平和な朝?6
リビングに戻ると、薫が部活に向かう準備をしていた。
伊吹に気づいた薫が「おはよう」と言う。
「おはよう」
トーンの低い伊吹の声。
「そういえば、朝食は食べたのか?」
「まだ」
「トーストなら電子レンジの上だ」
「いらない」
薫に対する伊吹の対応に、ギョッとする。いつもの伊吹なら、笑って対応するような内容なのに。
何となく2人が険悪なように見えて 、俺は首を傾げた。
薫は気にした様子もなく、「じゃあ、朝練があるから」と部屋から出て行く。
「部活頑張って。また後で」
「ああ」
玄関の扉が閉まると、部屋には重い沈黙が横たわっていた。
ソファに座ればいいのに、呆然と立ち尽くす伊吹は、やはり何処かおかしい。
「本当に何があったんだ?」
「織には関係ない」
「なくないだろ。薫は優しいから大丈夫だったけど、他だったら喧嘩
になってたかもしれない」
「あいつの肩持つの?」
「肩持つも何も、今回悪いのはどう見ても伊吹だろ」
「あいつに絆された?」
「何言ってる」
「織が出会って2日で、あそこまで人を中に入れてるの初めて見た」