STORY | ナノ

▽ 四月の付き合い方


バトル開始の合図が鳴る。それと同時にナイス、と元気な声が聞こえる。
ケイはこちら側にいる。開幕ナイスとか、馴れ合い。また外れか。
そう思った矢先だった。
目の前を一筋の線が伸びていく。
辺りを塗り散らかし、敵陣へと向かっていく背中が見えた。


「気持ち悪い」
何度殴りたいと思ったことか。声を掛ける相手を間違えた。
「あぁん!? 初対面に向かってなんだテメェは!」
「それはそっちでしょ。一目見ただけのインクリング探してるとか、気持ち悪すぎ。しかも女の子なんでしょ? 僕じゃなかったら通報されてたよ」
右腕のリストバンドを触りながら、決して笑わない黒い目を持つ目の前のインクリングは言った。確かに一理ある。というか、その通りだった。なにも言えなくて口を噤む。目の前のインクリングは呆れたように溜息をついた。
「そもそもチームとか。今時ダサすぎ。仲良しごっこしたいならその辺の低ランクなインクリング誘えばすぐでしょ。あ、君もだった? 低ランク」
「うっせーよ! 口の悪い奴だな。それとも性悪だったのか、あんた」
「そりゃどーも。じゃあ精々頑張ってね。応援はしないけど」
「応援されてたまるか。少なくともあんたには二度と会いたくねぇな!」
吐き散らすように言うと、目の前のインクリングは非常に鬱陶しそうに立ち去っていった。全くなんなんだあいつは。絶対友達のいないタイプだ。俺が大きな声を出し過ぎていたせいか、歩いていくインクリング達の視線が痛い。全く、気に入らない。
ハイカラシティ。時刻は丁度正午を過ぎた辺りで、太陽が真上で街を照らしている。それをインクリング達は迷惑そうにして街を徘徊していた。サンバイザーを被る俺にとっては無縁の賜物だが、いくら日が当たろうとも焼けることのない肌に若干の苛立ちを隠せずにいた。睨んでやりたいところだが、相手は太陽。どちらの方がダメージが大きいのかは明らかだった。小さくし舌打ちをして、いつものベンチへと座る。昼にはここに集合だと伝えてあるし、ケイもそろそろこちらに来るだろう。
俺達は今、あるインクリングを探していた。俺自身はどういう奴だったかあまり覚えていないが、ボンボンニットが特徴的だったことは覚えている。そして、ホクサイ使いだったということも。
少し前から俺とケイはチームを作る、という目的を達成する為に、ずっとナワバリに潜っていた。何回潜ろうと、現れない味方に、ケイは表情には出さないものの残念がっていたことを覚えている。この一戦で今日は締めにするか。そう言って入った部屋に、いたのだ。まともな意思を持ち戦うホクサイ使いのガールが。塗るところは塗ってしっかりスペシャルを溜め、潜っては不意を突きに行く。誰から見ても実力があるのは明らかだった。こちらでは一人回線落ちしてしまったこともあり負けてしまったが、大して塗りに差も無かった。もしかしたら勝てていたかもしれないのだ。バトルが終わってすぐにケイとそのホクサイ女を捜したが、見つかることはなかった。俺達以上にホクサイ女の方が出るのが早かったらしい。ホクサイ使いは日常の行動も早いのか。生き急ぎすぎて死ぬんじゃねぇのか。
