とある平日。仕事を終えて帰ると、蓮くんがおうちに来ていた。
合鍵を渡してあるので不思議でもなんでもないんだけど、今週は忙しいって、休日返上になるかもしれないって、言ってなかったっけ。
「どうしたの?」
「育ちゃん…………」
「?」
あたしの名前に続く言葉がない。なんなんだ。
思いつめた顔をしている蓮くんに不思議に思いながら鞄を置いた。
「どうしたの?」
もう一度問いかける。
「……俺」
「うん」
「EDになってしまったかもしれない」
「…………えっ?」
いー、でぃー。
って、いわゆるあれがあれな感じの、えっちなことできなくなっちゃう病気だよね?
「えっ、どうして?」
「育ちゃん怒るかもしれないけど俺昨日キャバクラ行ったの」
「は?」
あたしの顔色が瞬時に変わったのを見た蓮くんが慌てて言い訳する。
「違う!接待!接待キャバクラ!」
「そんなのいまだにあるんですね〜ふ〜ん」
「怒んないで!」
「で、キャバクラできれいなおねえさんとイチャイチャしてきたんだ?」
じとーっと見つめると、そこなの、と息巻いてきた。
なにさ。
「おっぱいでかいおねえさんが俺のとなりにいてくれたんだけど、ついでに太ももとかちょっとさすってきたんだけど、全然、その……」
「どうせ!どうせ貧乳ですけどなにか!?」
「育ちゃんは手のひらサイごふっ」
「一言余計だよ!」
悔しくなって蓮くんの割れた腹筋めがけてパンチを繰り出す。
なんで、なんでキャバクラ行った上におねえさんに触らせてるの!最低!
ずいぶん上にある蓮くんの顔を思いっきりにらみつけると、蓮くんは困ったような顔をした。
「で、だ。俺も男だし、おねえさんに迫られておお〜とか思うわけじゃん」
「はあ」
「筋肉すごいですね〜とかおさわりされたら、ちょっといい気分になるじゃん」
「……」
「なのに全然ちんこが勃たない」
「あたし今何を聞かされてるの?」
ほんとに最低。蓮くん最低。
むしろおねえさん相手に勃ったら、蹴り飛ばして殴り飛ばしてちぎってポイなんですけど?
「で?」
「で、これはもしかして俺はインポなのかと思い、確認に来たわけなんだ」
確認に来たわけなんだ、って威張られても困る。
「勃ったらどうするの?」
「どうするって?」
「おねえさんとえっちしに行くの?」
「んなわけないじゃん」
きょとん、として蓮くんが言う。
「もしほんとにEDになってたら育ちゃんに飽きられちゃうから、焦ってるんだけど」
「うわっ、あたしえっちできなくなったら蓮くんのこと捨てると思われてるんだ」
「いやっ、今のは言葉のあやだけど」
「つーん」
怒って顔をそむけると、蓮くんが、あっ、と声を上げた。
「なにさ」
「勃った」
「……全然EDじゃないじゃん」
ていうかなんで今?意味分かんない。
じとっとにらみつけると、蓮くんがへらりと笑ってあたしの体を捕まえてすっぽり包み込んだ。
蓮くんのものがスーツの布地を押し上げてあたしに主張している。
「……あたし、キャバクラ行っておねえさんにデレデレしてたの許してないんですけど」
「いや、デレデレはしてないよ。勃ってないし」
「その、勃ってなければセーフ!みたいなのおかしくないか!」
「実際セーフみたいなもの……。……えっちしよ」
「やだ!」
じたばたするけど、身長差45cm、体格差3倍くらいの差があるので、どうにも勝てるわけがなく、抵抗むなしくシャツをはぎ取られいそいそとベッドに連行されてしまう。
思いのほか優しくベッドに落とされて、爛々とした目で見下ろしてくる蓮くんに、ちょっとだけどきどきしてしまう。
「あの、しないってば、あたし明日も仕事だし」
「うん、俺も」
「だったらしっかり寝て充電しないと……」
「育ちゃんに俺の充電器挿してあげるね」
「さいていのしもねただ!」
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