小説 | ナノ



03
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〜神羅カンパニー内〜



ユリア:「はーなーせっつの!!触るな!!」


兵:「で、ですが…!」


ユリア:「この状態で逃げようとかしないから!」



両手は後ろで縛られ、ご丁寧に手錠もかけられている



ツォン:「ユリア、静かにしろ」


ユリア:「ふんっ」



ツォンが盛大にため息をつく



エアリス:「ふふっ…」


ルード:「…おかしいか?」


エアリス:「とっても!だって、皆すごく仲良しなんだもん。ね?」


ユリア:「冗談じゃないって。誰がこんな赤毛と…、…あれ?レノは?」


ツォン:「さっきの戦闘で深手を負ったらしい。……着いたぞ」



隣にいた護衛の兵が離れた

最後尾のルードの前を歩きながら社長室へと続く階段を昇る


入社当時はドキドキしながら昇った階段も、今では一段一段昇る度に憎しみと怒りが沸き上がる


そして、昇りきれば憎たらしい社長の顔……

こいつの顔、二度と見たくなかった



ツォン:「古代種と脱走者を捕らえました」


社長:「うむ……ん?おぉ、ユリアか!久しぶりだな」


ユリア:「………どうも…」



素っ気なく返事をする

そんな事など気にも止めず、社長は話しだす



社長:「いやぁ、しばらく見ない間に……顔立ちが奴に似てきたんじゃないか?」



ニヤリと悪質な笑みを浮かべる社長

それに対してユリアは眉間に皺を寄せる

体も声も、怒りで震えだした



ユリア:「……あの人の事、覚えてるんだ…」


社長:「勿論だ!惜しい事をしたな…。奴は本当に
ユリア:「アンタに何が分かるのよっ!!」



静かだった空間に声がエコーする

さよならしたはずの自分が現れる

弱くて、頼りない、女の自分


それでも社長を睨み付ける目の鋭さは変わらない

が、社長は少しも怯まなかった

寧ろ楽しそうだ



社長:「君には申し訳ない事をしたと思っている。さぞかし悲しかったろう?」



ゆっくりと椅子から立ち上がり、ユリアの近くへ歩み寄る



社長:「さて、慰謝料はいくら欲しい?」



服の内ポケットから束になったお札を取り出す

瞬間、ユリアの右足が社長に回し蹴りをかました

しかし、それは社長には届かず、ルードの左腕で制される



ユリア:「っく……!」



未だ社長を睨みつつも、足を下ろす

ルードはまだ警戒しているのか動かない



ツォン:「社長、お怪我は?」


社長:「大丈夫だ。それより、古代種を宝条の所へ連れていけ。その女は独房へ入れろ」


ツォン:「はっ!」



エアリスはツォンに連れられ、階段を降りる



エアリス:「ユリアっ…」



心配そうにこちらを見るエアリス

自分は大丈夫だ、と言う風に笑みを返してみた

これで少し安心してくれたらいいけど…



ルード:「……行くぞ」



ルードに続いて階段を降りる

67階の独房へと向かうため…




ルード:「おとなしくしていろ」



両手を縛っていた縄と手錠を外される

が、ここは67階ではない



ユリア:「おい、ここって医務室だろ?」



ユリアの言葉は無視され、ドアの前まで押される


(シュッ!)



