04/28 ( 23:55 )

霊感少女だよバンビちゃん!
お名前はゆうちゃんで。

琉夏
 幼い頃は何も知らず、琉夏君の後ろには優しそうな女の人がいるなと思っていた。高校生になって再会してか
らは、あの女の人の姿を見ることはなかったから、その存在をすっかり忘れていたのだが。
 暴力沙汰と交通事故で重傷を負った琉夏の元へ駆けつけたとき、確かにあの女の人が病室に立っていたのだ。
『あなたが琉夏君を守ったんですね、おかあさん』
 心で聞くと、彼女は首を振り琉夏の頭をいとおしそうに撫でて、消えてしまった。
「…ゆう…?」
「琉夏君!」
 じわりと目を開いた琉夏は、夢うつつと言った表情で手を伸ばそうとして痛みに悶える。
「…懐かしい、夢を見た…、オマエに出会う前…おかあさん…」
 ほろほろと流れる涙に包帯が湿っていく。早くナースコールを押して琉夏が気付いたことを知らせないといけ
ないのに、ゆうは彼の手を握って頬に触れることしかできない。

琥一
「コウくん、また古着買ったの?」
「ヴィンテージ、だ。それにしてもよくオマエ解るよな」
 興味ネェ割りにはよ、と琥一はぼやく。新品同然のものでも、彼女は必ず言い当てる。
「見たら解るもん」
 というよりは嫌でも解ってしまうのだ。今琥一が着ているミリタリージャケットには、ぼんやりと軍人の思念
が残っている。


 嵐と歩いていると、殆ど霊に会うことがない。普段は浮遊霊やら地縛霊やらにまとわりつかれて帰宅に時間が
かかってしまうのにと、ゆうは疑問に思う。
 幽霊達に聞いてみると実に納得できる答えが帰ってきた。
『だってあんひと怖いやん』
『ああいう強い人間に否定されたら、我らは消えてしまうんでね』

新名
 新名の友達の彼女とかいう派手な女子から、ゆうはさっと目をそらした。気が回る彼女が露骨な態度をとる事
が珍しく、新名はつい聞いてしまう。
「あの子に何か憑いてるの?」
 冗談半分にそう聞くと、真っ青になった彼女はぎゅっと新名の袖を握り「あの子に関わるな」と言い捨ててト
イレへ走っていった。
「マジかよ…」
 新名が問題の少女を見ても、何も感じない。多少派手ではあるが、姫ギャル系で可愛らしく、甘えた態度と豊
かな胸に活発な様子が好ましく思える。ゆうと嵐に出会う前であれば、ナンパしてオツキアイするべく行動して
いたかも知れない。
 あんまりゆうがトイレから戻ってこないので、心配になった新名は友人に断って女子トイレまで迎えに行くこ
とにした。
「…ごめんニーナ、私あの子無理」
「ホントどうしたの?」
 ぎゅっと眉間に皺を寄せたゆうは、近くにあったベンチに座りぐったりとする。
「あの子、水子が憑いてる。しかも二人」
「みずっ…、て、えぇ!」
 確かあの子は新名と同じ歳の筈だ。さらに高校に通っていて、どこぞの女子大に進学すると言っていた。
「怖ぇ…」

紺野
 ああまた、とゆうは苦笑してしまう。紺野は気付いていないが、彼が遊んであげている子供は生きていない。
そして一人憑くと我もと寄ってくるのがさみしい子供ゆうれいの常だ。優しくて押しに弱い彼は、幽霊の子供に
も良く好かれる。
「ごめん、ゆうさん」
 子供に振り回されている紺野が軽く手を合わせる。一応デート中だという事は覚えていたらしい。
「いいえ、いいんですよ」
 ゆうがみえるひとだから、霊が寄ってくる。そしてその横に優しそうなお兄さんがいるから、遊んでもらう。
原因はゆうにこそあるのだ。
『まま…』
 紺野に沢山遊んでもらって疲れたらしい小さな女の子がふわふわとゆうに寄ってくる。
「うん、よかったね。たくさんあそんだね」
『ぱぱ、まま、だいすき…』
 ぎゅっとしがみついて消えてしまった女の子は笑っていた。

