人見知り



 理事長室までの道のりの間、伊吹と書記である守屋という男は他愛のない会話をしていた。
 守屋の横を伊吹が歩いているため、自然にそういう会話の運びになる。


「どちらが兄なんだ?」

「俺です。といっても、双子なので、数分の差でこの世に生まれ落ちただけですが」


 少し険を帯びる俺の言葉。

 優しそうな表情の伊吹と、いつも無表情が多い俺では、どちらが人に好まれやすいかなど、考えなくても分かる。だからと言って、色んな所で愛想を振りまけるほど器用ではないし、水無瀬で生きていた時の人見知りが改善されているという訳ではなかった。

 人見知りは損だと、よく言われる。
 けれど、人見知りを超えて付き合える友達の方が波長が合う、というのが俺の持論だ。


「すみません、兄は人見知りなので」


 弟に何を言わせているんだ、と言わんばかりの視線を貰う。精神年齢を考えると、大の大人が恥ずかしくないのか、と言われてもおかしくないが。


「別に気にしない」


 思いっきり気にしてるだろ。思わず突っ込みを入れたくなった。


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