自動で開くドア

部屋の中には……



レノ:「ユリア!?」


ユリア:「……やっぱり…」



怪我を治療中のレノ

と、金髪の女性



ユリア:「社内恋愛はよそでやっていただけませんか〜?」


レノ:「なんだ、嫉妬か?俺にはユリア以外ありえないぞ、と」


ユリア:「きもい」



ズバッと返されたきつい一言にレノはがっくりと項垂れた

それを軽く無視して金髪の女性の方を向く



ユリア:「貴女は?」


イリーナ:「あたしはイリーナ。最近入ったばっかり!」


ユリア:「そっか…ボクはユリア。頑張ってな、イリーナ」


イリーナ:「よろしく、ユリアっ」


ユリア:「なっ…!?」



いきなりイリーナに抱きつかれ、目の前が暗くなる



ユリア:「ちょ、ボクのが先輩なんだからな!?」


イリーナ:「でも、年はあたしのが上だし。それに、ユリア可愛い〜!!」


ユリア:「あ、そう…」



もう勝手にしてくれと言わんばかりに脱力する

ふと、イリーナが疑問を口にした



イリーナ:「そういえば、何でユリアは捕虜なんかになってたんですか〜?」


レノ:「そいつ、勝手にタークス辞めようとしてたんだぞ、と」


イリーナ:「でも、タークスを辞めるのは死ぬ時ですよね?死のうとか思ったの?」


ユリア:「…………」



顔を覗き込まれ、言葉に詰まる



レノ:「考えろよ、イリーナ」


ルード:「…ユリアは脱走したんだ」


イリーナ:「うわ〜……マジすか?勇気あるねぇ」



ツォン:「ありすぎて困る程だがな」


「「ツォンさん!!」」


ツォン:「ルード、ユリアは独房へ入れておくようにと言われたんじゃなかったのか?」


ルード:「…申し訳ありません」


ツォン:「レノ、怪我の具合はどうだ?」


レノ:「あはは、こんなんすぐに治りま
イリーナ:「全治三週間って感じで〜す」
…おい!イリーナ!!」


ツォン:「復帰は遅くてもいい。確実に治せ」


レノ:「はっ!」


ツォン:「ユリア。行くぞ」


ユリア:「は〜い」



部屋を出る時、ツォンを見つめるイリーナの目がハートだったような……

ツォンってモテるんだな…









〜独房〜



ツォン:「ユリア、タークスに戻るつもりはないのか?」



扉越しに尋ねるツォン



ユリア:「……ないよ」



はっきりと答える

すると、ツォンは明らかに残念そうな声で“そうか…”と言った



ユリア:「何?ボクがいなくて淋しい?」


ツォン:「あぁ、少しな」


ユリア:「え……」



心臓がどきり、と跳ねる

まだ自分はタークスで必要とされている…?

もしかして…まだ……、



ツォン:「見張り、頼んだぞ」

兵:「はっ!」


ユリア:「あ…!!ちょ、待て!ツォン!!」



慌てて我に返ったが遅かった

何度呼び掛けても一切振り向かずにツォンは去っていった



ユリア:「…なんなんだよ、アイツは……」



変に混乱させられた…

訳が分からずイライラしながら独り言を言っていると、壁を軽く叩く音がした


(コンコンッ、)



エアリス:「ユリア?居るの?」


ユリア:「エアリス!大丈夫!?」


エアリス:「大丈夫!特に何もされてないし」


ユリア:「よかった……」



心から安堵の息を漏らす



エアリス:「でもね…実験サンプルとの子孫、残さなきゃいけないみたい…」


ユリア:「し、子孫!?」


…子孫を残すって…!!

そんなイカれた事を考えるのは、宝条しかいない



ユリア:「しかも相手は実験サンプル!!…あんのバカ眼鏡、会ったら眼鏡叩き割ってやるっ!」


エアリス:「そんなに怒らないで?…それに、全然不安じゃないの」


ユリア:「なんで!?普通、怖いとか嫌とかあるだろ!!」


エアリス:「なんとなく…なんとなくね?クラウド達が助けに来てくれる気がする」


ユリア:「……あ…」



クラウド:「必ず助ける!!」



そういやそんな事も言ってたっけ…

と、エアリス側の扉の鍵が開く音がした



兵:「宝条博士が呼んでいる。来い」


エアリス:「じゃあね、ユリア」


ユリア:「…うん」



遠ざかる足音

一人になったユリアは、ベッドに横になった



ユリア『クラウド……来るなら早く来いよ…』








「きびきび歩け!」


「うるせぇ!分かってる!!」



随分にぎやかだな…



「女2人はそこに入れ」


「ちょっと!乱暴はやめてよね!!」


「暴力反対〜!」



右隣の部屋の扉が開く

中に女性が二人入れられたようだ



「お前達はこっちだ」


「おい、なんだこりゃあ!クソ狭いじゃねぇか!!」


「…………」



左隣の部屋の扉が開く

男性と誰かが入れられたようだった



「お前はここだ」



自分が入っている部屋の扉が開く

何!?独房って相部屋とかあるの?

