リフレイン2(Side:Ryuji)
Ryuji.side....
まさか。
そう思った次の瞬間には、ただの聞き間違えだった事を知る。
「りじちょう」
今度は先程よりはっきりとした声で呼ばれ、落胆に近い感情が胸に広がった。
一体何を期待していたのか。
熱で顔は赤みを帯び、潤んだ瞳で彼の目が自分を捉えた時に、胸を掴まれたような奇妙な感覚が広がった。
「……ここ、は?」
「理事長室の隣にある私の部屋だよ。昨日お風呂で倒れたんだよ。覚えてない?」
一瞬記憶を探るように視線が彷徨って、彼がゆっくりと頷いた。
「最近学会も多かったそうだし、疲れが溜まったんだろうね」
「あ、あの……ご迷惑おかけしてしまって、すみません。すぐに部屋に帰ります……」
慌てた様子で支度を始めようとする伊織君を、布団をかけ直す事で押し戻す。それでも「でもっ!」と無理に動こうとする彼に、「まだ熱もあるんだから、大人しく寝てなさい」と言えば、申し訳なさそうな様子でようやく彼の身体から力が抜けた。
「おかゆとかなら朝ご飯食べれそうかい?」
「はい」
「持ってくるから待ってて」
ようやく素直になった彼に安心して、台所から先ほど作っておいたおかゆを持って部屋へと戻る。
すぐに戻ってきたのが意外だったのか、少し驚いた様子で土鍋と私を見比べていた。