苦笑いで返すと、隣にいた野薔薇ちゃんが呆れたような顔をして言った。
「人の術式をぺらぺらと…」
「いいんだよ。棘のはそーいう次元じゃねぇから。…んな事より悠二。屠坐魔返せよ。」
「え?」
『屠坐魔って…あの時の…?』
悟に借りたろ?と言葉を続けた真希先輩に虎杖くんの目が点になる。そしてその後たちまち顔色が青くなり、小さな声で空を指さした。
「…五条先生が…待ってるよ…」
「チッ、あの馬鹿目隠し…」
少し震えている虎杖くんをよそに、真希先輩が咳払いしてからまた口を開いた。
「で?どうするよ。団体戦形式は予想通りとして、メンバーが増えちまった。作戦変更か?時間ねーぞ。」
「おかか。」
「そりゃ悠二次第だろ。何ができるんだ?」
「殴る、蹴る。」
「そーいうの間に合ってんだよな…」
「えっ?!!」
眉間に皺を寄せた虎杖くんの隣に並んでパンダ先輩を見据える。口を開こうとしていた伏黒くんが私を見て少し口を緩めた。私も意図をなんとなく理解して、口を開く。
『虎杖くんが死んでいた間の事は分かりませんけど、東京校京都校、全員呪力無しで戦ったら…虎杖くんが勝ちます。』
「俺も、そう思います。」
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