まさか3
聞きたいことは沢山ある。
きっとこの機会を逃せば、次に雅人に会えるのはいつになるだろう。そんなことを待っていられるほど、時間はないと瞬間的に感じた。
雅人の手を掴めば、虚を突かれたように目を見開いた。
「どうした?」
「今知りたい、どうしても」
「急ぐ必要ないだろ。またいつでも会える」
「いつでもっていつ? また2.3ヶ月後?」
「多分な、冬休みも来るだろう?」
「時間がないんだ」
息苦しさで咳き込んだ。
痰がきれないからか、ごほごほと長引く咳に雅人が焦ったように背中をさすってくれる。
ようやく息が落ち着いて、雅人を見上げれば、眉間に深い皺を刻んだ雅人の顔がそこにあった。
「時間がないってどういうことだ?」
「あ……」
そう言われて、タイミングの悪いところで咳き込んでしまったと気づいた。
寛人の時の状況を知ってる人間からしたら、笑えない状況だ。
「ごめん、タイミングの悪いところで咳き込んで。身体はなんともないから大丈夫。ただ、伊吹と約束したんだ……」
「約束?」
「卒業までに、隆二が俺に気づかなかったら、隆二のことを忘れて生きるっていう約束」
「そういうことか」
安堵した表情を雅人が浮かべる。
俺が見つめていることに気づいたのか、「またお前を失うのかと思った」とバツが悪そうに呟いた。
「ごめん」
この不器用で優しい兄にかけた心労は計り知れないものだったのだと、改めて思い知った。
そしてそれは、隆二も同じなのかもしれないと、そう思った。