途端にベンチが軋んで揺れた。それに驚いて隣を見る。そこには澄ました顔のケイがいた。
「こんにちは」
「普通先に言うだろ」
「あなたの近くに早く来たかったのよ」
「言い訳すんな」
ごめんなさいね、と小さく謝った。満更でもなさそうな顔で。説得力のない。変にかしこまられても困るが。
ケイと別行動をしていたことには理由がある。まとまって聞き回るより、別れて聞いて回ったほうが効率がいいと思ったからだ。ちなみにケイの提案。お陰で色んな奴に怖がられるし変な奴には煙たがられたが、目付きが悪いのは自覚しているし、そういう反応をされるのもまぁ分かりきっていたことだ。ただしあいつ。あいつだけは絶対に許さん。
ケイが買ってきたという、所謂手持ち出来るハンバーガーを渡された。お昼だからと買ってきてくれたようだが、いつも貰いっぱなしで申し訳ない気もする。まぁ今度なにか奢ればいいだろう。袋を開けて、食べる。ケイはこういったファーストフードが好きなのだろうか。いや、ハイカラシティがそういう街なのだろう。俺もこの街に来てからはこういうものばかり食べている気がする。少し故郷の味が恋しいが、これもここに来た者の宿命だ。仕方ない。
「その様子だと、あの子は見つかっていないようね」
「あんたもな。まぁそうそう見つかる訳ねぇって」
「これだとナワバリに潜っていた方が早い気もするけど、それも確率的には低いわよね。...どうしましょう」
「今日見付かんなかったら明日はナワバリ行こうぜ。こんなにバトルしてないと流石に体がなまる」
ケイは了承してくれた。そうとなれば制限時間は今日。早く食べ終えてまた捜しに行かねば。
考えをまとめ、食べる速度も速くなってきた頃だった。
「お泊り会しない?」
むせた。食べた物全て吐き出すくらいにむせた。ケイが俺の背をさする。
「大丈夫?」
「あんたが変なこと言うからだろ! なんなんだ突然!」
「友達というのはお泊り会をすることらしいわよ。だからフッチーとしてみたいわ」
「絶対しないといけないわけじゃねぇだろ。ケイは影響受けすぎ」
そうかしらとケイはきょとんとする。まずケイはどこからそんな情報を持ってくるんだろうか。変な輩だったら即キル。しかしケイは俺が初めてのフレンドと言っていたし、それはないのかもしれない。少し意外だが。俺と違って嫌われるような奴でもないだろうに。
さて、ここで俺は選択肢がなくなってしまった。ケイは我儘な奴ではない。が、拒否権はない。与えない。そういうオーラを持った奴だ。断ったところでまた悲しそうにするのだろう。これだから厄介だ。泊まりなんて初めてではないが、昔の友達とは、泊まりなんて日常茶飯事過ぎてもはや泊まりなんてものじゃない。だからある意味初めてで。慣れないことをあまりしたくはない。必ずと言っていい程なにか起こるから。特にケイなんて。
「じゃあするか? お泊り会」
「いいの?」
「あんたが言い出したことだろ。その代わりちゃんとした飯は出せよ」
「まかせて」
ケイは本当に嬉しそうに食べる手を早めた。食べ切ってしまった俺は手持ち無沙汰になって辺りを見渡す。まだこれからあのホクサイ女を捜す、という目的がある。今日が無事に終わればいいが、と密かに祈るばかりだった。


