01/18 ( 15:25 )

くだらないツイッターネタ

ポンコツ紙コップジュース自販機

紺野が注文ボタンを押すと、最初に紙コップが落ちてきて
次にみかんジュースが注がれて、クリームが少めに注がれて、
おつりが返却された後、最後に黒い煙が出ました。

「煙が不安だな…」
「でも、飲み物自体は普通ですね」
 まあ、子供が飲むようなオレンジミルクだ。飲めないものではない。
「噂ではもっと酷いって聞いてたんだけどな」
「これなら安心ですね」
 そう言って雪子も百円を投入し、自販機の注ぎ口を覗き込む。

雪子が注文ボタンを押すと、最初にパインジュースが注がれて、
次にミルクが少めに注がれて、みかんジュースが注がれて、
フォームミルクが注がれた後…
 
「うん、美味しそう」
「やっぱり最低限飲めるものになるんだよ」

爆発しました。

 ぼんっと爆発した後、注ぎ口の中には何も残っていなかった。
「ひっ!ふぇ…」
「あ…えっと…」
 びっくりととがっかりの相乗効果で思わず半泣きになってしまった雪子は、ぎゅっと紺野に抱きついた。
 思わぬ展開と役得に青年はすこし自販機に感謝した。
「これ、まだ口つけてないからあげるよ」

藍沢

藍沢が注文ボタンを押すと、最初に紙コップが落ちてきて、
次にカルピスソーダが注がれて、おつりが返却されて、
玉露入り緑茶が注がれた後、最後にミルクが少めに注がれました。

 反応に困る物が出てきてしまい、藍沢は立ち尽くした。
 山並書房にあるカップ式自販機が壊れて妙なことになっている、と聞いてうっかり試した自分を呪う。
まさに好奇心猫をも殺す、だ。
「…、私も買ってみます」
 面白がって着いてきていた雪代も、泡の立つ見た目だけ抹茶ミルクになんとコメントしていいかわからず、
自分の運を試すことにした。

雪代が注文ボタンを押すと、最初に紙コップが落ちてきて、
次に砂糖が少めに注がれて、ホットココアが注がれて、
ホットココアが注がれた後、最後に砂糖が少めに注がれました。

 ひたすらに甘いものの常識的過ぎるものが出来上がり、雪代は困ってしまう。
 助けを求めるように、二人の様子を見ていた担当編集を振り返ると、彼はしてやったりと言ったような笑顔を浮かべていた。
「普段の行いの違いですよ、ね?藍沢先生」





01/12 ( 00:21 )

ボーイフレンド・ジーンズ

琉夏 卒業後

 さあさあと水の流れる音で沙雪は目を覚ました。
 目を開くと古い木の天井に簡素なランプが下がっているのが見えて、ああ昨日は琉夏君の家に泊まったんだっ
け、と意識を覚醒させる。ぐしゃぐしゃの敷布団の隣は空いていて、さらにタオルケットがきれいに沙雪の上に
掛けてあったから、琉夏はもう起きているということになる。
 水音は庭、というか琉夏が勝手に庭としている隣の空き地から聞こえてくるようだった。彼は庭木に水をやっ
ているのだろう。
 琉夏が脱ぎ散らかしたらしいTシャツを被って、もぞもぞと布団から抜け出す。自分の下着を拾いおざなりに
穿いた後、中途半端に空いたカーテンから外をうかがいながら伸びをした。
「琉夏くーん、おはよぉ…」
「おはよ、紗雪」
 にっこりと笑った彼は、裸にオーバーオールという格好でしかし麦藁帽子は被り、ホースを振るっている。
「またそんな格好で…、向かいのおばさんに何か言われないのぉ…」
「ダイジョーブ、怪しくないし」
 まあ、格好良いから通報はされないよね、とまだ半分眠ったままの沙雪は妙な納得をしてぼうっと琉夏を見て
いた。

 琥一

「ああー!また新しいジーパン買ったの?」
「るせぇ、それにジーパン言うな」
 琥一の履いているジーンズはいつも、素人の沙雪から見ても決して安いものではなかった。体格が良く足も長
い彼は、アメリカサイズのジーンズを穿いてもとても様になる。似合っているし格好いいとは思うのだが。
「こないだも革ジャン買ったばっかでしょ?せーつーやーくーぅ」
「わーってるよ。でもな、これレアもんでこの機会を逃すと…」
 趣味やコレクションの事になると金銭感覚が吹っ飛ぶのは、父親譲りらしいと言うことを琉夏からこっそり聞
いたことがある。桜井の母も手を焼くその性分に、諦めるしかないのかと、もう、と沙雪は溜息をついた。

