タマキとラクコ_1




『久しぶりだね、瑞樹くん』その後の話。前記読了後推奨です。




 どうやらあの日以来ラクコちゃんはカウンセリングルーム併設のカフェを気に入ったようで、今日みたいにたまたま出会してお互いに相席することも珍しくなくなった。
 今日も今日とて美少女なラクコちゃんの注文を、バイトの根小田ネコタ鳴介メイスケくんがてれてれしながら運んでくる。面白いから、おれは彼に彼女との関係性を突っ込まれた際にラクコちゃんを小学生時代の友人としてしか紹介しておらず、彼女が彼氏持ちだということは一切明かしてない。今度日付指定して彼氏連れてきてもらおうかな。メイスケくんのシフト確認しておかないと。

 十二年ぶりに会ったとはいえ、せいぜいおれと彼女の思い出なんてあの公園でのことぐらいしかない。雑談の種もかなり尽きかけてきたところでおれは再会の日を思い出しながら彼女に目を向けた。

「ラクコちゃんってさあ、ああいう変な目に遭うこと、多いの?」
「う〜ん……、人並みに……?」
「なんか麻痺してるっぽいけど、世間一般でいう人並みの人はそもそもああいう目には遭わないんだよ」

 おれの言葉に、ラクコちゃんはに゙こ……とちょっぴり濁った笑みを浮かべる。
 ラクコちゃんは若干の都合の悪さをその綺麗な顔と笑顔でどうにか誤魔化して乗り切ろうと試みるきらいがあるようだが、根が正直なのでなんだかぎくしゃくしてしまっている。そんな姿すら美少女なので、美少女っていいなあと思う。

「マジで好奇心で訊いてるから嫌だったら答えなくていいんだけど、今までどういうことあったの?」
「そうだなあ」

 おれはわりかし彼女に甘い自覚がある。敢えて流されてやるとラクコちゃんはあからさまにほっとした様子で考え込むように視線を中空に向けた。グラスの氷をストローで無意味に掻き混ぜる透き通った音がからから響く。

「初めてこれは明らかにおかしいな≠チていうことがあったのは高校生のときなんだけど、」
「うん」
「そのときは目が覚めたら知らない家にいて、」
「マジ?」
「足枷がつけられてて、」
「ヤバ」
「そばには全然知らない男の人がいてね」
「怖」
「家に私のサイズぴったりのウェディングドレスが用意してあったりして……」
「それは超常現象とかじゃなくて普通に人的なかなりエグめの事案じゃん。ちゃんと通報した?」
「説明が難しいんだけど、今お付き合いしてる人だから通報はちょっと」
「危機管理ガバガバか? なんかそいつに脅されてたりする? 平気?」
「ふふ、この話になると、私の従姉妹もいつもタマキくんと同じこと言うんだ。タマキくん、もしかしたらその子と気が合うのかも」
「笑いごとじゃね〜んだわ」

 マジで。だけどやはりラクコちゃんはに゙こ……として口を噤んだ。


―――
22/09/30


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