リフレイン(Side:Ryuji)


(Ryuji.side..........)





「伊織くん?」


 お水をとりにいって帰れば、再び眠りの世界に旅立った彼が居た。ベッドサイドに水を置き、彼の目元に滲んでいた涙をそっと指で拭う。


 それにしてもびっくりした。
 寛と同じような事をいうものだから、寝起きの頭は簡単に錯覚しそうになった。

 姿形はまるで違うのだが、雰囲気や言動がどこか寛人に似ていて、懐かしい気持ちになる。
 強がる所もどこか似ているし、それに、隆二って呼ばれた気がした。



 寛の闘病生活。
 齢17歳にして余命を宣告され、死ぬまでの半年間。それは決して優しいものではなかったが、寛は滅多に弱音を吐かなかった。

 「大丈夫」そう言いつつも、どんどんと弱っていく寛を前にして、何も出来ないもどかしさ。
 子供だった自分には見ている事しか出来なかった。



「寛、」



 言葉にすると酷く懐かしい気がした。心の中でなく、口に出して「寛」と声にするのは少し久しぶりだった。


「んっ」


 呼応するかのように、彼が寝返りをうち、碧の目が眠たげにゆったりと開く。




「り、じ…」





 掠れる声が「隆二」と確かにそう言ったような気がして、どきり、とした。




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