扉の向こう3
『もう一度会えたら、か。……出来るなら、会いたくない』
俺は言葉を無くした。
会いたいと思ってくれている。そんなのは、勝手な想像だったんだ。自嘲気味の笑みが溢れた。好きだと自覚してすぐに甘い想いが打ちのめされた。
何を勘違いしていたんだろうか。隆二が優しいのは誰にでもで、寛人は過去の人間なのに。その縋っていた過去の自分でさえも要らないと言われて、身体から一気に力が抜けた。
階段の扉に反射的に手をついてしまったからか、ガタンと大きな音がした。
2人の息を詰める音が聞こえて焦ったが、熱の高い身体は言う事を聞かず、その場に項垂れるしか出来なかった。
もう嫌だと地団駄を踏んでもどうにもならない。まとまらない感情と熱とで、こみ上げそうになる涙をぐっと堪えた。
『誰かいるのか……?』
言葉と共に開けられた扉。驚愕した雅人と目が合う。
「お前……」
「まさ……と……」
雅人の顔をみたら、堪えてた涙が溢れ出た。