「どうぞ、上がって」
手招きされる。高層マンションの三階。呼ばれるまま靴を脱いで上がった。
「なんつーか、シンプルだな」
「昔はもっと色々あったんだけどね。ほとんど壊れちゃった」
こんなところでも惜しみなく体質を発揮するケイだった。これでもまだ自覚しないとはどれだけ鈍感なんだろう。恐ろしすぎる。
「ちなみにこの電子レンジはこの前使ってる最中に壊れたのよ。凄いでしょう」
「自慢してんじゃねぇよ」
聞くとテレビもただの飾りらしい。テレビがないということはほとんどの情報は自分で調べるしかないわけだ。ハイカラニュースも見れないとなると、かなり不便ではないだろうか。ステージはイカ型端末で見られるとしても、他にも色々な情報を速報で教えてくれる。アイドルなど興味はないが、かなり重要だろうに。
「すぐにご飯作るから、くつろいでいて。テレビもゲームも娯楽もないけど」
「あんたはそれで普段暇じゃねぇのか」
「特にそう感じたことはないわね。あなたのことを考えていると時間なんてすぐに経つし」
「こえぇなおい」
「冗談よ」
「冗談に聞こえないのが尚恐ろしいわ」
そうこう話している内にも、ケイは準備を終え、材料を切り始めていた。手際が良く、無駄がない。そんなに時間の掛からないものを作る、と言っていたし出来上がるのも時間の問題だろう。米はいつから炊いてたんだ、と尋ねたら朝からタイマーで、と返ってきた。きちんと人数分あるから安心して、とも付け加えられて。こいつ、最初から図ってやがったのか。ケイの恐ろし度が増した気がした。
することもなくただ無駄話をしている内に出来上がったらしく、すぐに準備に取り掛かり、対面して座った。一応作ってもらった身だし、口には出さないものの形だけ礼をして、頂いた。
「...上手い」
「それは良かった。私、料理はわりと得意なの」
「意外だな。なんかやらかしてそうだったのに」
「ここに来る前から家事はする方だったの。今度フッチーの料理も食べてみたいな」
「やめとけ。食えたもんじゃねーぞ」
「そんなになの?」
「昔は家族に作ってもらいっぱなしだったから、こっちに来てもそんなに出来ねぇんだよ。ルームシェアしてた奴はそれなりにそれなりに出来てたが」
「それって、一緒に来た友達?」
「そうそう。今はその家から出て一人暮らししてるからどうしてんのかは知らねぇけど」
「...その子、一人で大丈夫かしら?」
「大丈夫だろ。バトル以外ではてんで駄目な奴だけど強い奴だったし」
そのバトルの才能で負けて、逃げてきたわけだし。
そう心の中で呟いた。表情には出していないつもりだったが、ケイは感じ取ったらしい。それ以上口を開かなかった。変なところで気を使う奴だ。自業自得なんだし、放っておけばいいものを。
「今日はどうやって寝る?」
かと思えば雰囲気クラッシャーだし。マジでなんなんだこいつ。もうすぐで本日二度目のむせこみをするところだった。
「は?」
「私すっかり布団のことを忘れていたわ。一応羽毛ならあるんだけど...。ここ、ベッドしかないの」
「いいよ俺下で寝るから」
「じゃあ私もそうするわ」
流石にむせた。ケイが怪訝そうな顔をする。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃねーよ! あんた普通にベッドで寝ればいいんじゃねぇか!」
「だって一人だけいいところで寝るなんて嫌だもの。それかフッチーがベッドで寝る? やっぱり気になるでしょ?」
「隣で寝るって選択肢の方が気になるけどな!」
別に、誰のベッドで寝ようが俺は知ったこっちゃなかった。フレンドなんだからさほど気になるほどでもないし。ただ、一緒に寝るとなれば話は別だった。男女が一緒に寝る。それは常識としておかしいだろう。顔が熱くなってきた。あぁクソ。腹立つ。
「いいか。別になにも気にすることはない。あんたはただいつも通りベッドで目を瞑るだけ。それだけでいいんだ」
「なに言ってるのか分からないわよ。フッチー」
とりあえずいつも通りにしてくれ。頼むから。
リビングに絶叫にも似た声が響き渡った。なぜここでこんなにも体力を使わなければならないのか。謎を通り越して逆に腹立たしかった。
ケイはしぶしぶ頷き、安心して寝床に入ることが出来た。眩しい日差しに目を覚まし、隣によく見知った顔を見るまでは。


