百人一首題-004

雪の積もった京の上屋敷で政宗と兼続は密かに逢瀬をしていた。
存分に身体を重ね合った後、政宗はいつものように紫煙を燻らせる。

「寒いじゃろ」
「臭いがつけばお前と会っていたことがばれるだろう」

だるい身体を引きずって兼続が障子を少し開けた。
まだ熱を残した部屋につんとした冷気が入り込んでくる。
二人の関係は決して人に知られてはいけない。
だから兼続が気にするのも分かるがそれでは寂しい。
だけどそれを口に出すほど政宗も子供ではない。
最後にふうと息を吐き出して煙管を置いた。
簡単に着物を羽織っただけで外を眺める兼続に、政宗が近付いて布団を掛けてやる。

「もう煙草は吸わぬ故、奥に来ぬか」

そう問い掛けても兼続は動こうとしない。
仕方なく政宗は布団の上から兼続を抱き締めた。

「何をそんなに真剣に見ておるのじゃ?」

目前に広がるのは一面の雪景色だ。
政宗の国にも兼続の国も冬はもっと雪が降り積もる。
珍しいどころか、見飽きるほど見ているはずだ。

「風邪をひくぞ」

そう付け加えても兼続は動かない。
せめて寒くないようにと回した腕に力を込めて、兼続の肩に顔を乗せた。

「冬景色というのは、どこか寂しいものだな」

しばらく無言で外を眺めていた二人だったが、ぽつりと兼続が言葉を漏らした。
政宗に甘えるように背中を胸に預ける。

「なぜじゃ」
「分からぬ」

自分でも分からないが、ただ寂しい。
また黙ってしまった兼続の耳に唇を寄せる。

「わしは雪景色が好きじゃ」
「なぜだ」
「白は貴様を思い出すからじゃ」

勝ち誇ったように言うと、兼続の白いうなじがほんのりと赤く染まった。
笑いを噛み殺してそこを唇でなぞっていく。

「兼続」

耳に吹き込むように名前を囁く。
みなまで言わずとも理解したらしく、兼続はそっと障子を閉めた。

|
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -