相棒を求めて何千里

私は具現化系寄りの特質系だと分かった。

あれから自分だけの能力を考えてみたけれど、全く思いつかない。マリア先生曰く、特質系の能力を一から開発するのは他の系統より大分大変らしい。特質系は基本何でもアリだから自分のやりたいことをやればいいのよ、と先生はアドバイスしてくれた。私がやりたいことと言えば写真を撮ることしかないのだが、そこから能力に関連づける事が出来ないでいる。

因みに、シズクちゃんは水見式をした次の日にはもう具現化に成功していた。ぎょぎょぎょ〜と変な鳴き声を発する、掃除機がベースになっているであろう実に悪趣…いや個性的な物を私に見せてきたのだ。デメちゃんって言うんだ、可愛いでしょと満足気なシズクちゃんを見て彼女の美的センスは今後信じない方がいい、と脳内でメモしといた。

さらにあの双子姉妹もどんな能力にするかは大体決まったらしい。焦った私は発の参考にするために一応念能力者の先輩であるアビにどんな能力にしたかを聞いてみたが『強化系はオーラを込めた拳で十分戦えるんだよ!!』という実に参考にならない返答しか返ってこなかった。脳筋は使えなかったのでじゃあニコルはどうだろうと聞いてみると、彼は念を使うことが苦手らしく、水見式ができていないとのことだった。

他の人の意見も大して参考にならなかったし、うだうだ考えるのも飽きた。

という訳で、今日は気分転換も兼ねて中央区でゴミを漁ることにした。いつもゴミ拾いは北区だけで済ませてしまうのでぶっちゃけ私は北区から出たことが無い。行ってみたいなという気持ちが無かったわけではない。ただアビを撃破したというアフロゴリラに万が一出会ってしまったらどうしようと怖くて勇気が出なかっただけだ。命は大切にしたい。

では何故北区から出ようと思ったのか。それは気分転換も勿論あるが、カメラを探したいというのが一番の理由だ。先生からのアドバイスもあったし、自分でもあのレンズを創り出してから、漠然とカメラが能力のキーパーソンになるんじゃないかと感じていた。中央区は流星街の中でもゴミの量が一番多く、ゴミの種類も豊富だと言われているから、あそこにならまだ使えるカメラがあるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて私は一人中央区へ赴いた。

そこで放浪すること一時間弱、私はカメラを見つけることができたのだ。チープなインスタントカメラだが、カメラであることには変わりない。あぁ夢にまで見たカメラ!これを持って早く教会へ帰ろう!!

ルンルン気分でカメラを手に取った瞬間、私じゃない手がカメラを掴んだ。

何事かとカメラから顔を上げれば、私と同じ歳くらいの金髪の少年がいた。どうやらこいつがカメラを掴んでいる犯人らしい。離してくれないかなという思いを込めてカメラを引っ張っ……あれ、びくともしないんだけど。

「….ねぇ、あの、離してくれないかな?私が先に見つけたんだよ?」

するとどうだろう、少年はニコッと笑ってこう言い放ったのだ。

「そっちが離しなよ。俺が先に目で取ってたんだよ、それ」

「は?」

キュートな笑顔に似合わぬ理不尽極まりない台詞に思わずマヌケな声が口からぽろっとこぼれ落ちた。視線で物が取れたら手なんていらんわ。

「取ったのは私が先だったから私に所有権があるんだよ。分かる?」

「所有権だって?この街にそんなの存在しないよ。それに生憎、ほしいものは奪い取ってでもモノにするのがモットーなんだ」

はははっとこれまた爽やかに笑い飛ばされた。ああ言えばこう言う、とんだ屁理屈野郎だ。ちょっと本気で引っ張ってやろう、そう思って強めに引っ張ってもビクともしない。ギチ、とカメラが嫌な音を立てただけに終わった。どうやらこの少年、思った以上に力が強いらしい。

「君、見かけによらず力強いね。実は人の皮被ったゴリラなんじゃないの?」

ちょ、ゴリラってワードをここで言わないでよ本当にアフロゴリラが出てきそうでこわいから!それに女の子をゴリラ呼ばわりするなんて最低だ。そんなんじゃモテないぞ。

「そういうのいいからさっさとカメラから手を離してよ!」


絶対に負けられない戦いが幕を開けた。このカメラは私のものだ!