蜜色ワンダー | ナノ

なまごろし

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土曜になったばかりの、深夜2時です。
あたしは今、とってもめちゃくちゃすっごくハイパー怒ってます。

「……」

ベッドで幸せそうにぐーすかぷーすか眠っている蓮くんを見下ろす。
蓮くんってこんなにでっかい体してるのに、何かに抱きつかなきゃ寝れないみたいで、枕を抱きしめて寝ている。ちょっとかわいい。
そんなこたあどうでもいいのだ!

「ふ、ふふふ」

わけあって断捨離してる蓮くんの家には、段ボールやガムテープなどの梱包アイテムが散乱している。
その中から、白いビニールひもを手に取って、蓮くんの手首に巻き付ける。

「ふふ〜ん」

くるくる、絶対ほどけないくらいきつくしてから、固く3回くらい結ぶ。
枕を引き抜くと、蓮くんは何か大事なものを失ったかのように腕をさまよわせ、それからぱち、と目を開いた。

「ん……んん…」

寝起き特有のかすれた、ちょっとえっちな声でうめいて、蓮くんはすぐに自分の身に起こっている異常に気付いた。

「え!?」

暗闇で、よく分かんないなりに手が不自由なことに焦っている蓮くんの、部屋の電気のスイッチを入れる。

「わっ、あ…?」
「おはよう」
「え、育ちゃん?」

あたしのしわざだとは、まだ気づいてないみたいで、おろおろしてる蓮くんに、にっこり笑いかける。

「育ちゃん、これ何事!?」

両手が使えないなりに起き上がり、ベッドに座り込んだ蓮くんがあせったように手を力任せに引っ張る。
びくともしないひもに、蓮くんの顔が青くなった。

「え、なに……?」

蓮くんのそばまで歩いて、その腕の中にいそいそと入りこんで足の間に座る。
腕さえ自由なら、いつものいちゃいちゃのかっこ。

「蓮くん、あのね」
「…」
「あたし、怒ってるんだあ…」
「へ…?」

何に、という言葉をさえぎって、蓮くんの口に自分の口をくっつける。
ちゅうっと吸い上げて、舌を入れると、混乱してるくせに蓮くんは素直に舌を絡めてきた。
ちゅっ、ちゅっ、と何度も何度も重ねて、舌と舌をくにくにさせて、いつになく積極的に蓮くんの口の中で遊ぶ。

「ん……育ちゃん、積極的じゃん…」

どうやら、覚醒した蓮くんは、あたしが怒っていると言ったのをすっかり忘れて、「そういうプレイ」だと思ったらしい。
にやにやしながら腕を縮めてあたしを抱きすくめて顔を近づけてきた。
そのほうが好都合かも。

「蓮くんはなんにもしなくていいからね」
「えっ」
「あたしがぜんぶするからね」
「そ、それって」

膝に、ぴょこん、と起き上がったものが当たる。素直だなあ…。
自分の指を、蓮くんの唾液も混じってしまった口の中に入れて、舐める。
蓮くんは、ごくり、と喉を鳴らして、じっとあたしがすることを見ている。

「ん、んっ」
「その指どうするの…?」

耳元で、すっごくえっちな低い声を出す蓮くんに、きゅんってしながら着ていたTシャツをまくる。

「こうするの」

ブラをしていないから、すぐにあらわになった乳首に濡れた指を近づけて、くりゅ、と捏ねる。

「んっ、んんっ」
「……」

蓮くんがガン見してる中で、くにくに乳首をいじめて、だんだんその気になってきて、指をはいていたショートパンツの中に滑らせる。
パンツの上から引っかく。体が、ぴくんと跳ねた。

「あっ…」
「どう?濡れてる?」
「ん…濡れてる」

ズボンを脱いで、パンツは片足から抜いて足首にくしゅっと丸める。
そのまま、足の間にそっと指を滑らせると、くちゅん、と濡れていた。

「あっ、あっ」
「育ちゃん、きもちいとこ分かる?俺がいつもこすってあげるとこ、分かる?」

蓮くんの呼吸が乱れ気味になって、熱いため息が耳にかかる。
縛ってる手がいたずらに、手の甲であたしのむき出しのお尻を撫でる。

「やん、ああっ、きもちい…」
「ほんとに?俺の指より?」
「…蓮くん」
「ん?」

そろそろほどいてもらえると、自分の出番だと思っていたのかもしれない。
しかしあたしは怒っているのだ。

「蓮くんの指より、きもちいのあると思うなあ…」
「……」

おねだりするつもりで上目遣いすると、なんだと思ったのか歯を食いしばってごくりと唾液を飲み干した。
そわ、とお尻を撫でていた手が浮く。

「……なにかなあ」
「これ」
「…………ん?」

あたしが、わきに置いておいた箱の中から取り出したものを、蓮くんはきょとんとして見つめて、それからしどろもどろに言い訳をはじめた。

「いや、それはその〜、決して内緒で買ったわけじゃなくて…ちゃんと使うときは育ちゃんに相談しようと思ってたんだよ、絶対、寝首を掻く的な不意打ちで使うつもりはなくて……」
「蓮くん、言い訳すればするほどあやしいよ?」

