平和な朝?7


 伊吹は俺をよく見ている。



 俺も伊吹を見ているが、時々俺以上だと感じる事がある。
 薫とは最初からウマが合いそうだ、と思っていたし、水無瀬と聞いて親近感が増したのは確かだ。
 
 それを伊吹は確実に見抜いている。


「たまたまフィーリングがあったんだ」

「フィーリングね。身体の相性が良かった?」

「は?」

「あぁ、やっぱり昨日無理にでも帰らなければ良かった」


 投げやりに伊吹が、態とらしくため息をつく。



「本気で言っているのか?」



「織、感度良いみたいだし、多分相手も、」

 伊吹が言い切る前に、俺は頬を引っ叩いた。


 ――バチン


 強烈な音と共に、右手にヒリヒリとした痛みが走る。ハッとした時には遅く、後味の悪い後悔。


「言っていい事と悪い事の区別もつかないのか?」

「そんな事ない」

「頭を冷やせ」

「冷えてるよ」

「何に対して怒っているか知らないが、人を巻き込むな」

「……」



 ブスくれた伊吹の顔。
 もう伊吹が何を考えているのか、全く分からなかった。
 こんな風に伊吹を叩いた事も、喧嘩した事も初めてだった。


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