設楽
「音楽室の設楽さんって言うと、トイレの花子さんみたいですね!」
 にっこり笑ってそう言うゆうに、紺野がお茶を吹いた。
「馬鹿にしてるんだな」
「くくくっ、音楽室のっ…」
「音楽室の設楽さんはいい妖怪なんですよ」
 そのピアノの音色は死んでしまった元はば学生達をも癒しているのだから。勿論花子さんも。

藍沢
「これとこれは要注意です」
 どんとダンボールに盛ってある、藍沢宛のファンレターとプレゼントの数々から、ゆうは十個ほどの包みを除
けた。
「霊を信じるかどうかは別として、いつも悪いな」
「いいえ」
 ビニールシートを敷いた編集が、包みを危険物のようにつまみ慎重に開封する。
「うわ」
 髪の毛、かみそり、使用済みの下着、一見普通そうに見えるものの意味不明な単語が延々と綴られた手紙、脅
迫状。
「事前に心構えして無かったら、心底驚くんだが」
「ご苦労様としか思えないですねえ」

大迫
「せんせいは、霊とか信じますか?」
 見えちゃう事を打ち明ける前、大迫の考えを探ってみようと軽く聞いてみた。
「そうだなぁ、日本語の成り立ちからして霊の存在が織り込まれているからな!あるんだと思うぞぉ!」
 現国教師らしい答えに、ゆうはほっと胸をなでおろす。まだまだ、だいすきなせんせいが自分のことを女性と
して好いていてくれるという実感が湧かないのだ。一つでも不安要素は除いておきたい、と懸命になってしまう。
「なんだ、もしかして霊が見えるのか?」
 はい、といいたい、いってもいいのか、嫌われないかな、とぐるぐるしていると、頭を撫でられた。
「おちつけ、な?」
「…はい!」


「最近肩が凝るんだよね、無理はしてないのにな」
「そーお?じゃあ私が揉んであげるよ」
 がたっと立ち上がり、ゆうは平の肩をつかんだ。
「え、いいよ!悪いよ!」
「お、タイラーいいなあ、ローズクイーンゆうちゃんの肩もみとか金払わないとな」
「ええ!」
 そんな会話を余所に、ゆうは平の肩にいる霊を祓っていた。憑かれて肩こりとか、どこまでもベタなひとだな
あと思いながら。



03/20 ( 15:27 )

不思議なメルモ

おさななじみ

「るかくん!こうくん!」
「あー」
「マジかよ…」
 記憶の中にだけ住んでいる『あのこ』が目の前にいる。
「なかみはかわってないのよ?」
「っても、なァ」
「ねぇ」
 ひょいと琥一が持ち上げると、こわいこわいと沙雪は手足をばたつかせる。
「手ぇちっちゃ」
「服も縮んで良かったな」

あらしくんとにいな

「深雪…、か?」
 柔道場にちょこんと座る幼女はこくんと頷いた。
「ごめんねあらしくん、きょうはまねーじゃーむりみたい」
「…気にすんな」
 眉をハの字にして泣きそうな深雪をどうにかしてやりたいが、子供慣れしてい
ない嵐は、接し方が解らない。と、ばたんとドアの開く音がした。
「にいな!」
「―深雪さんの、妹?いたっけ?うわ、かっわいい!」
 入ってきた新名がなんの衒いもなくさっと抱き上げる様子に嵐は少し嫉妬して
しまう。

たまおにーちゃん

「泣かないで、ほら、大丈夫だよ」
 ひっくひっくとしゃくり上げる幼い雪子は、生徒会室のソファで紺野にしがみ付いて泣いていた。
 背中をゆっくりと優しく叩かれあやされると、突然幼くなってしまったパニックも収まってくる。
「もう、だいじょぶです。ごめんなさい」
「良いんだよ、役得だし」
「?」

「せんぱい!」
 雪子を抱っこして家路につく間、舌っ足らずな声がいつもの調子で紺野を呼ぶ。
「うーん、それじゃちょっとまずいかな」
 どう見ても先輩と後輩という関係には見えないだろうし、もしかしたら怪しまれ
てしまうかも知れない。
「…じゃあ、お、おにーちゃん…」
「うっ」
 くるん、と目を動かしておにいちゃんと繰り返す様に心射抜かれる。言葉が出
ないでいる紺野の様子を否定と取ったのか、しゅんとした雪子はぎゅっとしがみ付き
口を開く。
「だめですか?おとーさん?」
「だめじゃないよ、おにいちゃんで良いよ」
「はい、たまおおにいちゃん!」
 雪子を抱っこしていなければ、しゃがみこんで悶えたいくらいに可愛い。このまま
攫っていいですか、と紺野は心中悶えた。


