熱
Iori.side...
名前を呼ばれた気がして目を開ければ、カーテン越しに陽の光が透けた明るい部屋だった。
夢うつつのまま視線をずらせば目の前に心配そうな顔を浮かべた隆二が居て、一瞬夢と錯覚して「隆二」と呼んでしまいそうになった。寮の自室でもないこの部屋は隆二の部屋だったらしい。
寛人の時の夢を久しぶりに見た気がした。
あの頃と同じように、隣に隆二が居るという光景が不思議な感覚だった。
朝ご飯が食べれるかと聞かれ、すぐにおかゆが出てきた時にはさすがに吃驚した。
「これ……理事長が?」
おかゆからは熱そうに湯気が立っていて、お米も水にふやけていい具合に透明になっていた。俺が食べないと言っていたら、このおかゆはどうするつもりだったんだろうか。
そんな事を考えながら隆二と土鍋を繰り返し見返せば、隆二はおどけた様に笑った。
「こうみえて料理好きなんだ。伊織くんの口にあうかは分からないけど。梅干しとか食べられる?」
「大丈夫です」
「それは良かった」
そのままでも食べ易いようにとベッドとの間にクッションを入れてくれた。
「火傷しないように」
「熱っ」
想像以上の熱さに、舌がジンと灼けた様に痺れた。
「ああ、ほら言ったでしょう……」焦ったようにそう言って、隆二がすかさず水を差し出してくれる。
「あ、ありがとうございます…」
「熱いから火傷しないように、ふーふーして食べないと」
真顔で隆二にそう注意されて、思わず笑いそうになった。