蜜色ワンダー | ナノ

もしかしてだけど

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「こないだ、坂口さんを街で見た」

先輩男性社員が、休憩中にそんな話を振ってくる。
あたしを?どこで?と顔を上げると、にこにこしながら、つづけた。

「えらいガタイのええお兄ちゃんと一緒やったな」

蓮くんのこと言ってるんだってすぐ気づいた。
だって、蓮くん以外の男の人と街を歩くことはないし、ガタイのいいお兄ちゃんと言ったら、あたしの周りには蓮くんしかいない。

「彼氏?」
「あっ、はいっ」
「ふーん……」

コーヒーの缶で口元を隠しながら、先輩はちょこっと眉を寄せた。

「ほんま、品のないことを聞いてもええ?」
「え?」
「これセクハラて言われるんかなあ…」
「ど、どうぞ」

うむむ、と悩んでいる様子の先輩を促すと、迷ったあげくにこんなことを言う。

「えっちのときとか、どないしとるん?」
「……えっ」
「あっ、やっぱセクハラやんな!?なし、なしなし!」
「どういう意味ですか?」
「せやからあんなでっかい兄ちゃんやったら、ナニもでかいやろしな?坂口さんは見ての通りちっこいしな?大変なんやないかと……いや、ちゃうねんほんまセクハラのつもりはないねん……」

気持ちは社会勉強やねん!と言い訳しながら休憩室を出て行った先輩の背中をじっと見つめる。
たしかに突っ込んだ質問だけど、いつものやさしい先輩を知っているので、別にセクハラとは思わない。セクハラだけど。
そして、あたしは、ふと、えっちのときのことを思い出す。
…あたし、蓮くんの、全部入らない…。

★★★

「というわけで、蓮くん」
「どういうわけで?」

ベッドの上に正座して蓮くんがお風呂から上がってくるのを待つ。
あたしが正座しているのを見た蓮くんは、つられたように自分も向かい側に正座した。

「もしかしてだけど」
「もしかしてだけど?」
「蓮くんは、あたしとのえっちに満足していないのではないかと」
「…………はっ?」

首から下げたタオルで水滴を拭きながら、蓮くんが意味わからんって感じで眉をひそめた。

「なぜ急に?」
「今日、会社で、先輩さんにね、あたしと蓮くんを見かけたって言われたの」
「はい」
「蓮くんはでっかくて、あたしはちっさいから、えっちのとき大変なのではって言われたの」
「…はい」
「で、あたしは、蓮くんのが、いっつも全部入らないことを思い出しました」
「先輩って、男?女?」

ぜんぜん関係ないことを質問してきた蓮くんに、素直に、男、と返す。

「セクハラだ左遷しろ」
「そんな!仕事のできるいい先輩だよ!」
「ほんとうにいい先輩は、後輩女子にそんなことを言わない」

話が横道にそれそうだ。
と思ったあたしは、軌道修正する。

「問題はそこじゃないです。蓮くんがいつも、物足りないのではないかなって思ったんです」
「俺が物足りないように見えるなら育ちゃんの目はちょっと悪い」

なんだかいらいらした様子の蓮くんに、首をかしげながら、でも〜って続ける。

「でも、全部入ったほうが気持ちいいんじゃないの?」
「……育ちゃん」

がしっと、蓮くんがあたしの肩を掴んだ。
んん、と思っているうちに押し倒されて、そういえばここがベッドの上だったことを思い出す。
すごく真剣な目をした蓮くんが、いまいましげに吐き捨てた。

「育ちゃんは全然分かってない」
「えっ?あっ」

Tシャツをまくりあげられて、寝る前だったので当然ブラジャーをつけていない裸の体が蓮くんの前にさらけ出される。
恥ずかしいと思う前に、乳首に吸い付かれて腰がぴくんと跳ねた。

「れっ蓮くん……」

ぢゅる、じゅぷ、ちゅぱ、と音を立てて吸いながら、もう片方の乳首を指で捏ねて、あたしを上目で見る。

「あぁっ、れん、くぅん…」
「…たしかに、体格差あるとできないこといっぱいあるよ」
「っ」

おへその穴にぐりぐりと舌を入れながら、蓮くんがつぶやく。
ずき、と心が痛い。
蓮くんの手が器用にズボンを下ろして、パンツの横から指を入れる。

「きゃうっ」
「シックスナインとか、できるかもだけどちょっと難しいよね」
「あっ、あっ、れんくんっ」

くちくちと入口を擦りながら、パンツもはぎ取って、そこに顔を埋めた。

「やだっ、蓮くんやだっ」

じゅるっ、ぴちゃぴちゃ、ぐちゅ、ぐち、
クリを舌で押し潰したり、唇ではむはむしたり、中に指を入れてこすったり、そこに舌が入ってきたり。
散々責められて、一回、いっちゃった。

