追憶3



「この間は取り乱しちゃってごめんね」


 困ったように隆二が笑う。


 雅人の服をかぶって顔は見えていなかったとはいえ、あんなに取り乱した隆二は伊織に生まれ変わってから初めてだった。


「いえ……」


 首を振れば安心したように、隆二がゆっくりと歩み寄ってきて、隣に並んだ。


 2人で並んで舞台から京を眺める。


 あの時と景色が重なる。


 隆二に告白された、思い出の場所に、また2人で並んでいる。


 これはなんの神様の悪戯なのだろう、とふと思った。


「景色綺麗だね」

「そうですね」

「君に話したら笑われるかな?」

「え……?」

「私が君たち位の時に、とても大切な人がいたんだよ。でも、残念ながら病気でなくなってしまったんだけど 、此処はその人との思い出の場所なんだ」



「思い出の場所 ……」



「そう。この学園とは違って、共学だったこともあるから、当時は同性愛なんて、って風潮が強くてね。
 一生隠し通して行きておこうと決めてたんだ。でも彼の余命があと残りわずかたと知っていた私は、どうしても彼への気持ちが抑えられなくて、此処で初めてキスしたんだ。
 すごくびっくりしていたよ。その時の顔は、今でも鮮明に覚えてる。
  その日の晩には容体が急変して、帰らぬ人になってしまったんだけどね……」



言葉が出てこなかった。



秋の終わりの京都は肌寒く、風が時折音を鳴らし、木々がざわめいた。


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