「なかなか見付からないわね」
ハイカラシティ。ロビー前。壁に背を預け、俺とケイは飲料缶を片手に立っていた。大して味付けのされていない炭酸水。ケイはよくこれを差し入れとして買ってくる。不意打ちとセットで。今日は寸でのところで阻止出来たが。ケイはこの炭酸水が好きなのだろうか。味のない飲み物なんて、と初めは驚きを隠せずにいたが、今となっては普通になってきていて、もう少し味の付いている物が欲しい、と思いかけてきた。いつも貰っている身としてはそんなこと言えはしないが。
今日はナワバリに来ていた。理由は昨日と一緒。ホクサイ女を捜すため。しかし、ナワバリで捜すなんて街中で聞き回るより骨の折れる作業だった。一度バトルした奴ともう一度会おうなんて、低確率なんて言葉で言い表せないくらい難しい。今はそれしか方法がないのが歯痒かった。
しかし、そろそろ暗くなってきた。街灯もぽつぽつ灯り始めている。俺はともかくケイは帰した方がいいだろう。
「あと一回したら帰んぞ。また明日だ」
ケイは頷く。飲料水を飲み干し、俺達はロビーの中に入った。

モズク農園。開始前。俺とケイは味方同士のようだ。それと同時にこちらの敗北を理解する。他二人はきちんといるが、多分馴れ合いかなにかだろう。もう慣れた。モズクはこちらまで攻めが入るまではケイも一人で行動出来るだろう。ならばそれまでの間塗りポイントを稼ぎに行くだけだ。
「フッチー、あの子!」
隣にいるケイが慌てて指を指す。その先、敵には、あのホクサイ女がいた。ようやく見つけた!
「でも、あいつ以外回線落ちしてんな」
開始地点にはホクサイ女が一人、立っているだけだった。ホクサイ女も驚いているようだ。つまり実質二対一。相手がこの状況で諦めているならば、もしかしたら話す機会があるかもしれない。バトルにおいてそれは馴れ合いと化すが、この際仕方ない。ようやく見付けたのだ。逃すわけには行かない。
一度賭けてみるか。バトル開始と同時に右へ突っ切る。相手の前に出て、ホクサイ女が俺をやるかどうか、これで全てが決まる。
敵陣地へ差し掛かった頃だった。突然の衝撃に耐え切れず、体が弾ける。ホクサイ女だ。ホクサイ女は俺が来ることなど予想済みだったらしく、ひっそりと隠れていたようだ。俺がいなくなった途端に辺りを塗っていく。ホクサイ使いにしては素早い動きで。話し合いなんて通じない。
体の感覚を取り戻すと左へ向かった。左側はケイが塗ってくれていたらしく、満面緑だった。そして死角から狙いを定めている。本当、いつも惜しいなと思う。体質さえなければ普通に名のあるインクリングになれただろうに。しかし、今の相手はホクサイ女一人だ。一人といえど、かなりの使い手。きっとリッター対策など取得済みだろうし、その動きにケイは耐えられるのか。
とにかく押し返すため、中央の台に乗る。その時、またもあの衝撃がぶつかった。危険を感じ、抵抗しようとした時、目の前にいたホクサイ女は突然に消えた。紫が破裂し、緑が弾ける。ケイが撃ち抜いたようだ。礼など言ってやらないが、代わりに来るよう促し、とにかく敵陣に網の上を歩いて突き進む。ホクサイ女が復活したのが見える。中央台はもう安全だろう。ケイもそう感付いたのか、裏取りされぬようそこに潜伏し、警戒しているようだった。とにかく、戦う意思をなくさせるくらい攻めて、なんとか話の場を作らなければ。折角見付けた手掛かりを、みすみす逃す程愚かではない。


