理事長2
そう、一度だって忘れた事が無かったよ隆二。
今にも叫び出しそうな気持ちをぐっとこらえた。
「私の顔に何かついているかい?」
しばらく隆二の顔を見続けていたらしい。俺は変な方向に暴れ出す心臓をひた隠しにしながら、「いえ」と答えた。
「伊吹君久しぶり。伊織君とは初めましてだね? 私は高城隆二、この学園の理事長をやってます」
女が見たら、蕩けてしまいそうな笑顔を顔に浮かべて隆二が挨拶する。隆二の口から、俺の今の名前を呼ばれるのは変な感覚だった。
寛。
そう呼ばれていた事が、酷く昨日の様に感じる。
「久しぶりです、高城理事長」
「初めまして、小鳥遊伊織です。この度は、このような素敵なお話ありがとうございました。この学園の名に恥じないよう、精一杯勉学に励みたいと思っております」
内心の動揺は誰にも悟られてはいけない。俺はいつもの学会の自分を頭で投影しながら、口上を口にする。
「そんなに畏まらないで。私は君たちに、勉学をしてもらいたくて、この学園に呼んだんじゃないんだ」
その言葉に、俺と伊吹は顔を見合わせた。
「というと?」
「確かに、他の生徒に示しがつかないから、主席はキープしてほしいけど、一番はこの学園を、学生生活を2人に満喫して欲しい」