あたしのてのひらでその存在を主張しているのは、いわゆる大人のおもちゃ。ピンク色のかわいいちっちゃいたまごくらいのサイズのローターと、ちっちゃめのバイブだった。
あやしい、と言われて固まった蓮くんの鼻先にバイブをくっつけて、あたしは怒る。

「なんで買う前に相談しないの?あたしがいやって言ったらこれはどうするつもりだったの?捨てる?捨てないよね?蓮くん、ものを捨てられないもんね?うじうじいつか使ってやるーって機会をうかがうよね?最低!」
「…………ごめんなさい」
「舐めて」
「はっ?」
「いいから舐めて」

蓮くんの口にふにふにとバイブの先端を押し付ける。
あたしの本気の怒りを察したのか、蓮くんはあきらめたように口を開けた。
男の蓮くんがバイブを舐めてるっていうのに、ちょっとどきどきしてしまって、あたしは思わずそれを出し入れする。

「ふぐっ」
「蓮くん、かわいいかも…」
「ふごっ、うぐ」

不愉快極まりないみたいな顔をしていやいや舐めているバイブを引き抜いた。

「うええっ、シリコンの味…………育ちゃん!?」

口をいがいがにしている蓮くんを尻目に、濡れたバイブをそっと入口にあてがうと、蓮くんの声がひっくり返った。

「蓮くんは指くわえて見てろ!」
「ちょっ、タイム!待って、ほどいて!」

蓮くんの肩に縋りつきながら、そっと、蓮くんの指2本、いや3本分くらいかなあって感じのバイブを挿入する。

「んっ、んんっ…」

あんまり慣らしていないけど、蓮くんの唾液が潤滑剤になって、意外とするんと飲み込んだ。

「あんっ…どうしよう…蓮くんが舐めたの、あたしの中に入っちゃった…」
「育ちゃん…!」

辛抱たまらん!って顔で蓮くんが鼻息を荒くする。
そのままぬちゃぬちゃ出し入れしながら、甘えるように肩に額をこすりつけてあえぐ。

「ふっ、やあっ、んんっ、んっ、んっ」
「もう…なんの拷問なの…!」
「スイッチ、入れちゃお…」
「!?」

根元にあるスイッチを、弱に合わせる。
途端、中に入ってたバイブがぶるぶる震えだす。

「ふやあああっ…あっ、んっ、やだ、弱いのにつよい……」

一番弱いのにしたのに、すごい震動で、蓮くんの体に体を擦りつける。
そうするとちょっと安心する。
でも蓮くんはそうじゃないみたい。

「育ちゃん…も、ほどいて……」
「んあっ、やだ…」

痛いくらいにスウェットを押し上げてる様子をちらりと見て、無視する。
なんか、バイブにはスイッチがふたつあって、片っぽは震えるスイッチで、もう片っぽは、ぐいんぐいんするやつだった。
ぐいんぐいんのほうも、入れちゃう。

「ひっ、あ、あっ、や、やだっ、あん、あっ」
「……くそ…!」
「あっ、あ、〜〜〜っ、いいとこ、あたるのっ、や、やっ、い、いっちゃう、あっ」

ぐいんぐいんと動くバイブの先っぽが、あたしのいいとこを何度も何度もえぐる。
蓮くんの視線を感じながら、あたしはいってしまった。

「あっ、あーっ、〜〜〜〜〜っ!」

荒い呼吸で蓮くんにしがみついて、汗をかいた体を擦りつけて、やっとのことで電源を切る。
にゅぽ…とバイブを抜くと、あそこがさみしげにうずいた。

「ん、ん……」
「…育ちゃん……」
「ん…?」
「もう、いいでしょ…ほどいてよ…」

蓮くんのおなかのほうを見る。
さわったらびっくりするほど熱いんだろうなってくらいにスウェットを押し上げて、あたしにこすりつけてこようとするのを、とりあえず受け入れながら、にっこり笑う。

「おやすみ」
「…………えっ?」

蓮くんにもたれかかって目を閉じると、蓮くんが慌てたように叫んだ。

「え!?このまま寝る気!?」
「ん…疲れちゃった」
「や、いやいやいや、俺まだ出してない…」
「あたし怒ってるって言ったよね…」

むにゃむにゃしながらそれだけ主張して、深く息を吸う。
とろん、と夢の中に向かうとちゅうで、蓮くんの声が呆然と、響いた。

「な、なまごろしどころのさわぎじゃない……」

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