乱暴に閉められた扉

さて、どんな奴と相部屋しなきゃいけないのかな…

ベッドから起き上がり、入ってきた人物を注意深く見てみる



ユリア:「ク、ラウド?」


クラウド:「っ!!ユリア!?」


ユリア:「うん!相部屋だけど、よろしく」


クラウド:「…無事で、よかった……」



心から安心したような顔をするクラウド

とりあえずベッドに腰掛けて話し合う



ユリア:「全員いるのか?」


クラウド:「あぁ。エアリスを助けだしたら…こうなった」


ユリア:「あ!サンプル!!…ちゃんと阻止したんだろうな!?」


クラウド:「あぁ。レッドXVの方も演技をしていたらしいしな」


ユリア:「…?ま、詳しくは明日聞かせてよ。ボク、まだ寝足りなくってさ〜」


クラウド:「……え?」



大きく伸びをしてベッドに横になる



………………………。



おい。なんだ、この沈黙は…



ユリア:「…なんで黙ってんだよ」


クラウド:「え、いや……」


ユリア:「お前……ボクが女だからって遠慮してんのか?」


クラウド:「…いや、その………とりあえず、俺は床で寝
ユリア:「おりゃぁっ!!」
…なっ!?」



ベッドから立ち上がろうとするクラウドを、ラリアットの要領で引き戻す

バランスを崩したクラウドは、背中からベッドに倒れた



クラウド:「…どこにそんな力があったんだ?」


ユリア:「コツさえ掴めば誰にでもできるぞ?」


クラウド:「…へぇ…」


ユリア:「あはは、何だよ!このやろー!」



目の前にあるクラウドの髪をくしゃくしゃと掻き回す

クラウドは少し呆れ気味のため息を吐いた



ユリア:「へへ……クラウドの髪、サラサラ…」



今度は髪を指に絡ませてあそび始めたユリアに、もうどうにでもなれ、と半ばヤケクソな気持ちでされるがままになっていたクラウドだが、ふとユリアの動きが止まっていることに気づいた



クラウド:「ユリア?」


ユリア:「すー……くー……」


クラウド『寝たのか…』



枕がないとつらいだろうから…

誰に聞かせる訳でもないのにそんな言い訳を心の中で唱えながらユリアの頭をそっと持ち上げ、自分の腕に乗せてやる



ユリア:「ん………」



頭の位置が変わったからかユリアはモゾモゾと動いて寝返りを打ち、クラウドに背を向ける形となった

それがなんとなく面白くなく、クラウドは後ろからそっとユリアの腰を抱き締める



クラウド:「ユリアが悪い…」



そう小さく呟くと、自分もゆっくりとまぶたを閉じた









ユリア:「う、ん……」



自然と目が覚める

見慣れない風景、少し硬めの枕

…………枕?

寝返りを打つと、間近に美形が寝ていた

長いまつ毛、きめ細やかな肌、さらさらの金色の髪の毛

こんな羨ましい要素を兼ね揃えてる奴なんて、クラウドぐらいしか……

と、そこまで考えて思い出した

そうだ、ここは神羅の独房で、捕まったクラウドと相部屋になって…

ふと自分の頭の下にあるそれがクラウドから伸びているものだと分かり、軽く体を起こして確認する

クラウド、腕枕してくれたんだ……後でお礼言わなくちゃ!

