来訪2



「伊織ちゃん………」


 そこには、縋るような瞳の斯波がいた。


「………」


 何を言うべきか、何から話すべきなのか、どうすべきなのか、固まっていない方向性の元で発する言葉を見失う。


「用事があるから、少し出てくる」


 寝る準備をしていて、用事がある訳ないのに、薫が気を遣って席を外してくれる。


「あ、うん」


 ありがとう、の言葉は斯波がいる所ではおかしいため、後で言うと心に決める。携帯だけ手にして部屋を出て行く薫を見送り、気まずそうにする斯波を中へと案内した。


 斯波をソファに座らせ、紅茶を用意しようかとキッチンに向かおうとしたとき、突然腕を掴まれた。



 急なことに身体が強張り、何かと斯波を見れば「気を遣わなくていい」と言われ、内心ほっとする。


 硬直する身体はきっと隠せてない。
 その事を裏付けするかのように、部屋中にギクシャクとした重い空気が漂っていた。



「………この間は、ごめん。俺、本当に最低なことを………」

「………」


 また部屋に沈黙が落ちてくる。



「許されない事をした………本当にすまなかった」



 重い口を開き、斯波がそう告げた。



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