案内役
俺たちを乗せた車は学園の洋館の前で停車した。運転手さんが扉を開けてくれ、俺たちは車からおりる。荷物は送ったから、ほとんど手ぶらだ。
運転手さんにお礼を良い、俺たちは洋館に足を進めた。
「これが高校とか、ずるいだろ」
「何がずるいの?」
「いや、何でも」
学園の中に入ると、1人の学生が俺たちに話かけてくる。
「小鳥遊伊織と伊吹か?」
「「はい」」
「理事長室までの案内を担当する、生徒会書記の守屋(もりや)だ」
「「お願いします」」
何も言わずに、息ぴったりにハモるのはさすが双子だと思う。守屋と自己紹介した男も、双子の俺らに少しびっくりしたような表情をしていた。
「ついてこい」
そう言われて、男の後を追った。
さすが洋館で、この学校の本館と言われるだけある。中の内装は、西洋の洋館そっくりで、調度品に抜かりはない。マーイセンの壷や、リーヤドロの陶器人形、絵画は有名なものばかり飾ってある。
「多分、理事長室で説明があると思うが、簡単な説明だけしておく。学年は上履きとネクタイピンの色で分かるようになっている。どれも購買で学生証と引き換えに買えるようになっているから、消耗したり、無くしたら各自で用意するように」
「はい」
今度は伊吹だけ返事をした。俺は館内のちょっとした絵画に目を奪われつつ、頷く。
「色は赤が3年、青が2年、緑が1年だ」
そう言われて、男の上履き――というより、バッシュに近い――は、青のラインが入っている。ネクタイで見分けようと思ったが、背広に隠れて若干見えずらい。
「じゃあ、守屋さんは2年ですか」
「そういう事だ。お前達も2年だから、青のタイピンに、上履きだ。それと同学年だから、敬語じゃなくて良い」
「はい」