理事長3


「「え?」」


 困惑する俺たちに、隆二は困ったように笑った。


「君達のお父さんに相談されてね。子供なのに、子供らしい事何一つしてやれてないって。丁度私が学園を保有していたから、どうか?
 って提案したんだよ。ここから先は伊吹君も居たから知ってるだろうけど」


 高城の父も、父様も製薬会社だった事を思い出した。
 製薬会社の知り合いって、隆二のことだとは夢にも思わなかったが。


「だから、純粋に学生生活を謳歌してほしい。私も君たち位の時が一番人生の中で楽しかった時だったからね」


 人生の中で一番楽しかった時。当時の事を思い出しているのだろうか。隆二は哀愁帯びた顔で、俺たちに微笑みかけた。

 胸が締め付けられる。






 俺はここにいるよ。お前の目の前に。



 神様がもう一度お前に会う事を許してくれたんだ。



 気を抜けば、今にでも泣き出してしまいそうだった。
 叫び出してしまいそうだった。






 お前の左手の薬指には、指輪が輝いていて。俺の言った事をちゃんと実行してくれたようだった。


 ――今度会って、お前が結婚してなかったら、大嫌いになってやるから。


 お前の事大嫌いになんてなれる訳ないのに。






 お前が前に進んでくれていて良かった。






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