02/22 ( 16:50 )

コピペネタ
琉夏

「琉夏君は脳味噌が良くて良いねえ」
「それ、褒めてるの?」
 定期テスト前、ウエストビーチで試験勉強をする沙雪は、ごろごろとクッションに懐く琉夏を
じっとりと見つめた。抜群の記憶力と数学物理理論をいとも易く解く理系思考能力を持つ彼は、
しかし勉強にさして興味はないようだった。
「試験範囲も覚えてないんでしょ?」
「うん」
 素直に頷く様子に、今更いらついたりなどはしない。彼にとっては、教科書を一度読んで脳に入らない
一般的な感覚の方こそが理解できないのだ。
「琉夏君、日本三大祭りってなんだっけ」
 手元の日本史資料集を捲りながらも沙雪は尋ねる。こういうトピック的な事項はどこに載っていたか
探すのが面倒くさいのだ。
「古典の教科書にあったっけ、祇園祭…天神祭…」
「あとひとつ」
 脳内に教科書の紙面を思い描くも、琉夏の脳内にはイマイチ出てこない。煩雑な情報は読み飛ばす
能力も備わっている故、脳内を引っ掻き回していると不意に空腹を覚えた。
「…ヤマザキ春のパン祭…」
「え?あ、あはは!確かに全国区だけど、あ、あった、神田祭だって!」
「ああ…神田…。パン祭の方が楽しそうな感じするけどな」
 ぐうと腹が鳴り、がくりと青年は肩を落とす。
「おなかすいた…、ホットケーキ焼こう、おいで沙雪」
「もう、勉強してるのに!」
 そういいながらも沙雪も笑顔になり、靴を突っかけて一階のキッチンへと降りていった。



02/12 ( 00:59 )

紺野

「紺野先輩ってカッコイイよねー」
「理知的でさあ、きりっとした感じがいいよね」
 たわいも無い女子のお喋りに、ふと雪子は立ち止まった。可愛らしく活発そうな彼女達は、どうやら学園の
格好良い男子生徒の話をしているらしい。
「声もいいんだよね。よく通ってさ、厳しい感じの」
「ヒムロッチの若い版?みたいな」
 そうかな、と雪子は首をかしげる。紺野はとても優しいし、いつも温和に笑っていて声も話し方も柔らかい。
あの厳しい氷室先生とは全くタイプが違うように感じる。まあ感じ方は人それぞれだろう、と思い腕に書類を抱
きなおして、用事を済ませるために生徒会室へと向かった。
 例会ではないはずだが、生徒会室内からは生徒の声が聞こえた。誰かが仕事をしているのか、と軽くノックし
て雪子はそっとドアを開ける。
「これでは駄目だ、もっと明確に案を出してくれ」
「はい」
「僕ももう卒業なんだ、しっかりしてくれ」
「…はい!」
 こっそり覗いたわけではないけれど、中に居る紺野と現生徒会長は雪子に気付いていないようだった。
 厳しい顔をした紺野は声も冷たく、まるで別人のようだった。現生徒会長が無能なわけではないが、前会長が
出来すぎた為引退後もどうしても頼ってしまう傾向がある。
 冷静に辛口な指導を行う紺野は、まさに先程の女子が言っていたような印象だ。若い氷室先生とはよく言った
ものだと思う。そういえば以前、あんな紺野を一度見たなと少女は首を捻った。たしか、まだ入学したての頃、
抜き打ちの服装検査をすると打ち合わせをしていたときの…。
「あ、ごめんね村田ちゃん。書類ありがとう」
 懸命に紺野の指導を受けていた現会長が、ドア前で立ち尽くす雪子に気付き手招きをしてくれる。
 すると紺野も入り口の方を向き、自然と雪子が良く知っているいつもの優しい顔に変わった。
「村田さん、お疲れ様」
「はい…」
 にっこりと、柔らかな声で話しかけられるのが恥ずかしくて仕方がない。雪子が紺野のことを優しくて柔らか
い人だと思っていたのは、彼が無意識にでもいつもそういう態度を取ってくれているからなのだ。
「あの、会長。書類、はんこ貰ってきました。ここ、置いときますね」
「どしたの?顔赤いよ」
「なんでもないです!」
 じゃあ、とぱたぱたと生徒会室を出て小走りに教室へと向かう。
 こういうふとした瞬間に気付く紺野からの気持ちに、まだまだ雪子は戸惑ってしまう。無条件に笑顔を向けら
れたり、優しくしてくれたりされると胸が痛くて息が出来なくなってしまう。
「待って、廊下を走っちゃいけないよ」
「やっ?」
 急に腕を引かれて、こけそうになる少女の体を青年は上手く支えて安定させた。
「どうしたの?何かあった」
 さっきの雪子の行動を不審に思ったらしく、紺野は追いかけてきたらしい。やっぱり厳しさや冷たさなんて
かけらもない、カッコイイというより優しげなその様子にますます胸が詰まってしまう。
「あ…、ぅ」
「熱でもあるの」
 大きな手が頬を撫でて額に触れてくると、じわりと体温が伝わる。愛されているということがありありと伝わ
ってきすぎて、くるしい。周囲に人がいない事を確認して、紺野の腕を引く。
「先輩、こんのせんぱい…」
「ん、なに」
 目線を合わせるように覗き込んでくるその頬に、うまく伝えることの出来ないだいすきを込めて、一瞬だけキ
スをした。



