揺れ動く




“普通に好きだよ”



親友のその気持ちが、勘違いでは無いといいと思う。それでもやはり期待するのは怖かった。そんな事で自分勝手に傷ついて、親友を責めることだけは、絶対に避けたかった。

きっと僕が真剣にあんな事を聞いてしまったから、君は気を遣ってそう言ったのだろう。親友だとか、誰よりも理解しているとか、大それた考えを持って勘違いをしていたのは、僕の方だ。

恥ずかしいと思った。期待をした、勘違いをした自分自身に。それでもやっぱり、好かれていると思いたかった。確信が欲しかった。

仲良くしていても、当人がいなくなった途端に掌を返す。そんな親友の言葉を鵜呑みにする程の勇気は、僕にはなかった。

それだというのに、何故親友は、あんなにも物悲しげな表情を見せたのだろうか。

本当に僕のことが好きだから?

そんなはずはない、美桜の次に好き、はっきりした答えを貰っているし、親友には恋人がいる。

考え出して、ハッとした。僕の悪い癖だ。考え出したら切りが無い。きっとまた自己嫌悪に陥って、深く深く思考を巡らせる。もう考えるのをやめよう。

その日はそのまま、眠りについた。止められない思考を強制終了させるには、それしかなかった。

他人にどう思われているかを考えるなど、馬鹿らしい。誰をどう思うのか、考えたとて、分かることはないのだから。

翌朝も、スッキリしない目覚めとなった。

今日も学校へ来るだろうか。今日はどんな話をしようか。どんな表情を見せてくれるのだろうか。

無理に思考を巡らせても、昨日のことを忘れることなど出来なかった。きっと親友も、忘れてはいないだろう。どうすれば良かったのか、これからどうすればいいのか、本当に分からなくなってしまった。

君の考えも僕の感情も、すべてがわからない。

僕は本当に親友のことが好きだ。それはきっと友人としてなのだろうと、ずっと思ってきた。

しかし、今更になって、友情だと言い切る自信を失ってしまった。

触れていたい、僕だけであってほしい。

嫉妬心や独占欲とも表現できる感情が僕の中に少しずつ生まれていた。

一番だと言われたかった。誰よりも好きだと思われたかった。臆病な僕はそれを伝える術を持たなかった。

学校に着くなり、自席から親友の姿を探す。親友の居ない教室は虚無に包まれ、何とも息苦しい空間だった。こんなところには居られない。もっと遅くに来ればよかった。親友の姿を捉えられなかった僕は、ひっそりと教室を後にした。

朝の放送が鳴るまでここに居よう。そう思い向かったのはトイレの一番奥にある個室。中に入り鍵を掛ければ、誰もいない自分だけの場所という存在に安心したと同時に、孤独を再認識した。

こんな事なら、本音なんて打ち明けなければ良かったのだろうか。受け止めてもらえると思った僕が間違っていたのだろうか。我慢ばかりして、無理に顔を付き合わせて、五人を前に一人を体感する方が、よっぽどましだったのかも知れない。カタチだけでも、友達で居た方が、息苦しさも感じなかった。今はもう本当に、ひとりなのだ。

耐えられなかった。逃げてしまいたかった。だからこそ、弱い僕は、君に依存してしまったのかもしれない。

親友がここへ来るまでの僕は、あの空間で、息をすることも、侭成らなかった。











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