電車めも。 軌跡中心に。 |
▼ 軌跡 ワジ→リーシャ 頬に引かれた一筋が、初めは月の光による陰影に見えた。近づいてふと気付く。それは硝子に似た涙だった。甲板の柵を見つめながら、身動きひとつせず。あまりに静謐。俗世を見下ろしているようなその姿は、ある意味に於いて女神に似ていた。 「今夜は満月みたいだね?」 「はい」 「明るいから、星は見えないけど」 「そうですね」 「平気なの?」 「何がですか?」 「目を閉じなくてさ」 「……はい。へっちゃらです」 瞬かない睫毛を見つめて思う。君は夜空でも持ってるの。 (落ちる寸前のツルバキア) 需要ないシリーズ5。 ミステリアスコンビ。リーシャはもっと支援課と絡みましょうよ! |
▼ 軌跡 ロイティオ 人々の歩みを見ていた。ぼんやり、それでいて真剣に。突っ立っているだけでも時間は過ぎるし、何よりあれこれ悩む心配も無いのだった。 美しい靴で美しく歩くひと。急くように早足の大きな革靴。多様なそれに流される小さな小さな靴。 「行き急いでいて疲れませんか?」 呟いた言葉が空気に溶けるそんな時になって、やっと待ち人は視界に現れた。 「ごめんティオ、急ごう」 苦笑いで背を向けた彼が歩き出す。一度も振り返らない茶髪に、ひとつ呟いた。 (生き急いでいて疲れませんか?) 需要ないシリーズ4。 |
▼ 軌跡 キーア+ロイド いつか来る終わりが見えた。要約すればたぶんそんなことを少女は言った。夢だったと言っていたけれど、その予知夢を少女自身は疑っていないようだった。 「幸せなかんじだったよ。みんな泣いてたけど、キーアは幸せだった」 ロイドやエリィは居なかったと少女は言う。何によって居ないのかという質問には答えてくれなかった。 「……でも、起きたとき泣いてたよな?」 「うん。だって死んじゃう夢みたんだもん。キーアまだ死にたくないから」 怯えない視線、震えない声。飴玉の瞳には海があった。 (ブルーローズの恋人) 長編にキーア出したいな |
▼ 軌跡 ヨナティオ 『紙媒体で欲しいです』 「はぁ?」 気恥ずかしさも相まって、問い返す声はつっけんどんになってしまった。押し当てたエニグマからは喧騒しか聞こえない。紙に書け?今のこっぱずかしい言葉をか。 「……ボクにラブレター書けっての?」 その単語そのものが臭い。痒い。腕の鳥肌を擦る。お互い成人しても変わらなかったやり取りに混ぜた本気を思い出しそうになって、テーブルを蹴飛ばした。背は伸びたか。成人してもちっちゃいままか。あいつのことは忘れたか。いい機会だから、名字を変えてみるのもいいんじゃないか。 『簡単に処分出来ないものがいいんです』 「なんで?」 『……一生からかう為にです』 「あのさぁ、嬉しいなら素直に喜べば?」 通信を切られた。 (ロマンチズムが決定的に足りない) これって需要あるのシリーズ。 |
▼ 軌跡 エリィと誰か 「公共の利益は、必ずしも正義という訳ではないの」 哀しげに笑いながら、彼女は指で紙面を撫でる。生活苦の一家、導力車で一家心中。そんな文字を形作るインクの滲みを。 「決して犠牲が少なくなくても……それでもより多数の為に選ぶしかない。皮肉ね。人々が皆自由な選択を出来るよう、中立であることが政府の役目なのに」 少しだけ高価になった弾丸。コップ。生きていく場所、資格。しばしば血税と呼ばれるそれが人々の命を削り始めていた。 「……IBCは潰せない。太い根が広がり過ぎていて、燃やせば崩れてしまうものが多すぎるわ。枯れを修復するための水が、誰かの命を助ける一滴であっても」 彼女は心を削っている。涙を流さない痛みであることは明白だった。 「正義より定義しやすいと思っていた悪も……所詮は独善的な正義足り得る一つの選択肢でしかないのね」 愛しい、と思う。物憂げな瞳がとても。 それは正義でも悪でも無く、恥ずべきただの情欲に過ぎなかった。 (ワラう哲学者) 需要ないシリーズ3。 |
▼ 軌跡 ワジ+エリィ 「女神様は本当にいるのかしら」 「それを僕に聞くの?」 新緑色のクォーツを取り外しながら、伏せた長い睫毛で彼は笑った。ぬっと伸びてきた指に摘ままれた緑を受け取る。いるよ。それをぱちりと嵌めた瞬間、そんな声が聞こえた。 「信じられない?」 「……そうね、奇跡でも起こしてくれるなら別だけれど」 「いいよ。どこまでが奇跡でどこまでが偶然なのか説明してくれるならね」 引っ込みかけた手の甲を叩く。これだから。 (貴方の声は苛々するの) 需要ないシリーズ2。 |
▼ 軌跡 ワジティオ 感受性が高いだけだと彼女は言った。嘘だと思う。言葉面だけをなぞっただけで、意味も示唆も含まれていない。ただある意味で、それは直接的過ぎるほどに彼女を表していた。見上げてくる金の色。自分のものよりも少し深い。同じだと言えば彼女は不機嫌になる。 「見下ろさないで下さい。不快です」 「ふふ、容赦ないね」 腰を屈めて、視線の高さを合わせる。また不機嫌になった。きっと自分には想像つかない諸々が気に入らないのだ。それを隠すことなくさらけ出す彼女が新鮮で愛しくて、どうしようもなく嫌だった。 「……その口で」 「うん」 「一体どれほどの嘘をつき、即物的な愛を囁いてきたんでしょう」 「人のこと言える?」 「言えます」 ごつん。額がぶつかる。今日は空気が湿っぽいのだ。 (同族嫌悪) 需要ないシリーズ1。 |