MEMO
 小ネタや雑談など。

ゴーストハント/渋谷一也

「――ひな?」
ふと、事務所の所長室で顔を上げた。虫の知らせ、と日本語では言うのだったか。何となく嫌な予感がした。
《ひな、聞こえるか?》
双子の兄以外に繋げたホットライン。彼以外で初めての存在である、テレパスの彼女。どれだけ離れていても、少し意識すれば容易く意志疎通が可能になる。
《……ひな?》
急な連絡もある、自分からこうして呼びかけたときは、すぐに応えがあるはずなのだが、なぜか、それがない。
時計を見るが、就寝にはまだ早い時刻。まさか入浴中だったかと眉を寄せるが、それならそれで、反応が返ってくるはずだ。…どうもおかしい。
《ひな、聞こえるなら反応しろ。…ひな》
《………ザッ…》
《ひな!?》
一瞬、ノイズが返ってくる。頭の中にもやがかかったような、この感覚。意識がひなからはがされていくような感覚。これらには、覚えがあった。
《…ナ、……ル…》
電波の悪いところで電話をしているみたいだ。ひやりと心を浸食するよう流れ込んできたのは、途方もない悲しみ。以前、こうして兄の苦しみを受け取ったことがある。ホットラインで本来なら有り得ないはずの、感情の共有。それが危険な兆候であるのはわかっていた。
《っひな、どこにいる!何があった!?》
ともすれば、声をあげてしまいそうだ。意識を、神経を、全て彼女に集中させる。どんなノイズだって聞き逃しはしない。彼の……ジーンの二の舞は、ごめんだ。
《だ…丈夫……》
何がだ、と伝えかけたところで、そう――電話線を切るように、ホットラインが、途切れた。耳障りな音を残して絶えたそれに、ガタンと椅子を蹴り飛ばして立ち上がる。どこまでもジーンと同じだ。
「……冗談じゃない」
吐き捨てると、いつもの上着を手にとって乱暴に部屋の扉を閉めた。
「リン、出掛けてくる」
制止する暇も与えずに告げ、事務所を後にする。
無駄だとわかっていても、頭の中で何度もひなに呼び掛ける。空虚に反響して、どこにも、誰にも届かない。
《ひな……!》
人混みをかき分けるようにして、たまらず駆け出す。無事でいてくれと願う思いは、行く宛もなく、心の中をさ迷った。



テレパシーはESPでテレポートはPKなんですね。
短編まで昇華する元気はなかった。

2012/09/30


うえきの法則/佐野清一郎

「…あのさ、聞き流してくれていいんだけど」
ふと、言っても言わなくても構わないような内容を思い出したのは、やはり彼を見たからだろう。清一郎は読みかけの本を置くと振り返った。
「なんや。千鶴の言うことやったら、一言一句聞き逃さへんよ」
「それは、気持ち悪い。やっぱ止めるわ」
「ちょっ、すまんて!気になるやんか!話したってや!」
わたわたする清一郎を見て、くすりと笑う。最近はやっと、過剰とも思えるスキンシップや甘い言葉にも慣れてきた。慣れてみれば、返し方によっては清一郎の方が慌てたり照れたりする。その様子が、なんだかおもしろい。
「うん…いいわ。大したことじゃあないんだけれど、」
顔が綻ぶのを抑えきれない。
「今日ね、学校でエラい講師が呼ばれて話を聞いたんだけれど、その人の名字が佐野って言ったの」
それで清一郎を思い出したのよ、と言うと、本人はぱちくりと反応に間をおいた。その一瞬の後、見る間に顔が赤くなっていく。
「千鶴…それ、反則や」
「……なにが?」
耳まですっかり赤くして、珍しい様子の彼をまじまじと観察すれば、羞恥心からか、視線をふいと逸らされた。
「……ごっつ嬉しい」
ひどく小さな呟きが愛しくて、思わず声を上げて笑った。

