雲霞之交

五条、夏油、家入のクラスに新しいメンバーが増えた。
担任である夜蛾が黒板に名前を書くと、上下黒一色の和装を凛々しく着こなした人物は丁寧に頭を下げた。

「改めまして、苗字名前です。よろしくお願いします」
「今日から正式にこのクラスの一員だ。まだ分からないことばかりだから、色々教えてやってくれ」

夜蛾が一旦退室したのをいいことに、五条はサングラスをわざと持ち上げて言った。

「オマエ中学生じゃなかったのか」
「よさないか悟。小柄なだけじゃないか」
「チビで悪かったな」
「...あ」

苗字は夏油の失言に反応して睨みつける。彼女はなかなか気が強いようだ。見かねた家入が声をかける。

「名前、そんな奴らほっときな」
「硝子〜!」
「ていうか、制服格好いいな」
「いいっしょ! 着慣れてるし道着みたいにしてもらった」
「道着?」
「中学から剣道やっててさ」
「へえ、それであの術式ってわけか」
「やっぱ関係あんのかなそれ」

家入の隣の席に座って女子トークに花を咲かせる。その光景を面白くないと思ったのか、五条が会話に水を差す。

「オマエらいつの間に仲良くなってんの」
「私が治療した上に、寮の部屋が隣だしな」
「はー?先に寮にいたんなら挨拶くらい来いよ」
「こっわ。硝子、何あの人」
「五条。クズ野郎だから気をつけろ。ちなみに手前の黒髪は夏油。少しマシなクズ野郎」
「悟はおいといて、私の紹介が酷くないか?」
「俺のも酷いわ。最強のイケメンって言えよ」

個性豊かな男子生徒二人を目の当たりにした苗字は隣に同情の目を向ける。

「硝子、今までこの二人と一緒に勉強してたのか...」
「そうだよ。やっと女子が来てくれて嬉しい」
「私なら耐えられなかったかも」

その台詞は聞き捨てならないとばかりに五条が噛み付いた。

「おい、助けてやったのは誰だと思ってんだ」
「え? 先生じゃないの?」
「いや、現場から名前連れてきたのはそこの男共」
「どちらかと言うと悟より私の方だと思うけど」
「いや発見したのは俺だろ」
「あーはいはい。二人ともアリガトーゴザーマシタ」
「そんな態度ならこの先何も教えてやんねーぞ」
「ちょ、それは困る!」

三人だった教室がより一層賑やかになった。五条と夏油は内心で新しい玩具を見つけたと喜び、家入は純粋に女友達が増えたことを嬉しく思う。呪術師に暗いイメージを抱いていた苗字であったが、それは払拭された。根は悪い奴らでは無さそうだ。

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