追憶2
想像以上だった。
胸から溢れて出てくる郷愁にも似た想いに、時折涙が出そうになるくらい。
自分の心はずっとここに居たのか。
そう思うぐらい、懐かしさで胸がいっぱいになった。
清水寺に着けばその想いは更に強くなる。
地主神社に行きたいとはしゃぐ日下に「ちょっと疲れたから、俺はここで待ってていいか?」と許可を貰い、いつの日か隆二に想いを告げられた舞台で風にあたることにした。
観光客がしきりに写真を撮っていて、あの時はそんなことも気にならないくらい隆二しか目に入っていなかったんだな、と内心苦笑した。
……隆二。
心の声に呼応するように、「伊織くん?」と隆二の声がして、胸が大きく跳ねた。
振り返れば隆二がそこに居る。
昔のように。
「理事長....」
理事長である隆二がまさか修学旅行に来ていると思わなかった。
「もう身体は大丈夫?」
顔を合わせたのはこの間の風邪以来で、心配そうに隆二がそう聞いてくる。
「はい、おかげさまで。あの時はありがとうございました」
会えたことに対する喜びをひたすらに押し隠し、高鳴る胸を抑え込めば、口から出てくる言葉は、形式的な言葉しか出てこなかった。