02/10 ( 16:42 )

コピペネタ

沙雪「プリンは?」
琉夏「知らなーい」

沙雪「プリンは?」
琉夏「食べてないよ」

沙雪「プリンは?」
琉夏「記憶にない」

沙雪「あれ賞味期間切れてたよ」
琉夏「えっ」

沙雪「プリンは?」
琉夏「…もうお前嫌い」

沙雪「食べたの?」
琉夏「…食べてないよ」

沙雪「食べてないのに、私のこと嫌いなの?」
琉夏「うん」

沙雪「プリンは?」

琉夏「もうやめて」




01/22 ( 01:12 )

バカップルごっこ

S紺野 コピペネタ(眼鏡無しオシャレ紺野で想像お勧め)

 照れ屋で可愛い彼女に、今日も今日とて玉緒は嗜虐心を煽られる。頬を赤く染め白い息を吐きながら玉緒の横
を歩く雪子に、にっこりと言葉をかける。
「…バカップルごっこしない?」
「へ?」
 きょとん、と見上げてくる彼女の瞳は、冬の澄み渡った青空を映してきらきらと輝いていた。
「それは、どういう…」
「まず僕がやるから、…これからどこ行こうか」
 公園の並木道を散歩しているのだが、ずっとこのままではいかんせん寒い。どこか暖かいところにでも、と提
案する。
「そうですねえ、本屋がいいかなあ。玉緒さんはどこか行きたい所ありますか?」
「雪子がいる場所ならどこでもいいよ」
 普段口にしないような甘ったるい台詞に、一瞬の間を置いて雪子が真っ赤になる。
「え、あ、あう…」
「じゃあ本屋にしようか。そうだ荷物貸して、持つよ」
 泣きそうな表情で見上げてくる彼女に手を差し出す。だいじょぶです、と首を振る雪子の前に屈み視線を合わ
せて囁く。
「君の手は、僕と繋ぐためだけにあるんだよね?」
 そういってわざと握っていなかった彼女の手を取って、指を組み合わせる。
「や、ぁ…」
 ショート寸前の雪子は俯き、鞄から飛び出していた携帯のストラップを無意味に弄った。
「君の携帯に嫉妬してしまうな、四六時中一緒にいられるから」
「やー!もう、や!意地悪!」
 恥ずかしさが臨界点に達したのかぎーっと繋いだ手に爪を立てられた。涙目でいやいやと頭を振る雪子はやっ
ぱり可愛い。流石に道行く人々の注目を集めかねないと思い、ごめんごめんと謝りながら彼女をなでてやった。
「わかったわかった。ごっこは終わり、ね?」





01/22 ( 01:11 )

厳重注意 転換ネタ
 
玉緒さん(桜井も姉妹です)