2012/09/28


Aventura/クォルファ・リヴェンツェル

「クォルファ・リヴェンツェル。汝に精霊の加護と祝福があらんことを」
「……なんだ、突然?」
そう、突然だ。
同僚の彼女が、朝早く、出会い頭に跪き、恭しく頭を垂れながら言ったのは。仕事で学園の外に出るときなどはよくやってくれるが、今日は別段、そういった事情があるでなし。実に唐突な出来事だった。
「気高く、強く、…それから、健やかに」
顔を上げて立ち上がった彼女は、うっすらと微笑み、そっと手を握った。
「だから、」
起き抜けから同僚であるアーシェスに絡まれ、若干不機嫌なところ。いくら彼女と雖も、ともすればその手を振り払ってしまいそうだ。
「誕生日、おめでとう」
「…なぜ、それを」
続けて告げられた言葉に、思わず目を開く。いい加減伸びてきた髪の毛の隙間から、今度こそにこりと笑った彼女の顔を捉えた。
「私は、お前が…リーヴが生まれてきてくれたこと、感謝している」
ひとつ、ひとつの言葉を噛みしめるように。彼女は実に嬉しげに言祝ぐ。
「…よくわからないが、ありがとう」
「わかれ、それくらいは」
困ったのでとりあえず礼を述べてみたが、逆に諌められてしまった。しかし彼女を、先ほどがっかりさせてしまったアーシェスのもとへ連れて行けば、きっと彼の美味い菓子に機嫌を直し、彼も上機嫌になるだろう。

Twitterログ+加筆修正

2012/09/24


FF7/クラウド・ストライフ

【MMD】クラウドでこっち向いてbaby
※YouTube
↑のあとの、FF7FSアイリスとクラウド。

「…何というか」
「止めてくれ、何も言うな」
「うーん…」
「アイリス、」
「あ、そうか。可愛いだ。可愛かったぞ、クラウド」
「…止めてくれ。まったく嬉しくない」
「でもなんで女の子の踊り方だったんだ?」
「あれの通りにやれと言われたんだ」
「ふーん」
「……見るな。リピートするな」
「あー、可愛い…いや、ほんと、意外と合ってるな。いけるぞ」
「だから頼むから」
「うわ、私よりずっと可愛いな。抱き締めたくなる…」
「…アイリス、」
「ちょっとクラウド、やってくれないか?」
「絶対に嫌だ」
「ええ…」
「……やらない」
「…こーっち、向いーて、ベイビー」
「っ!」
「あ、体が覚えてるんだな」
「アイリス!」
「ふふ、ごめん。つい」
「はぁ…アイリスがやればいいだろ、きっと似合う」
「いや、私には無理だ。覚えられないから」
「手取り足取り教えるから大丈夫だ」
「ちょ、ちょっと待て!誰もやるとは…クラウド!!」

あのクラウドはかわいすぎて反則だと思います。

2012/09/12


烈火の炎/水鏡凍季也

【水鏡に関するいくつかの考察】
※すごい私的考察&本編ネタバレ若干あり

@凍季也と巡狂座はどのように出会ったのか?

美冬没後、遠縁の親戚に葬式を開いてもらう(巡狂座所在不明か?)
アパートを引き払ってしばらくは親戚に養われる
巡狂座から祖父名義で親戚に手紙が送られてくる(凍季也を引き取りたい旨)
凍季也は美冬の遺品を整理していて、巡狂座という剣士を知る(この時祖父とは知らない)
親戚が巡狂座と話を付け、凍季也を預ける(この時祖父とは知らない)
この間、巡狂座から親戚に手紙が送られていたものと考えられる


A凍季也が山を下りて、学校に通うときはどうしたか?

巡狂座に財産があれば美冬は働いていないので、おそらく山を下りた凍季也は親戚の世話になった
祖父としての巡狂座ではなく扶養者としての親戚名義でマンションへ入居・学校へ編入(一年時から入学しているか?)
両親がいないため孤児手当てのようなものが支給されている
学校へは特待生奨学金で学費すべて免除
バイトはしておらず、一人暮らしのため定期的に親戚とは連絡をとる
美冬は凍季也の将来のために貯金していたと考えられ、また生命保険も考えられることからそこから生活費が出ているとも考えられる


B本編終了後はどんな進路をとったか?

祖父の葬式代わりに位牌を作る(水鏡家に両親と美冬の仏壇はあるのか?)
進学しない旨を親戚と担任へ伝える
就職には頭髪のこともあり、凍季也自身の性格から正直悩む
自宅でできる仕事を教師に協力してもらい探しつつ、簿記などの資格取得にむけて勉強する
独学でプログラミングや株式を勉強する
卒業後、勉強を続けながらも翻訳や打ち込みの下請けをするようになる
高校生・浪人生の家庭教師アルバイトも時折
以後は親戚とあまり関わらないようになり、株式・アフィリエイト・在宅ワークを中心に生計を立てる(自分のためだけなので、あまり一生懸命ではない)
自分の名義で引っ越す可能性もあり(その際きちんとした仏間を作るか?)
特定の女性関係はなく、おそらく生涯独身を貫く



謎が多すぎるのと水鏡の将来があまりにも不安になったので本気出して考えてみた(笑)

2012/09/03






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