ネタ帳 | ナノ
視界の先には身を潜めるニファとリヴァイの姿があった。音が漏れないように深呼吸をすると、そっと足元の地面にてのひらを置く。ざらざらとした煉瓦敷きの感触がてのひらを伝い、緊張か高揚か、混乱した思考を現実へと引き戻した。

恐らくエレン達を乗せるであろう霊柩馬車は宿屋の前だ。これが本当に最後のチャンス。失敗すれば、調査兵団もろとも全てが終わる。

ナマエは雨具の中に隠していたトリガーのグリップにそっと手をかけた。ニファ達はライフル銃を携帯しているが、銃の扱いに自信が無いナマエは立体起動装置だけを装着している。銃よりも、ずっと早く動ける自信はあった。

どれくらいそうして時間が経っただろうか。始まりの合図はあまりに呆気なく訪れた。高い発砲音が続けて2発、そしてワイヤーの巻き取り音。ナマエは1発目の発砲を確認するなり、すぐにトリガーを放った。音の方向は、リヴァイだ。

「……ニファさん!」

重力に逆らい、ナマエの体は屋根の上に躍り出る。一瞬で総毛立つ、光景。

「ナマエ!来るな!」

リヴァイの声とともに、銃口がナマエへと向かう。その引き金を持った男を見て、ナマエは目を見開いた。

「ケニー……?」

「おぉ!てめぇもチビ助のまんまだな!」

紛れもなく、ケニーの指はトリガーを引こうとしていた。ナマエは瞬時に屋根の上で体を屈め、そのまま頭を丸め込み、体を翻らせた。すかさず、ナマエもトリガーを放ってリヴァイの側へと着く。

「話しは後だ。敵は殺せ!」

リヴァイからは見えないだろうが、ナマエは一瞬だけ頷いて体勢を立て直した。リヴァイの視界の先、3人のケニーの仲間だと思われる連中がこちらへ向かって来る。ナマエは迷わず、リヴァイから一番遠い敵に向かって刃を振りかざした。

「深追いするな!」

「行ってください!リヴァイ兵長は、絶対にここから生き延びて!」

小さな舌打ちが聞こえる。付いて来いとリヴァイが叫ぶ。リヴァイのアンカーの先は酒場の中だ。すぐに放てば間に合う。間に合うけれど。

逆手持った刃に力を込めると、ナマエはケニーの姿を確認する。ナマエから見ても、この一行を率いているのはケニーだった。

ケニー。
ケニー・アッカーマン。かつて、共に暮らした男。

「リヴァイ兵長は……殺させない!」

彼を守ろうだなんて、そんな烏滸がましい───

ケニーの死角になる位置から、ナマエも酒場に逃げ込むと見せかけてケニーへと襲い掛かる。しかし土台無理な話しなのだ。ナマエに生きる基本を教えたのは全てケニー。敵う、はずもなく。

「爪が甘ぇよ、ガキが」

視界の後ろ、一瞬だけ確認したのは瞬く金髪。トラウテの顔を、ナマエはおぼろげな記憶の中で思いだしていた。

(いつだか……ケニーと一緒にいた)

どすん、と与えられた衝撃は巨人の足音のようだった。それを聞いた瞬間、ナマエの意識はぷっつりと途切れた。



***


※本当は↑この後、ナマエさんはケニーに攫われて教会地下にて再会…ってのをやりたかったんですけれど、色々無理があるのとこのルートにするとどうしてもケニー夢になってしまうので現状のルートにしました。
衝突

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