「すっかり暗くなっちまったな。お前ら、そろそろ帰れ」
頭を下げたままのわたしに、リボーンくんがそう声をかけた。
ぞろぞろと沢田くんの部屋を出て行くみんなに、わたしも続こうとした。
「待て、みちる」
でも、リボーンくんに呼び止められ、立ち止まった。
「少しはスッキリしただろ?」
「う、うん…」
「でも、あいつらが事実をどう受け止めるかはわからねぇし、信頼されるかどうかはお前次第だ」
「…そう、だね」
「それから、あいつらの前では話さなかったが…みちる、お前は元居た世界で、どうやってオレ達の情報を得たんだ?」
「あ…」
あいつらが、お前の身の上話に夢中で、このことを忘れてくれたのはラッキーだったな。
リボーンくんはそう言ってニヤリと笑った。
正直、言うまいと思っていたけれど…
「漫画…なの…」
「ほぅ」
「この世界は、わたしの居た世界から見たら、漫画の舞台なの」
「そうか。そりゃショッキングだな」
「…でも、今はそんな風には思えないよ」
わたしは肩に乗ったリボーンくんと話しながら、沢田家の階段を降りた。
リボーンくんは、少し考えるような顔をして、「このことはあいつらには言うなよ」と言った。
「うん。だって、みんな実際に目の前に居るんだもん。それに…」
「それに、未来は不確かだから、な?」
「…そう。わたしが知ってる未来がどんなに困難だって、きっとみんなは乗り越えていくよ」
わたしが居ることで、漫画の世界とは多少の変化が起こりうるはずだ。
だから言わない。確実なのは、今だけだ。
「じゃあ、みんな、今日はありがとう」
「また明日ね、千崎さん、獄寺くん、山本!」
「…沢田くん」
もう獄寺くんと山本くんは歩き出していたが、わたしは動けなかった。
「?なに?」
「あの…わたしって色々おかしいってわかったでしょ?」
「え…?ううん、大丈夫!」
沢田くんはあははと笑って、顔の前で手をぶんぶんと振って否定した。
「リボーンが来てから、こんなのしょっちゅうだよ」
「え…」
「それに、千崎さんは獄寺くん達に比べたらよっぽど常識人だもん。仲間ができたみたいで安心した」
沢田くんの肩に乗っているリボーンくんがにやりと笑って、「よかったな、みちる」と言った。
「守るとか、マフィアとかそんなの関係なくてさ…仲良くしようよ!普通に!」
「…うん」
「オレ、ややこしいことってよくわかんないけど、千崎さんはいきなり知らない世界に来ちゃったんでしょ?」
それって、すげー不安だと思うんだ。と沢田くんは続けた。
「だから、オレで良ければ力になるから」
彼の優しい口調に、さっき派手に泣いたせいかまた涙が溢れた。
ごしごしと目をこすりながら、わたしはありがとうと呟いた。
「おーい、千崎!」
「ぐずぐずすんじゃねぇぞ!」
少し離れたところから、山本くんと獄寺くんが呼んだ。
わたしは慌てて彼らに追いつくと、まだ玄関先に立っていた沢田くんに手を振った。
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