 嵐
 服装は秋3で<嵐:灰色長袖パーカー><新名:レースクィーンお揃い>ボトムは創作

 何かの冗談で、新名と嵐の私服を交換してみようと言う話になった。柔道場に私服を持ち込み、深雪を筆頭に
一二年含め全部員が部室の外でわくわくしながら待つ中、着替えをする二人の声が聞こえてくる。
「やっぱコレにして良かったよ。嵐さん体厚いから、俺のトップス入んねーと思ったし」
「…すげえぴったりするな。動きにくくねーか、コレ」
「それがオシャレなの。体型出た方が格好いいっしょ」
 その会話の時点で、深雪は浮き立つ心を抑えられなくなっていた。趣味は全く違うが、新名がついているから
珍妙なことにはならないだろう。そしてきっととても格好いいはずだとそわそわするマネージャーを、下級生が
驚いたような目で見ている。
 やがて、新名のいいっすよーという声がし、二年の新名と仲の良い部員が茶化すように部室へ入っていった。
「新名が着ると、ジャージパーカーもチャラくなるんだな」
「えー何それヒデエ」
「嵐さん、腰細!ええ!」
「そうか?」
 わいわいと聞こえる会話だけでも耐えられず、深雪はそっとドアの影から中を覗いてみる。
「何してんだ、深雪」
 そういって嵐は振り返り、その全身が少女の前に晒される。
 F1レースで振られる旗のような白黒模様のジャケットをはおり、中にはタイトなVネックのシャツを着てい
る。そして下半身にはこれまた細めのジーンズを穿いていた。
 先の会話の通り動き易さに重きを置き、締め付けを好まない嵐のタイトな姿に、深雪はくらりとした。特に先
ほど後輩の誰かが言ったように、腰が、セクシーすぎる。
「深雪?来いよ」
 嵐に手を引かれるまでドアから動かなかった彼女の顔に、嵐君が格好良すぎて困っていると大書きされている
のに気付いた新名は、ひとりほくそえんだ。

 新名

「私と歩くときは腰パンルーズ穿き禁止」
 びしっ、と言った雪音にしょんぼりと新名は頷いた。
「でもさ、雪音ちゃんだってEVISUのジーンズは腰パンしてもカッコイイと思わない?」
 そりゃそうだけど、と言った彼女はしかし表情を緩めない。
「でも駄目。ニーナ脚のライン綺麗なんだから、ルーズ禁止」
 はぁい、としおたれた犬のように返事をした新名はしかし、褒められたことにも気付いていじけるにいじけら
れない。
「代わりにブーツ買ってあげる!」
「え、いいの?」
 わかり易い飴と鞭に、律儀に尻尾を振るとご主人様は上機嫌に笑ってくれた。

 紺野

 引っ越すときに大分捨てたのに、高校三年間で雪子の部屋には本が溢れてしまった。大学に進学する前の春休
み、流石に整理しないと新しい本も買えないと思い立つも一人では中々選別が進まない。ついつい読み返した
りしてしまう為だ。
「本の整理が進まないんですよー」
 一緒に出かけた折にぽつりと雪子がそう零すと、ふふと笑った紺野は整理の協力を申し出た。
「ついつい読んじゃうんだよね。僕もそうだからわかるよ」
「紺野先輩もそうなんですか?」

 という会話をしてから一週間後。ばたばたと部屋を片付け本を出せる状態に整えた雪子の前に、紺野が現れた。
「さあ、始めようか」
 そう言ってシャツの腕をまくる彼に答えないといけないのに、雪子は動けないでいた。
「ん?どうしたの」
「先輩も、ジーパン穿くんですねぇ…!」
「作業しやすい格好がいいと思って」
 お姉さんにでも押し付けられたのだろうか、きちんと紺野のサイズに合った細身のジーンズは腰骨の位置まで
の穿きの浅いもので、すらりとした下半身を魅力的に引き立てている。骨格のしっかりした男らしい腰が露にな
っている様は新鮮で非常に性的だ。
「雪子さん?何か気になることでもある?」
「やっ、いえっ、何でもないですっ」
 ぼおっと頬が熱くなるのが解り、ふしだらな妄想をした自身を雪子は恥じるしかなかった。



01/08 ( 17:56 )

