Fateまとめ

Step.16 瓦解への一歩

 ゆらり。目の前でアメジストの髪が揺れる。照明を浴びてきらきらと輝やく様はかつて己に献上された宝石のようで、ギルガメッシュはほう、と感心したような息を漏らした。

「見事なものよな」
「は?」

 翡翠の目を訝しげに細めながらルーラがこちらを見上げる。自分が相手では取り繕う気はないらしい。あまり見ないルーラの表情に喉を鳴らして笑いながら、ギルガメッシュはルーラの髪に触れた。

「貴様の髪だ。一廉の職人が加工した宝石の如く、光に反射して煌めいておる」
「おーさまって人褒めることあるんやね」

 するり、と梳くように撫でれば、警戒しているのかルーラが僅かに身構える。特に何をするつもりでもないが、これほど警戒されるのはあまり気分が良くない。ギルガメッシュはため息を吐くと、触れていた髪から手を離した。

「持ち主が貴様と言うのが残念だがな」
「別におーさまのために伸ばしとるんちゃうし」

 顔を顰めたまま、ルーラがギルガメッシュに背を向ける。ゆらり、と揺れるアメジストからはほんの少し甘い花の匂いが漂って、ギルガメッシュは無意識のうちに口角をあげた。
 あそこまで見事な髪は己の閨に侍る女にも居なかった。あの髪がシーツに広がって乱れるのは大層綺麗であろう。良い暇つぶしを思いついた、とギルガメッシュは喉を鳴らす。
 真っ白なシーツに広がるアメジストを思い浮かべながら、ギルガメッシュもその場から立ち去ったのだった。


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