 お笑いを理解するにはある程度の知性が要る、所謂売れっ子芸人と呼ばれる人たちは皆賢いではないか。そう、
雪隆は思っていた。
 だからお笑い好きというのは別に隠すような趣味ではない。流行ってもいるし、むしろ堂々と話の糸口として
公開してもいい物だとも考えているのだが、この年上の人はそうではないらしい。
 切れ者の会長としてはばたき高校に名を知られる玉緒は、理性的でかつ優しげな雰囲気を持ち男女問わず皆か
ら慕われていた。みどりの黒髪とでも言うのだろうか、豊かな長い髪をけして振り乱すことなく模範的な優等生
として行動している。
 彼女に憧れて生徒会に入ったわけではないが、身近に居るとやはり惹かれるものを感じた。だが高嶺の花もい
いところで、雪隆は仄かな片思い程度に気持ちを押さえていたのだが。
 偶然、生徒会の定例会議の後片付けを玉緒と二人で行っている時、雪隆は携帯の着ボイスを鳴らしてしまった。
やんわりと叱られるだろうと身構えたが、若干マニアックなお笑い芸人のボイスに驚くほど反応した彼女はしま
ったと言う風に口を押さえた。
「…もしかして先輩、今の知ってるんですか」
 反応してしまった手前、繕う事もしにくいのだろう。玉緒は小さく頷いた。
「あの、村田君。お笑い…好きなの?」
「ええ」
 自分で言うのもなんだが、雪隆も決してお笑い好きには見えないだろう。幼馴染の琉夏からはがり勉と言われ、
コウからはもやしと罵られ、真面目過ぎるのはよくない二人がかりで小突かれるのだ。
「…私も、好きなのよ」
 俯いて恥ずかしそうに言う姿を見て、初めて彼女を可愛いと思った。
 そのまま結構ディープなお笑いの話になり、夏休みのお笑いジャイアントに一緒に行こうというまで話が進ん
でしまった。
 お笑いと接しているときの玉緒は、無意識だろうが取り繕うことなく素顔であるような気がする。良く笑い、
熱っぽく語り、意外なことだがノリつっこみまでやってみせた。偶然手に入れた、気の置けないお笑い仲間とい
う地位に雪隆の方が戸惑ってしまった程だ。
 学年が一つ上がり、二年と三年になった夏にはなんと生徒会室で熟睡する彼女を見つけてしまった。起こそう
か起こすまいか迷っているうちに彼女は目を覚まし、雪隆の姿を認めると悲鳴を上げて飛びのいた。
「すみません、あの、起こそうかと思ったんですけど…」
「…いや、いいの。ここで熟睡してた私が悪いんだから」
 そういいながらも、彼女の顔は真っ赤である。

 玉緒は戸惑っていた。自分がここまで気を抜いた姿を人に晒すのは、初めてだったからだ。
「あの、会長。疲れてるんじゃないですか?」
「う、ううん…、って取り繕ってもしょうがないね」
 はは、と笑いソファにもう一度腰掛ける。生徒会の業務に加え本格的に始まりだした受験勉強にも追いやられ、
生活のペースを掴めずに居たのだ。
 不思議と、村田の前で気を抜くことは不快では無かった。生徒会長で優等生ではない自分を知られていたから
かも知れない。ぐったりとそのままソファに転がっていると、帰宅を促すチャイムが鳴る。しかし、これから駅
まで歩いて、電車に乗ることすら面倒くさい。
「あの、先輩。僕今日自転車で来てるんで、良かったら送っていきますよ」
「へ?」
 顔を赤くした村田が、じっとこちらを見ていた。二人乗りをして帰るという事なのだろうか、と理解すると玉
緒も頬に血が上ってしまう。
「でも、悪いわ」
「僕は構いません。先輩凄く疲れてるみたいなんで…」
 嫌ではない、むしろ嬉しいかも知れない。そこでふと以前に見た光景を思い出し、何故かチクリと胸が痛む。
「でも、琉夏ちゃんはいいの?」
 金髪の少女を後ろに乗せて、楽しそうに自転車をこいでいた村田の姿と、非常に二人の仲が良いと言う噂が重
く玉緒の心に圧し掛かる。
「ああ、あれは琉夏がもう立てない疲れたってだだを捏ねたから、仕方なく乗せたんですよ」
「そう…」
 少し頼りないけれど飛び切りやさしくて懐の広い一つ下の青年は、穏やかな表情のまま玉緒の答えを待ってい
る。
「うん、じゃあ、おねがいしようかな」
「ありがとうございます」
 にっこりと笑った彼に、先ほどとは少し違う痛みが胸に走る。この感情に名前をつける事は、今の玉緒には出
来なかった。

 夕焼けで橙色に染まる道を、自転車の後ろに乗って風を切る。ひ弱そうに見えても、そこはやはり男なのだろ
う、村田の足はぶれることなくペダルを踏み続ける。
「時々気分転換に、朝早く起きて自転車で通学するんですよ」
「そう、気持ちいいものね」
「ええ、こうやって漕いでいる間は、余計なこと考えないでしょ。それが良いんですよ」
 久しぶりすぎる二人乗り、しかも男の後ろに乗るのは初めてなので、バランスが上手くとれず往生してしまう。
二三度躊躇したものの、やはり事故になるよりはいいだろうと青年の体にそっと縋った。
「また、送ってね」

 雪隆もまた、縋る紺野の腕にどぎまぎしていた。琉夏に飛びつかれようがコウにヘッドロックをかけられよう
が一切何も思わなかったのに、口から心臓が出そうなほど興奮している。
 あの綺麗で強くて毅然とした紺野が、気を抜いて己に寄りかかってくれることが信じられなくて、嬉しかった。
 もっと、もっと彼女を支えられる存在になれたら。よりいっそうの向上と努力を胸に誓い、しかし少しだけペ
ダルを漕ぐスピードを緩めた。



prev | next

29977
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -