平和な朝?4
薫は兄雅人の子供だ。
そう思いよく見てみると、無駄に高い身長や、少しだけ彫りの深い男前の部類に入る顔付は、雅人の面影がある。
「そっか」
そっか。
薫は雅人の子供なんだ。
俺がちゃんと生きてたら、叔父として薫と会っていた事になる。現実にはあり得ないが、そう考えると身内としての愛着が湧いてくるから不思議だ。
込み上げてくる喜びのような感情。
甥が出来た心境はこういう風なのかもしれない。くすぐったくて、頬が緩みそうになる。
俺は顔がにやけそうになるのを、トーストを食べる事で誤魔化した。
「うまいか?」
「うん」
「そうか」
薫が満足そうに頷き、俺の頭をぽんぽんと撫でる。
その手が、雅人の行動と全く一緒で、俺は思わずふき出した。
優しいのに、分かりづらい不器用な優しさ。
薫から感じる水無瀬の匂いに、酷く懐かしい気持ちで胸が熱くなった。