「タマ…顔緩みすぎ」
「…そうか?」
 もともとデートの約束があった日、どうしても紺野とお出かけしたいと言い張った雪
子から電話を受け、紺野は雪子の親に頭を下げて彼女を預かり一日中二人で遊んだ。
 満足して眠る小さな体を抱いて歩いていると、偶然尽に出会ってしまった。
 でれでれとする紺野を見て、ロリコンだのなんだのと罵っていた尽の声に雪子が目を覚ます。
「たまおおにいちゃん?」
 紺野を見上げた後その視線をたどり、幼女はきょとんと尽を見た。
「尽さ…ううん、つくしおにいちゃん?」
 にこ、と笑ったその顔に、尽もひゅっと息を呑む。
「こりゃやばいわ」
「そうだろ?」

せいちゃん

「せいじさん、わたし、ちいさくなりました」
「何でそんなに自信満々なんだよお前は」
 くるんとした大きな目の幼女は、しかし言うことはいつもの小雪でとても可愛くない。
「かわいくないですか?」
「…見た目以外が可愛くない」
 そう設楽に言われ、ちぇ、と拗ねる様子はちょっと可愛いかも知れない。

『はばたき市からお越しの、設楽聖司さま設楽聖司さま。こゆきちゃんをお預かりしております…』
「こ…のバカが…!携帯があるだろうが!一人で帰れるだろう!何で俺を呼ぶ!」
「だって、むかえにきてほしかったんだもん」
「次はないからな!」

あいさわせんせえ

「子供慣れしていないんだ」
「だいじょうぶですよ、なかみはいっしょです。ないたりあばれたりはしません」
 気になるようなら帰ります、と身支度を始めるさくらを藍沢は慌てて抱き上げる。
「帰らなくていい。…流石に柔らかいな…」
「…ひげがいつもよりいたいです」
「ああ、、悪い」




03/20 ( 15:15 )

花粉症平君とバンビちゃん

「へしっ!」
「健太くん、花粉症?」
「そうかも。今年は花粉が多いらしいし」
でもそんなに酷くないよ、という間にも又鼻がむずむずし始める。
「へしっ!」
「今日は外に行くの止めようよ」
「でも折角君との…で、デートなのに」
どれだけこの日を待ちわびたかと平はがっくりする。
「じゃあ家に…来る?」
「へ…?」
 さくらは少し赤くなって俯き、わたしのうちにくる?ともう一度呟いた。

花粉症平君とみよちゃん

「へしっ!」
「きたない」
ぎゅう、と鼻にティッシュが押し付けられる。そのティッシュを自分の手で押さえ、
洟をかむ間にもまたむずむずし始める。
「今日は出歩かない方が良い」
「ふがひんはん、ほへんね」
「…」
平のスクーターという移動手段を無くしたみよはさっさと帰るかと思われたが、く
るりと振り返り上目遣いで平らをにらんでくる。
「暇なの、一日」
「え、っと…」
 外には行けない、屋内で用事を済ませるとはいえ移動は屋外になる。これはつまり。
「俺の家に…?」
「都合が悪ければいい」
 ぷう、と少し膨れてつま先を地面に擦り付ける様子が酷く可愛い。平はぼんやりと自
分の部屋を思い浮かべるが、特に散らかしているわけでもなかったのでよし、と心を決
める。
「いいよ、おいでよ」



02/22 ( 18:04 )

だって女同士
琥一
※結婚して子供もいる設定です

 琥一が仕事から帰ると、愛娘がぽてぽてと走り寄ってきた。
「パパ見て!みて!」
「あ?」
 母親譲りだろうか、お転婆な娘はぴょんぴょんと跳ね父親によじ登ろうとする。それを引き剥がしてひょいと
持ち上げると、顔に柔らかな白い布が押し当てられた。
「オイ、ちょっと離れろ。なんも見えネェぞ」
「パンツ買ったのー!」
 片手で抱き上げた娘は満面の笑顔で、熊のプリントが入ったパンツを押し付けてくる。
「オウ、良かったな。イイじゃネェか」
「うん!」
 そのまま娘をあやしがらリビングに入ると、沙雪がソファに正座をしていた。
「ただいま、ってナンだ。どうかしたか」
 にこにこしていることの多い彼女にしては珍しく、きっとした顔で見上げてくる様子に不安を感じる。
「これ見て」
「ハァ?」
 彼女が腕を伸ばして見せ付けてきたのは、オレンジ色の下着だった。
「私もパンツ買ったの!」
「オマエなァ、2歳児と張り合ってどうすんだよ」
 だって、と口を尖らせる沙雪はいじけたように下着を弄んだ。ようするに構って欲しいのか、と理解した琥一
は、娘を抱いたのとは逆の腕で沙雪を抱き上げる。
「ママも抱っこしてほしいんだとよ、な」
「ママもだっこ?」
 きょとんとする娘の前で、ニタリと笑った父親は顔を赤くした妻に軽く口付けた。