「くふぅ……」
「まだへばっちゃだめだよ、育ちゃん」

ふわっと体が浮く。
えっ。と思って思わず目の前の蓮くんにしがみつくと、壁に背中を預けるかたちで、蓮くんに追い詰められている。

「なにっ、あっ」

その体勢で、割れ目を蓮くんの熱いかたまりがずるずると擦る。

「できないこといっぱいあるけど、この体格差だからできることもいっぱいあるし」
「ひ、あはっ、はうっ」

立った蓮くんにしがみつくように浮いたまま割れ目をこすられて、意識がぐちゃぐちゃにかき回される。
足が床につかないから、蓮くんにしがみつくしかないけど、でもそうすると…。

「やっ、はいっちゃう、よぉ…」
「いやならがんばってよ」
「んっ、んんっ」

重力で、あたしの体は勝手に落ちようとするので、そうするとあてがわれた杭が勝手に入っちゃう。
このまま奥まで入っちゃったら、もうわけが分かんなくなる。って思って耐えるけど。

「ふ、育ちゃん、腰揺れてるよ」
「やぁう、やだ、やだぁ」
「なにが?入っちゃうのいやなの?」
「やだ、やだ」
「悲しいなあ…育ちゃん俺のいやなんだ」

大して悲しんでないように聞こえる…。
からかうみたいな口調で蓮くんはそう言って、あたしの体を持ち上げて抜いてしまった。

「あっ、れ、れんくん……」
「ん?いやなんでしょ?抜いてあげたじゃん?」
「あぅ、蓮くん……」
「名前呼ぶだけじゃ分かんないんだけど」

耳の軟骨にキスをされて、そのまま耳たぶを口に含まれる。
ぴちゃぴちゃってやらしい音が、鼓膜を震わせて、たまんない。
蓮くんのたくましい体に抱きついて背中をさわっていると、また割れ目にかたまりが当たる。

「んんんっ……」
「ほら、入っちゃうよ、いいの?」
「あっあっ、れんくん、なんでおこってるのっ……」

浅いとこをずぽずぽされながら聞くと、蓮くんが眉を上げて言う。

「育ちゃんが俺のこと分かってくれないからだよ」
「ふえ?」
「よっ、と」
「ふあぁあっ!?」

ぐじゅん!とすごい音がして、蓮くんのを奥まで飲み込んでしまう。
勢いあまって奥の奥に当たって、ちょっと痛いくらい。

「あっ、あぅ…あ、ああ……」
「育ちゃんさあ」
「ふあ…」
「俺とえっちするの好き?きもちい?」
「ん、んっ」

必死でこくこく頷くと、蓮くんはゆるゆると腰を動かして奥をとんとんしながら聞いてくる。

「なんできもちいの?」
「だって、だってれんくんが、きもちいこといっぱいするか、らぁあっ」
「きもちいことしてくれたら誰でもいい?」

そこで、水あめみたいにどろどろになってた思考が、ふっと固まった。
あ、そっか。

「やあ、れんくんじゃなきゃ、やだよ」

ぺたぺた背中をいっぱいさわって、首筋にかじりつくように抱きついた。
きっと、蓮くんもあたしとおんなじこと思ったんだよね?
あたしとじゃないとやだから、だから怒ったんだよね?
ぱちゅっ、ぱちゅっ、ぱちゅっとゆるやかに突き上げられながら、あたしは一生懸命蓮くんにくっつく。

「あっ、あっ、あっ」

そうしないと不安定でこわいし、あたしはやっぱり、蓮くんの肌にさわっていると安心するのだ、とっても。

「れんく、すき、すき」
「…っ育ちゃん」
「だいすき、れんくん、あっ、あっ」
「うん…俺もだいすきだよ」

だんだん出し入れが速くなってきて、壁に押さえつけられながら浮いた体を深いところまで穿たれて、頭が真っ白になってくる。
いっちゃう寸前、蓮くんはあたしの耳元で熱くて甘ったるいため息をついて、言ってくれた。

「育ちゃん、俺……」

★★★

「なんやえらいご機嫌やなあ」
「ふふふ!そう見えますか!?」
「いかにもそう言ってほしそうな顔しとったから、かわええ後輩の願いは叶えたらなあかんと思てな」

にっこり笑った先輩が、で、どうしたのって聞いてくる。

「この間雛田さんがあんなことを言ったので、気になって彼氏に相談したんです」
「もうあれ忘れて。ほんま忘れてセクハラやから」
「そしたら、育ちゃんは分かってない!って怒られました」
「ほう」
「あたしのこと、愛してるからとっても気持ちいいそうです!」
「そらよかったなあ」

目元をほころばせて、先輩がそう言ってくれたのもつかの間、ん?と首を傾げた。

「それとこれとは話が別やない?」
「え?」
「俺は気持ちええかどうかは聞いてないよ。大変なんと違う?って聞いたんよ」
「…………ハッ」
「いやもうええよ、セクハラやしな。気にせんといて」

そっか。たしかに、気持ちいいけど、大変だ。
この話はもう一度持ち帰って、蓮くんに聞かねば。

そしてその夜…。

「育ちゃん」
「はい」
「もうその先輩と目を合わせたらだめです」
「なんで!?」

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