たまには冗談を コピペネタ

 琉夏 卒業後

 沙雪が家に居ると思えば、アンネリーのアルバイトで疲れきった体も軽くなるような気がした。フリーターと
大学一年で同棲という訳にもいかず、代わりに彼女は足繁く琉夏の家に通ってくれる。申し訳ない気持ちもある
が、心から幸せだと琉夏は今の生活を慈しんでいた。
 バイクは維持費がかかるからと桜井の家に預け、バイト先の先輩から譲ってもらったスクーターが今の琉夏の
足だった。その軽いエンジン音を最初は厭ったものの、沙雪がその音で琉夏の帰宅を知っていると聞き、悪くな
いと思うようになってしまった。琥一が手を入れているため軽快な走りを維持するスクーターは、今日も無事琉
夏を自宅まで送り届けた。柵にチェーンを掛けているとぱちんと玄関の明かりが点き、沙雪が待っていることを
知らせてくれる。
 急いでドアまで走り、扉を開く。
「ただいま!」」
 粗末でも清潔な玄関で、エプロンをした差雪が菜箸を持ったまま笑顔で迎えてくれた。奥からは香ばしいにお
いが漂ってくる。
 普段なら、おかえり琉夏君、今日はお肉だよ、等といったことを喋るはずの彼女は、今日はなぜか黙って笑っ
たままだ。
「沙雪?」
「あのね、琉夏君。ご飯にする?ライスにする?それともお・こ・め?」
 テレビ等でよく聞く新婚さんの台詞だが、何かが違う。相変わらず笑って琉夏を覗き込んでくる沙雪の瞳は、
試すような光を放っている。
「…それ以外がいいな!」
「きゃっ」
 背後を読まなければならないお笑いや謎掛けは苦手なのだ、解りやすくて笑えるのがいい。沙雪を抱き上げて
キスをし、一間しかない部屋まで三歩で運ぶ。
「ちょ、ちょっとまって琉夏君!しいたけが焦げちゃう」
「ん?あ、そっか」
 くるりと方向転換して一歩半でコンロに近づき彼女を抱き上げてない方の手で火を止める。
「じゃ、遠慮なく」
「や、琉夏君ってば!ご飯食べてから!ね?琉夏ったら!」
 じたばたと暴れる少女の体を畳に押し倒し、至近距離で笑って口を開いた。
「俺は、ご飯よりライスよりお米よりオマエがいいの」
 ちょっとした冗談だったのに、と言ってむずがる沙雪はまだ菜箸を握っている。それが妙におかしくて、琉夏
は笑ってしまった。






01/06 ( 20:38 )

もしもあの子が泣き虫だったら
 新名

 新年初売りの福袋戦争に参戦した雪音は、沢山の紙袋を足元に置きショッピングモールの中央広場に立ち尽く
していた。初売りに連れ立って来た新名と待ち合わせをしているのだが、約束の時間を過ぎても彼は現れなかっ
たのだ。メンズを回るという彼と別れて三時間、八割方のお目当てを手に入れて上機嫌だったのに、雪音はどんど
ん心が冷えていくのを感じた。
 思わぬ混雑に巻き込まれているだけかもしれないし、もしかしたら迷子や道案内に時間を食っているのかも知
れない。そう自分に言い聞かせ、人ごみで電波が悪い所為で電池を消耗し、画面が真っ黒になってしまった携帯
を何度も開閉する。
 普段なら、公衆電話から両親に電話をして迎えに来てもらうか、持てない分の荷物をロッカーに入たり宅配便
を使うかしてさっさと帰ってしまうのだが、連絡手段の途絶えた今はひたすら新名を待つしかなかった。充電器
を買おうにも、約束の場所にいないと擦れ違ってしまうような気がして思い切ることが出来ない。
 楽しそうな家族連れや待ち合わせをするカップルが集う広場で一人きり、携帯をいじるわけにも行かずぼうっ
としているしかない。
「ニーナのばか」
 やるせなさと寂しさに、眉間がつうんと痛くなってくる。ここで泣いてしまったら周囲も驚くだろうしみっと
もないことこの上ないのに、涙が溢れそうになる。だから、俯いて福袋の中に入っていた帽子を目深に被りマフ
ラーで鼻先までを隠した。
 すん、と鼻を鳴らして植え込みのレンガに腰掛ける。モール内なので通路でも暖房が効いているはずなのに、
肌寒くなって自分の体を抱き締める。幸せな周囲を見ることが辛く、ネイルを施した指先をカリカリといじった。

