来訪3



 許すのは簡単だ。
 でも、どうしてもそれが斯波の為になるとは思えなかった。


 想像にすぎないが、きっと斯波は親にもあまり怒られていないような、そんな気がした。
 誰かに叱責されるというのは、愛情の裏返しでもあると思う。


 好きの反対は、嫌いじゃない。無関心。


 俺が斯波に対して出来ることは、無関心ではなく”嫌い”をぶつける事だ。その行動を受けて、どう行動をするか斯波自身にかかっている。


 だからこそ、此処で簡単に許しちゃいけない。
 そう思った。


 話す内容を固めて、ぐっと力を込めて斯波を見る。



 怒っているように見える様に、眉間に皺を寄せ、極力低い声を心がける。



「………許されないことだと思う。俺は。やられた方の気持ちを考えたら出来ることじゃない」

「ほんとうにごめん」

「ごめんで済むと思うのか?」

「………思わない。何をすればいい?」

「自分で考えろ」

「………考えてる。でも分からない」

「それは考えてるうちに入らない。分からないで投げていたら、いつまでも問題なんて解決できる訳がない」

「………それは………………」



 斯波の目に涙が滲んだ。
 力で勝ち打ち出来ず、少し怖いと思っていた斯波も、伊吹と同じように弟を見ているような気持ちになった。



 本当なら抱きしめて「大丈夫だ」「もう気にしてないから」と言ってやりたかった。



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