わんこと夢?2
「真太郎さーん」
バックと呼ばれている簡易テーブルとイスのある休憩室で休んでいれば、いつものように田中が真太郎を呼びにやってきた。
「真太郎さんにお客さん来てますよ?」
「客?」
知り合いなんて数える程しかいなかったはずだ。それも連絡無精もあって、郊外に引っ越してから数少ない知り合いも減った。
「誰だ?」
「知りませんよ。でも、大見さんを呼んでくれって」
真太郎がバックから出れば、長髪の男がレジの前で立っていた。細く糸のような一重の目。顔には貼り付けたような能面の笑顔。
スーツの感じ、雰囲気から、普通ではないと真太郎は感じた。
知り合いでも何でもない。色々悪い事はしてきた類いではあるが、真太郎の中での理念として本当の裏には関わらないようにしてきたはずだった。
「こんにちは、大見真太郎さんですか?」
「だったら」
「あの、白と薄茶の毛の動物をしりませんか?」
そこで合点が行く。
迷子の犬を預かったという張り紙を、田中が作ってコンビニ近くの電信柱に貼ってくれていたはずだ。真太郎の名前はそこで知ったのだろう。
「あの犬の飼い主か?」
「飼い主? そうですねえ、あえて言うなら管理者って所ですか」
意味わかんねえ奴だな。というのが、男に対する真太郎の感想だった。
管理者という言葉に違和感を覚えたが、飼い主が見つかったなら真太郎にとってはありがたい事だった。
「ちょっと待っていてくれ」