02/22 ( 17:17 )

先輩△とハロゲンズ

マイペースで美人、シックとお姉系の似合うバンビさん。
吹奏楽部に所属、一年の夏に部室へ忘れ物をとりに行き設楽と知り合う。
少し枯れてハスキーという特徴的な声をしている。
設楽と漫才もどきをしているところに紺野登場、紺野とも知り合いに。
設楽「面白い奴だ、あと良い声をしている」
紺野「一見とっつきにくいけど、ユニークな子だよね」

 一年目はシモンで週3アルバイト、カレンさんのこともあり最終的には週4位
入ることになる。だが二年目からは、設楽と氷室の勧めによりボイトレに通うことに
したためやむなく離職。ボイトレと両立できるバイトを探した所、ハロゲンに移動。
 新名はコンビニで知り合った場合のみ、バンビのことを「年上?嘘でしょ」
と言わない。なので、第一印象は大人っぽい美人さんだなー仲良くなりたいなーである。
 だが、それが新名受難の始まりである。

 ハロゲンのオーナーはのりのいい紳士。

 コンビニのオーナーが「ニーナって呼ぶと女みたいだから、じゅんぺーのぺーで」
と言い出してバンビも右へ倣えする。
「あ、ぺーくんだ。ぺーくーん!」
「ちょ、ゆきさん!やめて!」
ペークンダッテヒソヒソ オワライミタイクスクス
「わざと呼んだでしょ、止めてくださいよ」
「いや」
―――――――――――――――――――――――――――
「ゆきさん、バイト中に猫耳は…」
「店長命令」
「ハァ?店長?」
「今日は二月二十二日。にゃんにゃんの日だろう?村田君が猫耳をつけることでお客さ
んも喜ぶと思うんだが」
「又そういう…」
「ぺーくんも、にゃー」
「イヤ、エンリョシマス(見た目は美人なのになにこの人…)」
―――――――――――――――――――――――――――
「アンタ、元生徒会長と天才設楽サンを手玉に取る悪女だってよ」
「ぺーくん、どこで聞いたのそれ。実際は只のトリオ漫才よ?」
「まぁ、そーだけど…そうなのか?」
―――――――――――――――――――――――――――
三年目文化祭
「ギャア事故でメインステージが十五分空いた」
「おい設楽先輩がいるぞ」
「設楽先輩お願いします!」
「嫌だ」
「…私歌ってもいいですよ」
「う…」
「じゃあちょっと、応援を呼んで来ます」
「勝手にしろ…」
パタパタパタ…
「ぺーくん、今大丈夫?」
「ゆきさん、何なに?」
「賑やかし…、はいこれ」
「タンバリンとエレキベース?俺が持つの?なんで?」
「さあ体育館へ」
「はぁ?」
『プログラム変更をお知らせします。特別プログラム“設楽聖司とハロゲンズ”です』
ワーッウソー シタラセイジッテキョネンマデイタアノヒトー!?
「はあ?マジで?何なんスか」
「あなたと私でハロゲンズ、そして設楽先輩。十五分場を持たせる」
「おいお前ら、俺はビートルズメインでざっと弾くぞ、あとは知らん」
「私も解らなければハミングする、ぺーくんは適当にリズムとって」
「…出来る範囲で」
開幕。
―――――――――――――――――――――――――――
 紺野も設楽も、あまり着膨れするのは好きではないようだ。
「私だけ厚着をしているようですね」
 ロングのダウンコートを着た少女は、先輩二人を見て少し考える様子を見せた。
「気にするな。感覚は人それぞれだろうが」
「そうだよ、それ新しいコートだよね。似合ってるよ」




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