わんこと共存?3
「しょうがねえな。これ食ったら飼い主ん所を戻れよ」
そういって、手提げに入っていた食パンの欠片を犬の前に置いた。
これでしばらく餓死する事もないだろう。
真太郎は鍵を開けて、部屋に入ろうとしたが、白いものが左足を通り抜けて部屋の先に行く。
それがさっきの犬だと気がついた時には、真太郎は慌てた。
「ちょっと待てっ! このアパートは動物禁止なんだよ!」
パンを食べていたのではなかったのか。玄関先を見れば、パンには手もつけられていなかった。
犬はリビングのソファーにちょこんと座り、真太郎を冷めた目で見つめ返しているようだった。
「おい、こらっ!」
1ルームの小さい部屋で追いかけっこなどたかが知れている。
真太郎は玄関の戸をストッパーで止め、犬をなんとか外に出そうと追いかける。
追ってくる真太郎をひょいひょいっと交わし、攻防の後、犬はまたソファーにちょこんと座った。
澄ましたその顔が、自分を馬鹿にしているようで、腹が立つ。
「このくそったれ! てめぇ俺を馬鹿にしてんのか?」
ここまで来るともはや意地だった。
小型掃除機のノズルを手に、真太郎はもう一度犬を追いかけ回した。