しあわせなはだ


R15程度の微裏要素を含む内容となっております。苦手な方、15歳未満の方は閲覧をお控えくださいませ。






 二人でいつものように部屋でゴロゴロしながら、少女マンガを読んでいただけだった。はじまりなんていつだって曖昧なもの。空気みたいにいつも隣にいて、自然、体がくっつけば、もっともっとと本能が激しく求めるのだ。

 口内に侵入する、自分のものとは違うその感触。はじめの頃はびっくりして、たびたび口を離してしまうことがあった。今はおぼつかないながらも、その舌に応えるように自身のそれをからめていく。けれど、毎回ただ必死なだけで、何が正解なのか未だによくわからない。徐々に脳がしびれたようになり、私の思考は、現実と夢うつつのはざまをゆらゆら漂う。
 怖々と、私の髪をゆっくりなでるその不器用な手。それは次第に下りてゆき、髪の隙間から優しくうなじに触れた。

「......っ」

 こそばゆいような気持ち良いようなその感触に、思わず身をよじり、その手から逃れる。自然、繋がっていた唇が離れ、先ほどは懸命に空気を求めていたのに、相手を失ったそれが、今はどこか淋しい。

「ごめん。くすぐったくてつい......」
「気にすんな」

 慰めるように、その大きな手がすっと伸びてきて、私の髪をくしゃくしゃと撫でる。いつもの優しく健全なその手。
 今日はもう終わりなのかと、安心したような、でもどこか物足りないような心持ちで顔を上げた時。再び純に唇を奪われた。

「んっ......」

 先ほどよりも少し強引に口内を荒らされる。息つぎさえ許さないほど深く激しく求められ、私の思考はまた波に飲まれる。
 それから唇は一旦離れ、やっと息が吸えると思ったその時、首筋にまた、刺激が走った。それは、吸ったと思えば喰み、喰んだと思えば吸う。時折、顎の髭が肌をちくりと引っ掻く感触が混じる。その舌は緩慢に、けれど確実に下へと移動してゆき、鎖骨のラインをそっとなぞった。思わず声がもれそうになるのを、くっと息を飲んで堪える。
 そのゴツゴツした指は、ブラウスのボタンをひとつ、またひとつと外してゆく。その手つきは未だ不慣れで、それがどうしようもなく愛おしい。ボタンの半分が外され、キャミソールの生地があらわになったところで、双丘に手がかけられた。おそるおそる、感触を確かめるようにまさぐる手。
 ぼんやり霞む視界のなかに純を捉えると、まるで運動したあとのように、その日焼けした頬がほんのり上気していた。それがなんとなく可愛くて、思わずそのやわらかな髪をなでてみる。

「......純も、顔赤いね」
「うるせぇな......。なまえもだろうが」

 純が唇をとがらせながらそう言うので、自身の胸のあたりに視線をやると、確かに自身の肌も同じように赤く火照っているのがわかった。先ほどまでちょうど良い空調だったのに、今は少し熱い。
 幸せな体温を持つ赤子のような互いの肌と肌。今からそれを重ねることを想像すると、静かに胸が、ふるえた。


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