Fateまとめ

Step.16 真夏のアタッチメント

 濃い青空に白い雲。眩い太陽の光が降り注いで、アスファルトに反射する。潮の匂いがする海風がルーラの頬を撫でて ながら街を走っていく。
 ロンドン、日本、エジプト。様々な国の建物が乱立するのに何故か違和感のないこの街で、ルーラは一時の余暇を楽しんでいた。

(なにしょっかな……………おーさまホテルの方で忙しいし)

 リゾート地でも仕事をするギルガメッシュの姿を思い浮かべながら、ルーラははぁ、とため息を吐いた。せっかく立香が気を利かせてくれたのに、肝心のギルガメッシュはビジネスに没頭している。こんな時ぐらいゆっくりすればいい良いのに。オフだと言いながら仕事をするのは果たしてオフになっているのか、とは思うものの、ギルガメッシュの中ではオフなのだろう。
 行くあても無くゆっくりと足を動かす。ギルガメッシュに怒られるかもしれないがカジノに遊びに行こうか。それとも早いが立香と合流してしまうか。ゆるゆると考えながら歩いていれば、きらり、とした反射光がルーラを刺した。
 夜になればネオンの光がひしめくこの街だが、昼間でも輝く建物は多くない。目を細めながら光の先を見ようと顔を上げて、目の前に聳える金色の建物にルーラは息を飲んだ。

(おーさまの……………)

 ギルガメッシュのことを考えるあまり、無意識のうちにギルダレイホテルにへと足を向けていたらしい。真昼間にも関わらずきらり、と輝くホテルの前で、ルーラは何度目かのため息をつく。
 どうせギルガメッシュに会えなどしないのだから早く離れてしまおう。1歩踏み出そうとしたその瞬間、聞きなれた低い声がルーラの横を通る。

「我のホテルの前でため息とは良い度胸よな」
「、おーさま」

 白い肌にネイビーのシャツがよく映える。高そうなスーツに身を包んで悠然とホテルから出てきたギルガメッシュの姿に、ルーラの心臓がとくとく、と脈打つ。まさか会えるとは思っておらず、頭が真っ白になる。話したいとが沢山あるのに言葉が出てこない。はくはくと口を動かしながらゆっくりとギルガメッシュを見上げれば、眉間にシワがよった不機嫌そうな顔で、ぴくり、と肩が震える。思わず顔を下に向ければ、ギルガメッシュの手がゆるり、と動いた。

「これを着ろ」
「は?」

 否定する暇もなく無理やり上着を羽織らされ、ルーラの目が点になる。何か言い返すよりも先にギルガメッシュが踵を返した。
 小さくなっていくギルガメッシュの後ろ姿を見ながら、ルーラはへにょり、と眉尻を下げる。

(せっかくおーさまが好きそうなん選んだのに……………)

 小一時間ほど悩んで、ようやくギルガメッシュの好きそうかつ自分に似合いそうな水着を選んだのに。似合ってるだとかそういう褒め言葉はギルガメッシュからは期待していなかった。それでも、少しぐらいなにか言ってくれても良かったのではないか。なんて、そう思うのもルーラのわがままなのだろう。
 はぁ、とため息を吐くと、ルーラはジャケットに袖を通す。多少ダボつくが、ギルガメッシュが着ろと言ったのだ。着なければ後が怖い。再びため息をつくと、ルーラは行き先のない散歩を再開しのだった。


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