百人一首題-002

上杉が米沢に移封されてから、兼続は季節の移り変わりも感じないほど政務に励んでいた。
辺り一面を覆った雪が溶ける様も、桜が咲き乱れる様も見ることなく一心不乱に仕事に打ち込んでいた。
政宗とは文のやり取りをたまにしていたが、もう随分と長い間会っていない。
そんなある日のことだった。
いつものように自由に部屋に入ってきた慶次に目を遣る。

「慶次、今はまだ仕事中なのだ」

後にしてくれないか、そう続けようとした言葉を豪快に笑って止めた。

「兼続、あんたに客人だ」
「だから今は仕事中だと・・・」

言葉に詰まったのは慶次の後ろに見覚えのある茶髪を見つけたからだ。
以前見たときよりも身長が大きくなっている気がする。

「わしの誕生日より大事な仕事か?」

久々に会ったというのに挨拶もなしか。
身体は大きくなったのに中身はそのままだと思うと呆れよりも笑みが浮かんでしまう。
変わっていないことが嬉しい。

「政宗、来るなら前以て文を寄越してくれればいいものを」
「前以て言うたら断るじゃろ」

政宗が来ることを断る訳なんてないのに。
他に変わったところはないかとじっと政宗を眺めていると、慶次がパンと手を鳴らした。

「じゃあそろそろ俺は帰るよ」

後は二人でゆっくり楽しみなと去って行った慶次の言葉に顔が熱くなる。
断りもなくでんと座った政宗が客人に茶も出さんのかと声を掛
けてきた。

「久し振りに会ったというのに挨拶もなしか」
「それより兼続、わしに言うことはないのか?」

さっき言いそびれたことを口にしてみると、見当違いな答えが返ってきた。
政宗が求める言葉は分かっている。
むすっとむくれた顔はよく知る政宗だ。
懐かしくて嬉しくてクスリと笑うとギロリと一つ目が睨んできた。

「何が可笑しい」
「年が大きくなっても中身は変わらないのだな」
「分かっておるなら文くらい寄越せ」

しゅんといじけた政宗の正面に向き合う。

「すまない、季節が変わったことにも気付いてなかったのだ」
「ではなんで分かったのじゃ」
「部屋に入ってきたとき自分で言っただろう」

わしの誕生日よりも大事な仕事か、と。
それでようやく兼続は夏がきていることに気付いたのだ。
無意識に口走っていたのか、政宗なバツの悪そうな表情を浮かべている。

「・・・兼続が悪いのじゃ」
「ああ、すまなかった」

ふわふわとした茶髪を一撫でして立ち上がる。
それと同時に心配そうに見上げてくる政宗に微笑んでみせた。

「客人に茶を出そうと思ってな。どうせ今日は泊まっていくのだろう?夕餉が必要なことも伝えてくる」

政宗は一瞬嬉しそうな表情を見せてからフンと鼻を鳴らした。
小姓に必要なことを伝えて、政宗の前に座る。

「誕生日おめでとう、政宗」

贈り物は用意しておらずどうしようかと思案していると政宗が抱き着いてきた。
もう夏だというのに、この体温が心地好い。

「わしはこうやって祝ってもらえるだけで十分じゃ」

そう言って近付いてきた唇に、兼続もゆっくり瞳を閉じた。

*

お題を全く活かせてないこの感じ←
DCも絶賛苦戦中
消してーリライトしてー


夏といえば伊達さん誕生日ってことで誕生日ネタで

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