わんこと夢?3
田中に少し一人にするという旨を伝えて男と一緒に店を出た。
ノーリードだと色々問題もあるため、リードをつけた犬は真太郎がバイトの間、店の裏口のポール付近でいつも待っている。
はずだった。
「おい、糞犬。隠れてねえで、出てこい」
ポールに繋がれたリードはそのままだが、肝心の中身の犬がどこかに消えていた。
「さっきまでは此処にいたんだ」
言い訳のように真太郎はそう飼い主に説明していた。
「困りましたね」
「悪いな」
「いえ、あなたが悪いんじゃありませんよ」
「そうか。じゃあ、俺仕事があるから」
「あれはあなたの命の危険が近づけば、すぐ来るでしょう」
男が何でもない事のように言う。聞き流していた真太郎が言葉の意味を咀嚼することなく、バイトに戻ろうとしたした時だった。
突然、ゾクりとした寒気に似た殺気を真太郎が感じると同時に、腹部に灼熱の痛みが真太郎の全身を駆け抜けた。
「あ”ああああああ」
痛みに思わず悲鳴に似た叫び声が出て、意志とは関係なく真太郎は地面に転がった。
コンクリートに腹部からドクドクと流れ出る血に、フラッシュバックする。焼けていないはずの背中が、灼熱の炎で焼かれた背中が、身体中が、熱い。
女のヒステリー。聞こえないはずの女のヒステリー声が頭に反響する。
体中の毛穴から、嫌な汗が吹き出た。
「真太郎さんどうしました?」
悲鳴を聞いて不思議におもったのか、裏口が開いて田中が中から顔を出した。
霞んでくる視界。
呼吸をする度に腹部に堪え難い激痛が走る。
「し、真太郎さん!!」
夥しい量の血を目の当たりにし、田中は真太郎に駆け寄った。
「逃げ、」
「今救急車呼びますから!!」
「余計な事はしないで下さいますか?」
男が冷ややかな声で言うと、次の瞬間には田中が地面に横たわっていた。