それと同時に腰元に何か違和感、というか重みを感じて視線を落とした



ユリア:「…何これ」



自分の腰に絡まっている腕

それは明らかにクラウドの腕

何度見てもクラウドの腕

その光景に自分の体温が急上昇するのを感じた



ユリア:「ーーーっ!起きろバカ!!」


クラウド:「っう!!」



渾身の力を込めてクラウドの腹にこぶしを埋める

いきなり攻撃を食らったクラウドはただでさえ狭いベッドから容易に転げ落ちた



ユリア:「し、信じらんない!何なんだよ!!クラウド信じたボクがバカだった!」


クラウド:「ゲホッ!!……おい、ユリア…」



それだけ言って逃げるように部屋から出ていくユリア

が、すぐに血相を変えて戻ってきた



ユリア:「なぁ!すぐそこに兵がたくさん倒れてる!!」


クラウド:「何!?……ユリア、お前どうやってこの部屋を出た?」


ユリア:「どうやってって……!…なんで扉が開いてるんだ?」


クラウド:「…ユリアはティファ達を頼む」


ユリア:「分かった!」



こと切れている兵の服を探り、持っていた鍵でティファ達の独房の扉を開ける



ティファ:「ユリア!?」


エアリス:「どうやって…」


ユリア:「説明は後!とりあえず部屋から出て。逃げよう」



全員を独房から救出し、廊下を駆け抜ける



バレット:「おいおい、何なんだ?この血の跡は!」


クラウド:「…分からない。とりあえず辿ってみよう。……ユリア、待てって」



大股かつ早足でクラウドよりも先を歩くユリアの肩を掴む

神羅ビルの中を熟知しているのはユリアも同じだが、何があるか分からない状態で先を歩かせるのは心配だ

そう思って声をかけたのだが、クラウドの手は軽く払われ、挙句睨まれた



ユリア:「触るな、セクハラ大魔王」


クラウド:「セクハラ……」



少し落ち込んだのか肩を落とすクラウドと無視して先を歩くユリア

その二人の後ろ姿を見ながら女性陣はヒソヒソと話し合う



ティファ:「あの二人、何かあったのかしら?」


エアリス:「怒鳴り声、してたよね…」


ティファ:「揉めるようなことあったのかな?」


エアリス:「もしかして、ユリアの寝込みをクラウドが…」
ユリア:「そこ!聞こえてる!早く行くぞ!」



そう怒鳴ったユリアの耳と頬がほんのり赤い

……図星か

全員からの哀れみや軽蔑の眼差しを背中に受け、クラウドは大きくため息をついた




血は上の階まで続いている

階段を上り、最上階にある社長室まで
その血痕を辿ると机に突っ伏しているプレジデントが目に入った

バレットが駆け寄り、呼吸の有無を確認する



バレット:「死んでる…神羅カンパニーのボスが死んだ…」



プレジデント神羅は背中に刀を刺され、事切れていた



ティファ:「この刀は?!」


クラウド:「セフィロスのものだ!!」


ユリア:「セフィロス…」


ティファ:「…セフィロスは生きているのね?」


クラウド:「…そうみたいだな。この刀を使えるのはセフィロスしかいないはずだ」


バレット:「誰がやったっていいじゃねぇか!これで神羅も終わりだぜ!」


ユリア:「いや、終わりじゃない……こいつには一人息子の
パルマー:「うひょ!」


「「っ!!!!」」



誰かが柱の影からひょっこりと現れた

宇宙開発部担当のパルマーだ

全員の顔を見て、全速力で逃げ出そうとするパルマーだったが、クラウドとバレットにあっさりと捕まった



パルマー:「ここここ殺さないでくれ!」


クラウド:「何があったんだ?」


パルマー:「セ、セフィロス。セフィロスが来た」


ユリア:「見たのか?セフィロスを見たのか?」


パルマー:「あぁ、見た!この目で見た!」



その後も問いただすと、セフィロスは『約束の地』がなんたら…と言っていたらしい



ティファ:「じゃあ、何?約束の地っていうのは本当にあって、セフィロスは約束の地を神羅から守るためにこんなことを?」


バレット:「いい奴じゃねぇのか?」


クラウド:「約束の地を守る?いい奴?…違う!!そんな単純な話じゃない!俺は…俺は知ってるんだ。あいつの目的を……」



憎々しげに刀を睨むクラウド

そこに、エアリスが遠慮がちに挙手をした



エアリス:「あの〜…ユリア、どこ行ったか知ってる?」


「「…え?」」





−社長室・屋外−



ユリア:「なんかさ、今日のボクってセクハラ率高くない?」


パルマー:「うひょ!お前、ルーファウス様の好みの女だからなっ。うひょ!」



遠くを飛んでいるヘリにパルマーが手を振ると、ヘリは近づいてきた



ユリア:「会話噛み合ってないし…」


「パルマー、誰だそいつは」



ヘリから降り立ったのは、オールバックの若者

プレジデント神羅の一人息子、ルーファウスだ



パルマー:「うひょ!ルーファウス様のお気に召すかと思い…」


ルーファウス:「ほう…?」



ぐっと近付き、ユリアの顔を覗き込む



ユリア:「な、なんだよ…」


ルーファウス:「…気に入った。こいつを連れて帰って
クラウド:「させるかっ!」



ユリアのまわりに皆が駆け付ける



ルーファウス:「お前達はなんだ?」



面倒くさそうにクラウドを見据えるルーファウス



クラウド:「元ソルジャー・クラス1ST。クラウドだ!」


バレット:「アバランチだ!」


ティファ:「同じく!」


エアリス:「……スラムの花売り」


レッドXV:「…実験サンプル」