キルしデスりを繰り返して、試合終了の合図が鳴った。そういえば今はナワバリ中だったことを思い出す。いくら攻めようと全く諦めない相手に腹が立ち、いつの間にかキルしに行くことを目的としてしまっていた。キル数の方が多いもののデス数もそれなりにある。ケイがいなければどうなっていたか。考えるだけで恐ろしい。
試合結果モニターを見る。結果は...緑。俺達の勝ち。まぁ、二対一だったし、これくらいは当然だろう。むしろギリギリまで追い詰めてきたあのホクサイ女は、かなり強いと言える。
そんなことよりもホクサイ女だ。この前のようにすぐに部屋を出られたら捜し出すのは困難となる。それだけはどうしても避けたかった。早く追いかけようと一声掛けて、一歩歩み出す。しかし、ケイからの返事はなかった。不審に思って振り返る。ケイは、呆然と立ち尽くしていた。
「勝ってる。私達...」
「そりゃ見たら分かんだろ。それよりもホクサイ女を...」
「や、やった。やったわフッチー。私達、勝ったのよ!」
俺の声を遮って、ケイは俺の手を掴んだ。目を輝かせて。突然のことに対応できなくてうろたえる。するとケイははっとして手を引いた。まだ嬉しそうにはしているが。
「ごめんなさい。つい舞い上がっちゃったわ」
「そんな。どうして」
「初めて勝ったから」
今度は俺がはっとする番だった。そうだ。ケイは、不幸体質で、リッター使いで、強くても味方なんて、今までいなかった。いつもボロ負けばかり。こうして勝てたのも、初めてなのだ。俺にとっては当たり前のことも、ケイにとっては違う。それを当たり前に変えるために、今、こうして行動を起こしているというのに。
ケイの笑顔に立ち尽くしていると、聞き慣れぬ足音が近付いてきた。
「凄いね!」
二人して驚いて、その声の主を見る。声の主は、今まさに俺達と戦っていた、あのホクサイ女だった。
「突っ込んでくるのかなって思ってたら二人で連携し合ってるんだもん。息が合っててびっくりしちゃった」
「あんた一人でも十分押してきてただろ。嫌味でも言いに来たのか」
「違うよ〜。正直な感想だって。まぁもしこっちにも味方がいてくれたら負けてた気はしないけど」
「んだとてめぇ!」
「フッチーストップ」
掴み掛かったところでケイに止められた。ホクサイ女はかなり驚いて一歩引いている。なんで止めるんだ、と目で訴えたところで、有無を言わせぬ視線で黙らされてしまった。案外こいつも目付きが悪い。
「驚かせてしまってごめんなさい。実は私達、あなたにお願いがあるのよ」
聞いたこともないくらいの優しい声で、ケイはホクサイ女を見た。それを見て警戒を解いたのか、ホクサイ女は首を傾げる。俺達はこいつをずっと捜していたが、ホクサイ女からしてみれば偶然会ったインクリングの一人に過ぎないのだろう。俺達を覚えていなくて無理もないし、ましてや願い事なんて見当も付かない。
「私達、チームを作ろうと思ってるの。あなたもどうかしら」
「...チーム」
「それとも、もう既にどこかに入ってたりする? あなた、強いものね」
ホクサイ女の、黒い目が揺れる。少しの沈黙。しばらくして、ホクサイ女は嬉しそうに大きく頷いた。
「チーム、うん。わたし、チームに入るよ。入りたい!」
「そう。じゃあ決まりね」
互いに嬉しそうにハイタッチをする。先程黒い目が曇ったように見えたのは、ただの気のせいか。
そんなことを考えていると、唐突に話を振られた。少しの間、意識が遠退いていたようだ。
「んだよ」
「名前よ。名前。名乗るのは常識でしょう」
「あーはいはい。フチドリだよ」
「ケイに、フチドリ...だね。わたしエンギ。よろしくね!」
エンギ、と名乗ったホクサイ女は、すかさず手を上げた。つまり、ハイタッチ。ほぼつい今知り合ったばかりの奴に馴れ馴れしくされてたまるか。こちらに向かってくる腕をひょいと避ける。避けられると思いもしなかったのだろう。エンギはそのまま体勢を崩して前のめりに倒れた。それも綺麗に。
「ひっどーいフチドリ! なんで避けるの!?」
「あんたが勝手に来ただけだろ」
「男子なら受け止めてよ!」
「変な言い掛かり付けんじゃねぇよ」
ぎゃあぎゃあと言い合いが始まった。そんな俺達を余所に、ケイがくすりと笑う。
本当に、こんな奴をチームとして迎え入れても良かったのだろうか。いくらケイの体質に影響を受けないとはいえ、うるさすぎて困る。子どもをそのままハイカラシティに連れてきました、って感じの。ちらりとケイを見やる。今も嬉しそうに笑っていた。ケイのために立ち上げると決めたチームだ。まぁ、これでいいのかもしれない。
これでチームメンバーは三人。少なくとも、あと一人は必要だ。今回はたまたまエンギと出会うことが出来たが、次はいつ、なにと会うか分からない。面倒だが、これもケイのためだ。やるしかない。別にケイがどうなろうと、知ったこっちゃないけど。
月が街を照らし始めた。いつもの帰りに、変わったものが一つ。ホクサイ使いのエンギ。いつも以上に騒がしい帰り道を後にした。




2016/04/24



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