わんこと共存?8
どこに行ってもきっとこの犬か狐か分からないようなやつはついてくる。
そんな気がした。
案の定、次の店に行っても側を離れる事はなかった。何となく予想していた真太郎は、徹夜明けのバイトの疲れもあってか、仕方なく家に帰った。
シャワーを浴びて、ベッドに転がる。
我が物顔のように家に居座った犬――狐なのかもしれないが、真太郎の中では犬――も、ベッドの中にごそごそと侵入してくる。
「ほんとお前何がしたいんだよ」
何もしなければ可愛いのに。
一緒に眠そうに伸びをしている所なんかを見ていると、今日の出来事も許せてしまいそうな気分になってくる。
「あー頼むから、煙草だけ吸わせてくれよ。そしたら、いつまでも此処にいてもいいからさ」
なんで犬になんか話しかけてるんだか。
真太郎はそう思ったが、この犬は何となく人間の言っている事が分かるような気がしたのだ。
「一本だけ、一本だけだから」
全くなんのやりとりだ。彼女でもあるまいし。
そう思うものの、この犬が許してくれなければ煙草を吸えないのは確かだった。ライターに手を伸ばせば強烈なアタックを食らうし、煙草の箱はさっきの攻防でぐちゃぐちゃに潰れてしまった。きっと湿気て美味しくなくなっているだろう。
「マジで俺、煙草なしで生きていけんのか」
18の時には既にヘビースモーカーと言われる部類に入っていた。いつから吸い始めたのか覚えていないが、だんだんと重さも増え、24になった今では1日1.5箱のラッキーがないと生きていけない。
喫煙を止める人も周りにはいなかったから、禁煙を考えた事や、一日中吸えなかった事など、この10年ほとんどなかった。