トロイメライ2

 次に見た夢は暗い病室ではなく、陽の光にカーテンが輝いていて、明るくて暖かみのあるベッドルームだった。


 喉に焼け付くような痛みと、全身を苛む怠さ。
 目の前には栗色の髪と両手で繋がれた右手。


 熱はあるが、咳はひどく落ち着いていて、息苦しさもいつもに比べればマシだった。


「隆二」


 呼びかけて、あいている左手で栗色の髪を梳けば、「んっ」と隆二が身じろいだ。


 出来るなら病室ではなく、こんなベッドルームでゆっくり眠るように死ぬのが夢だった。
 どうせ死ぬなら、苦しんで死にたくない。最後くらいは息苦しさから解放されて、死なせてくれてもいいだろう。


 そう思っていたから、幸せに感じられる夢だった。


 いつものようにベッドサイドに座り込んで眠っていた隆二が覚醒するのを呆然と眺めた。
 しばらく隆二が眠そうに目を瞬かせたが、こちらを向いていつもの言葉を言う。


「おはよう、気分はどう?」


 掠れる声で「いつもよりは」と応えれば、隆二が少し驚いて、そして「良かった」と安心したように微笑んだ。


「熱は大丈夫?」


「大丈夫」


 その返事に隆二が頷くと、隆二が伸びをして「お水持ってくるから待ってて」と部屋を出て行った。




 寛人の時の夢にはいつも隆二が居るのに、幸せな夢の結末は酷く寂しい結末が多かった。


 お水を取りに行ったっきり、帰って来ない。
 その間に息が出来なくなって、一人で死んでいく。


 そうしているうちに目が醒めて、夢で良かったと胸を撫で下ろすんだ。
 幸せな夢は幸せな夢のままで終わって欲しい。悪い結末など見たくない。


 ジワっと涙が滲み、起こしていた身体をベッドへと沈めると、また意識が底へと沈んで行った。


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