 どれくらいそうしていたのだろうか、不意に頬に触れられてはっと雪音は顔を上げた。
「大丈夫?雪音ちゃん」
 何回も呼んだんだけど、と間近にある端正な顔が心配そうに目を眇める。
「やっと来たぁ…」
 安堵と触れられた手の温かさに、ぼろぼろと我慢していた涙がこぼれた。
「あ、わっ、ごめん!」
「おそいっ…」
 ぐすぐすと泣き出した雪音に、新名は心から驚きうろたえる。彼女と携帯電話が通じなくなり、待ち合わせに
遅れることが確定した時点で怒られるか先に帰られるかどちらかだと思っていたのだ。まさか泣かれるとは思わ
ず、機嫌を取ろうと通りすがりに買ってきた温かいカフェラテを持て余してしまう。
「ごめん、寂しかった?」
 こくんと頷いて、座ったままの雪音はぎゅっと新名の胴に抱きついてくる。一人で立って前を向いている印象
の強い彼女の、あまりに弱い姿に胸が締め付けられる。切ないような嬉しいような甘酸っぱい気持ちで、新名は
しゃがんで雪音を抱き返した。
「ごめん」
「来てくれたから、それでいい」
 もう謝らないで、と言っている内容はいつもの彼女なのに声が鼻声だから全く強さがない。
「機嫌くらい取らせてよ」
「ばぁか」
 泣きながらもくしゃっと笑ってくれた雪音に安堵し、丸まった背中を撫でながら新名は温かい飲み物を手渡し
た。



01/01 ( 11:33 )

欲張りなオレを許してください

 新名

 一体大の柔道部でも新名はめきめきと頭角を現した。嵐の眼力は確かであったらしく、幼い頃から柔道漬けだ
った部員や有名高校で扱かれた輩とも互角、いやそれ以上の実力を付ける新名は、嵐と二人で一体大柔道部黄金
期を創出することとなる。
 さらに柔道ではまだまだ珍しい派手目な美形と強さに見合わず黒ではない帯色が目立ち、報道でも色々と騒が
れた。
 根が体育会系ではなく、繊細で真面目な新名は悩んだ。勿論柔道に対して真剣に取り組んでいるし、嵐と共に
誰よりも練習をしている自負はある。しかし、生まれてから柔道一筋、柔道以外何も知らない同輩を越えていく
ことに、やさしい新名の心は僅かに痛む。
 柔道に邁進したらしただけ、ほかの事にも興味が湧いてくるのだ。身近なところで言うと医学や理学療法、チー
ムを率いるマネジメント。普段ひとつのことに集中しているだけあって、雪音や中学からの友人と出かけると街
の全てが新鮮に見えるから、ファッション関係への興味も尽きない。
 自分は欲張りではないのだろうか。そればかりが渦巻いて、落ち込んでしまう。

「ほらニーナ。あーん」
 にゅ、っと眼前に差し出されたスプーンに、ぼうっと考え事をしていた新名は驚いて身を引いてしまう。銀色
のそれには黄色の濃い美味しそうなバニラアイスが乗っている。
「な、な、え?」
「いいから、あーん」
 スプーンの向こうでは半裸の雪音が笑っている。新名は大学寮暮らしなのだが、外泊許可が取れると実家にも
帰らず一人暮らしをする雪音の家へ押しかける。東京の美大に通う雪音は、その大学の近くにぼろアパートを借
りていた。
「つめた」
「ほらほら、もう一口」
 ぬる、とスプーンが口から引き出され、彼女の手元にあるカップへと戻される。給餌される雛のように、差し
出されるあまいバニラを口に含んでいく。
「おいしい?」
 やたら嬉しそうににこにこ笑う彼女に不審を覚えながらも新名はこっくりと頷く。
「ニーナっ、考えすぎるなっ!」
「あいたっ!」
 甘さに油断していると不意打ちのようにぺーんと額を叩かれ、結構な痛さにのけぞってしまう。
「いってー…」
「もう、ニーナってば頭いいから一人で悩んじゃうんだもん」
 そのままぎゅうと頭を抱きこまれる。下着姿なので柔らかな胸が顔に当たり、正直幸せだ。
「雪音ちゃん、ごめん」
「ごめんはいらない」
 そっと膝立ちの背中に腕を回す。こういうとき、この年上のひとの賢さに心底救われる。不要な口を利かない、
詮索しない、そして約束を違えない。普段のノリが良くおしゃべりな様子からは伺えない本質にも、新名は惚れ
たのだ。恐らく、嵐が彼女を気の置けない友人だと公言するのもこの辺りにあるのだろう。
 そのままどさり、と敷きっ放しになっていた布団に雪音を押し倒した。
「なぁに、また?」
「だって」
 だめ?とおねだりする犬のように見上げられては雪音も拒否することが出来ない。柔道王子だなんだとテレビ
に追い掛け回されたりしても、賢くて強い彼は変わりはしない。それが嬉しくて、ますます雪音は新名を好きに
なるばかりだった。



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