珍しくベッドで丸くなっているリヴァイを見て、頼りなさげな胎児のようだと思った。
今や壁の中の英雄、人類最強と称えられる彼に赤ん坊ですらない胎児だとはひどい比喩だ。けれどそんな彼が安心しているからこそ、そう見えてしまったのかもしれない。もし今、ここに暴漢でも現れたら、真っ先に向かって行くのはリヴァイではなくナマエだ。
母性本能というやつかもしれない。
ナマエがそっとリヴァイの前髪に手を伸ばすと、彼はその切れ長な瞳を薄く開いた。
「……寝ていたのか」
「貴方がね。朝だけど、起きだすまでには早いから……もう少し寝ていたら?」
「お前は何やってんだ」
「寝ているリヴァイを見ていたの。もう少しこのまま見てる」
ナマエがそう言って微笑むと、リヴァイは鼻から抜けるように笑い声を漏らした。
布団の中からリヴァイの腕が伸びる。それに引っ張り込まれたナマエは、なし崩しにまた彼の隣に寝ころんだ。少しだけナマエの方が横になる位置が高い。普段はあまりしない体勢だけれど、ナマエはリヴァイの首の下に華奢な手を潜り込ませた。
「悪くねぇな」
「あはは」
ちょうど彼女の胸に顔をうずめられる腕枕は、リヴァイのお気に召したらしい。
「ねぇ……リヴァイ」
「あぁ?」
「子供ができた」
ナマエの腕の中で、リヴァイがどんな表情をしていたのかナマエからは伺いしれない。ただ、布地に触れる彼の体温は熱かった。
「リヴァイのことも、お腹の子も、すごく愛しく思う。不思議ね……貴方がここまで生きてきた過程すべてに、感謝を捧げたい。貴方がいてくれたことに、貴方をここまで生かしてくれた全てに」
いたずらに布団の中で動いていたリヴァイの腕が、そっとナマエの腹部へと向かう。リヴァイの返事はまだ無い。けれどその優しく動くてのひらが、すべてを物語っていた。
ヘヴンへ捧ぐ