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未だ不満げな野薔薇ちゃんに苦笑いしていると、少しピリついた真希先輩が私たちに声をかける。


「オイ。…来たぜ。」


その言葉を聞いて石階段の方を見ると、ちょうど京都校の人たちが登ってきた。
一番前を歩いていた真衣さんが私たちを見て口を開く。


「あら、東京校のみなさんお揃いで。わざわざお出迎え?…気色悪い。」


少し眉間に皺を寄せながらそう言い放った真衣さんの横で、東堂さんがつまらなそうに口を開いた。


「乙骨いねーじゃん…」


乙骨、ということはやはり、去年の雪辱を…的なものなんだろうか。
私がその発言に気を向けていると、野薔薇ちゃんは真衣さんの態度が気に障ったのかぐっと眉間に皺を寄せた。


「うるせぇ、早く菓子折り出せコラァ!八つ橋、葛切り、そばぼうろ!!!」

「しゃけ。」

「…何、あの一年…こわ。」


今にも喧嘩沙汰を起こしそうな野薔薇ちゃんに、京都校の金髪の人が顔を引き攣らせながらそう言った。
だが、そんな様子も気にせず、ロボットのような顔をした人が声を発した。


「乙骨がいないのはいいとして、1年3人はハンデがすぎないか?」

「はっ、ロボがいる!!!」

『落ち着いて野薔薇ちゃん!』


わくわくが止まらない、といった感じで目を輝かせた野薔薇ちゃんを押さえていると、次々に京都校の人たちも話し始める。


「呪術師に年は関係ないよ。…特に伏黒くん。彼は禪院家の血筋だが、宗家よりよほど出来がいい。」

「…チッ……」

「何か?」

「別に…」

「まぁまぁ、2人とも落ち着いてください!」


ピリついた雰囲気を醸し出し始めた2人を止めたのは、水色の髪の毛の可愛い女の子だった。優しそうな子だな、と見ていると目が合う。にこやかに会釈してくれたのでこちらも会釈し返すと、顔を輝かせてからにこりと笑ってくれた。それに笑顔を返そうとした時、階段下から手を叩く音が聞こえた。


「はいはい、内輪で喧嘩しない!まったく、この子らは…んで?あの馬鹿は?」


階段を上がってきた綺麗な女の人の質問に、当然だとでも言うように先輩が答える。


「悟は遅刻だ。」

「あの馬鹿が時間通りに来るわけねーだろ。」

『馬鹿って五条先生のことだったんだ…』

「誰も馬鹿が五条先生だとは言ってないけどな。」


私の言葉に続いた伏黒くんの言葉に苦笑いしていると、奥の道から台車を押しながら五条先生が走ってきた。


「おまた〜!!!」


ガタゴトと音を立てながらの登場に、先程の綺麗な女の人が舌打ちをする。


「五条悟……」
「五条悟!!!!」


名前を呼ばれた本人は何も気にせず、足でブレーキをかけて私たちの前に止まった。


「やぁやぁ皆さんお揃いで!私出張で海外に行ってましてね!これこらお土産を配りたいと思いまーす!」

「唐突だな。」

「時差ボケじゃない?」


相変わらず辛辣な言葉を投げかけるみんなに思わず笑ってしまっていると、五条先生が京都校の人にお土産を配り始めた。


「はい、京都校のみんなにはとある部族のお守りを!…歌姫のは無いよ!!」

「いらねーよ!!!!」


女の人…歌姫さんにぶつ切りされた言葉は気にせず、五条先生が私たちの方を振り向く。


「そして!東京のみんなにはこちら!!!」

「…ハイテンションな大人って不気味ね。」

『言い過ぎだよ野薔薇ちゃん…』


ハイテンションのままの五条先生が指差した箱を見ると、突然箱の蓋が開いた。


「はい!オッパッピー!!!!!」

「故人の虎杖悠二くんでーす!!!」


中から飛び出てきたのは、紛れもない虎杖くん本人だった。あまりに衝撃的で、言葉を失う。
ずっと固まっていると、段々と虎杖くんの表情が不安げになっていく。


「京都校のみなさん!これが宿儺の器、虎杖悠二くんですよ〜!」


五条先生が人の気も知らぬまま話続けていると、上の方から学長さんたちが降りてきた。


「宿儺の器…!!どういうことだ?!」

「お、楽巌寺学長〜!いや〜、よかったよかった〜、びっくりして死んじゃったりしたらと心配しましたよ。」

「クソガキが…!!!」


奥で何かを話している学長さんたちの声も耳に入らないほどぼーっとしていると、先程まで隣にいた伏黒くんと野薔薇ちゃんが虎杖くんのところに向かい、箱を蹴った。私も急いで駆け寄ると、虎杖くんが恐る恐るこちらを向く。


「オイ。」

「…あっ、はい。」

「何か言うことあんだろ。」

「へ…?」


虎杖くんを睨みながらも瞳を潤ませる野薔薇ちゃんの横で呆然としながら虎杖くんを見つめると、絞り出すような声でこう言った。


「…生きてたこと、黙っててすいませんでした…」





虎杖悠二、生存確認と共に、交流会合流。

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