まさか4
胸が苦しくなったのは、息苦しさだけじゃない。
身体の辛さに気づいたのか、布団の中に入るように促され、雅人に支えられながら身体を横にする。
俺の呼吸が整ったことを確認すると、「さてと」と傍にあった椅子に雅人も座った。
「何から知りたい?」
「俺が死んだあと、隆二は何をしてたの?」
「ざっくりした質問だな。そうだな……良く言うと絵に描いたようなエリートコースだったな」
昔から隆二は頭が良くて器用だったから、その姿は簡単に想像が出来た。
「良くいうとってことは、悪い言い方があるのか?」
「ああ。悪くいうなら決められたコースを歩く機械みたいだった。さすがに経営者ともなればそれが許されるほど甘い世界じゃないから昔程ではないが、それでもあいつから情熱を感じたことは一度も無かったな」
「機械…………」
想像が出来なかった。
冷たい印象のするその言葉に困惑する。
「この先あいつが人生で熱くなることなんてないと思っていたが、それも杞憂だったとさっき分かった」
さっき、と言われて記憶を辿る。
「あんな取り乱した隆二を久々に見たな」
くつくつと楽しそうに雅人が笑った。雅人が人の焦る様を喜ぶ節は相変わらず変わっていないらしい。
脳裏に浮かぶのは困惑した隆二の顔。
感情が揺れていたのは見るに容易かったが、今までの隆二はそれさえも無かったというのだろうか?
「そんなに昔と変わったのか? 感情の変化が無くなったようには感じなかったけど……」
雅人に髪をぐしゃっとかき混ぜられた。