ユリア:「元タークス…」


ルーファウス:「ふっ、おかしな組み合わせだ…」



……ホントだよな



ルーファウス:「さて、私はルーファウス。この神羅カンパニーの社長だ」



長々と続くルーファウスの演説

つーか、親父が死んだらさっさと後継ぐのかよ…

ボーッと聞き流していると、いつのまにやらクラウド以外の皆が居なくなっていた



ユリア:「あれ?皆は?」



ふと見れば、少し離れた場所で戦っているクラウドとルーファウス

ちょうど勝負はついたらしく、ルーファウスがヘリに乗って逃げる



ユリア:「行っちゃったよ…」



飛んでいくヘリを見届けていると、クラウドが駆け寄ってきた



クラウド:「ユリア、行くぞ!」


ユリア:「……やだ」


クラウド:「はぁ?」


ユリア:「ボク、クラウドの事許してないからな?」


クラウド:「っ!あ、れは…」


ユリア:「あ〜あ。“俺を信じろ!”とか言っといてさ。信用できないんじゃ話になんないよな〜」


クラウド:「ユリア、本当に悪かったと思ってる。だから……許してほしい…」


ユリア:「…ボクのお願い、何でも聞いてくれる?」


クラウド:「……あぁ。できる限りなら」



すると、さっきとは打って変わって笑顔になるユリア



ユリア:「じゃあ、許す!クラウドだって変態じゃないんだしな?」


クラウド:「あ、あぁ…」



クラウドが軽く視線を逸らした事にユリアは気付いていない



ユリア:「よっし!まず一つ目のお願い!!」





兵:「あのバイクを追えっ!」


兵:「おいっ、後ろにユリアさん乗ってるんだからな!!気を付けろよ!」


兵:「ちっくしょ〜、あの金髪!なんて羨ましい…!!」



クラウド:「ユリア、落ちるなよ?」


ユリア:「大丈夫!あはは、楽しい〜!!」



前にはティファ達のトラック

後ろには神羅兵

そしてユリアはクラウドの運転するバイクの後ろに跨っていた



ユリア:「いい風だね!うん、最高〜!!」


クラウド:「……しっかり掴まってろよ?」


ユリア:「はいはい」



クラウドの腰に腕を回す



ユリア:「あ………」



(ドクン、ドクン…)



心臓がうるさく脈打つ



『殺せ!奴を殺せ!!』
甦る銃声

『やめてっ!!お願い!!』
悲痛な叫び

『じゃあ、また後で』
大切な人の笑顔



『元気でな』



それが、あの人との最後の会話



「───、…ユリア!」


ユリア:「え?」



いきなり耳に飛び込んできたバイクの音

クラウドが心配そうに問う



クラウド:「大丈夫か?」


ユリア:「あぁ、全然平気っ」


クラウド:「ならいい。兵は巻いたな?…飛ばすぞ」



グッ、とハンドルを握るクラウド

振り落とされないように、しっかりとクラウドにしがみつく

自分も彼も、離れないように……





バレット:「さて、どうするよ?」



神羅が送ってきた戦闘機を倒し、皆でミッドガルを一望する



クラウド:「セフィロスは生きている。俺は……あの時の決着をつけなくてはならない」


バレット:「それが星を救う事になるんだな?」


クラウド:「……おそらく、な」


バレット:「おっし、オレは行くぜ!」



やる気満々に叫ぶバレット

それに続けてエアリスも叫ぶ



エアリス:「わたしも行く!…知りたい事、たくさんあるから」


ユリア:「古代種の事?」


エアリス:「……いろいろ、たくさん」


ティファ:「さらばミッドガル、ね」



近くに垂れ下がっていたワイヤーを使って下へ降りる

隣でエアリスが少し緊張気味に話しかけてきた



エアリス:「そういえば、わたしミッドガル出るの、初めて……」


ユリア:「……不安?」


エアリス:「ちょっと、う〜ん…かなり、かな。でも、なんでも屋さんが一緒だし、ね?」



そう言ってユリアの手をそっと握り締める

ユリアもそれに答えるように握り返した



ユリア:「何があっても、ボクはエアリスを守るから…」


エアリス:「わぁ!頼もしいね」


ユリア:「へへ…っ」



自分は変わる

今までの弱い自分とは違うんだ!



バレット:「ここから先、団体行動にはリーダーが必要だ。リーダーと言えばオレしかいねぇ!」



……どうやらバレットはかなり興奮状態らしい

そこへティファとエアリスが冷静に突っ込む



ティファ:「そうかしら……」


エアリス:「どう考えてもクラウド、よね」



あちゃ〜、バレット固まっちゃったよ…



バレット:「チッ………分かったよ。ここから北東にカームって町があるんだ。何かあったらそこを集合場所にしよう」



それだけ言うと、ジロリとクラウドを睨む



バレット:「それにしたって野っ原を6人でゾロゾロ歩くなんて危なくてしょうがねぇ。お前、パーティーを2組に分けてみろ」



やれやれ、と首を振りながらパーティーを分けるクラウド

一つは、
クラウド、バレット、レッドXV

もう一つは、
ユリア、エアリス、ティファ



エアリス:「……予想外の」


ティファ:「……組み合わせ」


ユリア:「……だな」



男3人で固めやがって…!!

男女差別だーっ!!



ティファ:「それじゃあ、カームで!」



こうしてボク達とクラウド達は別れた



その時はまだ、
これから起きる出来事の大きさや重大さなんて分かるはずもなく、

それによって自分達がどんな事になるか

なんて知る由(よし)も無かった…





03 終